新装版 平家物語の女性たち (文春文庫) (文春文庫 な 2-49)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200497

感想・レビュー・書評

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  • 全くの理系人間だった私は古文だの日本史だのに苦しんだ思い出しかない。だけど、本文を現代語に訳しては状況が伝わりにくいんだという永井路子さんの言葉を読んでから、古文解読や時代背景を知識として持ってこの本を読めてたら、もっと楽しめたかもしれないと思った。

    それでも、夫と離れて悲しいと涙する妻や、尊厳を守る為に命を断つ覚悟とか、楽ではない出家を自ら選んだり、それを耐えたり。女性の登場人数、場面が少ないとはいえ、同じ女としてお腹にドーンと響く所が多かった。

    そういえば、子どもの頃読んだ永井さんの細川ガラシャ夫人、あの感動は今も忘れられない。あの感じ、子どもだったからなのかな?

  • 私にとって、平家物語はあはれの文学である。
    それは、源氏物語のあはれとは少し違う。

    自分の意思に関わらず、明らかに傾きつつある時代の、大きな渦に巻き込まれていった多くの人達の、時に栄華を、そして遂には偏に風の前の塵に同じ、、、を。

    けれど、やはり男側から見る平家物語は軍記物としての色合いの方が強い。
    その男たちの陰に隠れた、多くを語らない女達にスポットを当て、筆者独自の視点から見た平家物語がここにはある。


    とりわけ私は時子(清盛の妻)が好きだ。

    肝の据わった、覚悟ある人物は男であれ女であれ、傍から見ても気持ちが良い。

    壇ノ浦の場面の、神器と安徳帝を抱いて入水する彼女の姿には息を呑む。
    そこには平家の全てを知り、全てを背負い、その誇りを貫く気迫が、死を目の前にして生き生きと描かれている。

    それは、筆者の時子への思いが一層強く現れている場面であり、原文の平家物語と同じく本作品の見どころの一つだと思う。


    そして、これはただ軍記物としての脇役の女性の物語を記しただけではない。

    平家物語が伝えようとしていること、平家物語の作者の立場、読み物と語り物としての平家物語の違いなど、小説家ならではの想像力を膨らませ、読み応えある作品に仕上げているあたり、さすがだなと思う。

  • 平家物語の女性たち。それぞれに解説してあり、それぞれの人物像を深く読み解くには、まさに必読書。

  • 最近のヤング本を先に読んでいたので、主要人物のエピソードは知っている。今回は横笛だけ初見。
    原典を所々交えながらの情報量はとても多かった。
    歴史を研究された方の考察というのも面白く、もっとその人物について知りたいと思った。特に平家物語の中の二人のヒロイン、徳子とその母時子。建礼門院徳子はいったいどんな人物なのか。ヒロインであり女性の最高権位までいくのに、凡庸な感じなのは何故なのだろうか。とても気になります。建礼門院ついての書籍も読んでみたい。

  • 平家物語の女性たち
    永井路子
    文春文庫
    ISBN978-4-16-720049-7

  • 平家物語に登場する女性たちに注目し、物語が書こうとしていたこととは何なのかを紐解く。
    とは言え、そこに描かれている女性たちは皆、個性を持たず類型的であり、物語の傍流に少し顔を出す程度に過ぎない。しかしそれゆえに、作者が彼女らにどのような役割を与えて登場させたのかを考えるとき、おのずと物語の主眼が見えてくるという。
    私が平家物語に今一つ心酔できないのも女性の描き方が物足りないからなのだが、本書を読んでなるほどそういう読み方もできるのだな、とはっとする思いだった。

  • 改めて、平家物語にはあんなにも登場人物がいるのに、女性は少ないのだなぁと思いました。ほぼ女性キャラ網羅してそれぞれの解説をしてくれます。中には「この人誰だっけ?」と思い読み「思い出した!あの話ね」と気付き、平家物語の中のほんのひとつの話に出てきただけの女性なのに、ここまで知った上でまた平家物語を読んだらより深みが増すと言うか。女性なので文章が柔らかく読み易いのですが、割と私のような凡人でも「そんな話あるかい」とツッコミたくなるような説を押してる他者や、平家物語を「つまらない」ものにしてしまった過去のもの達に対しては、気持ちいいくらいにばっさり切ってくれます。そこがまた快感でした。著者は戦争を経験した方でしたので、たまに、その頃の話と平家物語の中の風景を重ねてお話をされているのが、とても印象に残りました。

  • 旧版蔵書。

  • 長らく『平家物語』を食わず嫌いしてきた。
    相変わらず『平家』そのものは読めていないが、こういう入門書?を手に取ろうと思っただけでも、進歩かもしれない(笑)。
    大河ドラマのおかげもあって、盛盛いっぱいの平家の公達も、ようやく何人かは「固体識別」ができるようになった。
    しかし、それでも、全ての人物を頭に入れるのは難しい。
    女性の人物を視点にしていることで、多少なりともとっつきやすいだろうか・・・。

    一族の滅亡に直面した人々の苦しみは、本書からも垣間見ることができた。
    筆者は、特に二位の尼(平時子)に思いいれが深いようだ。
    そして、建礼門院には、少し厳しい。
    その基準は、死に対する覚悟の深さのようだ。

    散り際が美しくあれ、というのは、伝統的な美意識だろうが、どうも私にはそれが受け入れられない。
    正直、「生き恥をさらし」ても、生きて、生きて、生き抜く方が価値が高いのではないか、と最近は思う。
    世間からの非難や好奇心にさらされ、自責の念にさいなまれながらも、生き残って、生命を保ち続けることは、決して楽ではないだろうからだ。
    そういうわけで、本書をきっかけに、自分の価値観を認識してしまった。
    まあ、それはそれでよかったのだと思う。

    取り上げられている女性は次の通り。

    祇王、祇女、仏御前(いずれも清盛に寵愛された白拍子たち)
    葵女御(建礼門院の侍女で高倉帝に愛された少女)
    小督局(やはり建礼門院の侍女で高倉の愛人)
    千手前(鎌倉に送られた平重衡を世話した女性)
    横笛(建礼門院の雑司女で齋藤時頼=滝口入道の恋人)
    祇園女御
    二代后(近衛帝の后で、後に二乗帝の懇望で入内した藤原多子)
    小宰相(平教盛の息子、通盛の妻)
    維盛の妻

    大納言典侍(佐)(平重衡の妻)
    建礼門院
    二位の尼、時子。

  • 本棚から引っ張りだして再読。大河ドラマを見るために読み返す。
    古本市で買ったので、かなりの古さ。昭和47年に書かれたもので、戦争を体験した女性たちと平家の女性たちをダブらせて書いてある。
    平家物語にはあまり女性がでてこないらしいが、その少ない人たちにスポットを当てて書いてあり、かなり興味深かった。
    この女性たちは大河ドラマにはほとんど出演する可能性が薄い人が多かったが、その夫とか恋のお相手が平家物語の主人公たちであり、そちらの男性たちについても書かれている。
    最後に気になる、建礼門院徳子のその後であったり、二位の尼時子の話もあるし、これから大河ドラマが楽しくなりそうだ。

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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