銀の館(上) (文春文庫 な 2-13)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200138

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  • <上下巻読了>
     従来悪女と見なされがちな、足利義政が正室・日野富子を扱った作品。
     注目は彼女を、土地や米に代わる富=貨幣の運営に携わる女性として正当に評価する点。
     近世に花開く貨幣経済の発芽と、緩やかに崩壊しゆく室町幕府の財政を併せ、広く冷静な視野で解釈している。
     一方の側面は、愛とは別なる規準で測られる性の世界の、シビアかつ滑稽とも言える土壌。
     庶民の女との対比により、生活のために性を売る最下層と、性が儀式であり政治である最上層の、奇妙な相似や差異が浮き彫りになる。
     そして、義政の乳母であり、愛人である側室・お今の、彼を蔽い包む妖しい豊饒さと奥深さ。
     養い君への、衝動や手解きでなく、権力さえも織り込んだ、全き愛の描写には圧倒される。
     何より、彼女の横死に及んでも揺れもしない義政の漂白感と、富子の孤独。
     この辺の読み込みの見事さは流石。
     また、権謀として必要とされることで呪術が成立する、中世の不思議も面白い。

  • 世が乱れに乱れた室町後期、将軍足利義政の正室として「権力」を握った日野富子。ともすれば悪評高い彼女の意外な実像と、当時の庶民を生き生きと描いた傑作長篇

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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