北朝鮮秘密集会の夜: 留学生が明かす素顔の祖国 (文春文庫 り 2-1)
- 文藝春秋 (1996年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167250027
作品紹介・あらすじ
1991年4月、在日朝鮮人の若者が希望に胸をふくらませ、初の留学生として"祖国"へと旅立った。しかし、彼がそこで見た現実とは、極端な個人崇拝、経済破綻、帰国者への差別…。だが、絶望的な状況の中でも、反体制秘密集会に集まる人々がいたのだ。長期滞在し、冷静な視点に基づいて書かれた画期的レポート。
感想・レビュー・書評
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1996年出版。同書は、在日朝鮮人の著者が「初の日本からの留学生」として1991年4月から12月にかけて平壌に留学し、そこで見聞きしたエピソードをまとめたもの。
北朝鮮に入国後、「歓迎の宴」が開かれる。毎晩盛大に開かれる宴の請求書は著者宛に届けられる。著者の所属する日本の大学から経費が無限に支払われる時思った北朝鮮人らは毎晩入れ替わり立ち替わり著者に「たかって」いたのである。
また留学とはいっても、現地の研究者と共に研究を行うことは許されず、盗聴器が仕掛けられたホテルの部屋で出張を講義を受ける日々。
工場や農場に行きたい、といっても、金日成や金正日の「事績」が紹介されるばかりで、仕事をしている様子はない。
地方に住む親戚の家を訪ねてはその生活水準に愕然とする。このような経験を通じて著者は「祖国」に怒りを感じるようになるのだった。
ある時、著者はある人から秘密の「学習会」に誘われる。そこでは国の未来を憂う人々が集まり、情報を交換していた。集会の自由がない北朝鮮では、もし発覚すれば問答無用で逮捕されるような「学習会」に参加した著者は、帰国後、「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」という団体を結成するが、その詳しい話については同書では省かれている。
この「学習会」の模様は、英語「トゥルーノース」に描かれたマンション一室での集まりのモデルだろうか。
現在(2021年)からすれば、同書の内容は古いと言わざるをえないが、当時の北朝鮮の様子を知る上で非常に有用だと言える。詳細をみるコメント0件をすべて表示