眠り人形 (文春文庫 む 1-11)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167277116

作品紹介・あらすじ

美しい姉と、その陰でいつも損な役まわりを演じてきた妹。だが、大人になってヒロインと脇役という立場は逆転してしまう。心にわだかまりを持つ姉妹それぞれに、ある日、大事件がふりかかる。姉妹の屈折した肉親愛をほのぼのと描く表題作の他、向田ドラマの秀作「花嫁」「当節結婚の条件」の三篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。「眠り人形」「花嫁」「当節結婚の条件」の三篇。家族同士の気持ちのぶつかりあいがどこにでもあるようなもので、よく脚本や小説の形にまで作り上げられるなあと感心してしまう。セリフの言葉の選び方だったり、ちょっとした小道具だったりが、短い一作の中でうまくはまっている。私の好きなのは「花嫁」の玄関の踏むとぎゅうと音が鳴る床板。こんなのなかなか使おうと思いつけるものではないでしょ。こうやってまとめて読んでいると、長生きしていたらどんなものを書いてくれたのだろうと、想像してもしょうがないことを想像してしまう。

  • 3話とも面白かった。
    向田邦子さんが描く家族や姉妹兄弟の姿が好き。
    特に女性たちは、最後までどこか芯があり強くて、とても魅力的。

  • ドラマのシナリオのノベル化とだけあって、映像が目に浮かび、生き生きとした台詞がすごく楽しい。短編ながらストーリーも独特なのにどこかリアルで、どこかに存在していそうな家族達...

  • 「眠り人形」「花嫁」「当節結婚の条件」の3つの短編が所収。当時の時代背景ゆえか、50歳代や60歳代が、今と違って、かなり年配のように感じます。

  • 家にあったので捨てる前に読んでみた。
    向田邦子の脚本を他人(中野玲子)が小説家したもの。台詞部分は脚本通りで、地の文を書き加えているらしい。といっても台詞部分が多い作品である。中野玲子氏の名前は小さく紹介されているだけである。
    ちょっと古めのホームドラマという感じで、まあ何ていうことはない。

    眠り人形
    一度はぶつかり合うものの結局は分かりあえて助け合うという、何でも話せる兄弟の良さ。

    花嫁
    6年前に夫を亡くした未亡人が夫の知人と再婚する話。新しい夫にすべての世話を任せるような関係に、娘の一人は最初反対し、母も一度は辞退する。しかし、新しい夫の会社が倒産しすべてを失ったことで、二人で一から家庭を築いていくことになりむしろ結婚に前向きになることができた。

    当節結婚の条件
    妻を亡くした父親が、家のことを何から何まできちんとやっているように見えたが、実は馴染みのおでん屋の女将の入れ知恵であった。娘はそれに反発する。

  • 「向田邦子」の『眠り人形』を読みました。

    東芝日曜劇場向けに書かれた放送台本を「中野玲子」が小説化した作品です。

    「向田邦子」の作品はエッセイ集『無名仮名人名簿』を読んで以来なので約1年振りですね。

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    美しい姉と、その陰でいつも損な役まわりを演じてきた妹。
    だが、大人になってヒロインと脇役という立場は逆転してしまう。
    心にわだかまりを持つ姉妹それぞれに、ある日、大事件がふりかかる。
    姉妹の屈折した肉親愛をほのぼのと描く表題作の他、「向田」ドラマの秀作『花嫁』『当節結婚の条件』の三篇を収録。
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    言葉づかいのせいか、小道具のせいか、よく理由はわからないんですが、、、
    「向田」作品って、なんだか懐かしさを感じさせる雰囲気を持っているんですよねぇ。

    本作品で印象に残ったのは、夫に先立たれた60前の母が嫁いでいく『花嫁』ですね。

    紹介された男が裕福だったせいで躊躇するが、経営する会社が倒産し裸一貫から再出発することになったことで嫁ぐことを決意、

    「羽振りのいい時なら、コートの裏が破けたって、男はみじめじゃないんだよ。今は誰かつくろう人がいた方がいいよ」

    という台詞がぐっ… ときますね。

    母が嫁ぐ日、母を囲んで娘たちがガヤガヤと賑やかに玄関を出て行くエンディングも大好きです。



    あと、「向田」作品って、女性が描いたとは思えないほど、中年男性の心理を上手く描写していると思うんですよねぇ。

    『当節結婚の条件』が、そのイイ例で、娘を嫁にやる親の気持ちが、とても良く伝わってきました。


    「向田」作品って、ホントに懐かしくてホッとする感じがして大好きです。

  • 泣いた、泣いた 3篇とも泣けた泣けた。
    皆が・・・皆がいい人なんです。だから良いのです。
    小生意気な我が子供どもに是が非でも読ませてやりたい
    と思った。

  • 老年期を迎えた母の再婚を描いた「花嫁」がいい。

  • 日常感いっぱいなところが魅力なんじゃないかな?
    『花嫁』はなんかお母さんが可愛い。
    子供の立場からすると、ちょっとひっかかるところもあるのかもしれないけれど、親だから、子だからということではなく一個人として好きにさせてあげたい、したいなと思う。
    これから先、こんなことがあったとしたら、本人の意思に任せようっと。

  • 表題作の眠り人形。
    資金繰りができず自殺を考えながら、最後によった実家。裕福な姉妹に嫉妬しつつ、話をする中でお互いの悩み・苦労が徐々に明らかになっていく。しんみりした会話ではなく、意地や見栄を張りつつ、でも最後はやっぱり血のつながり。笑いあえるそんな関係が、家族というものなのかもしれない。押したり引いたりの家族関係がおもしろい。

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著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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