ゴールド・コースト 下 (文春文庫 テ 6-4)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167309329

感想・レビュー・書評

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  • でも、面白かった。続編は積読。

  • FBIのエ-ジェントが言います。「危険なことは危ないのです。」怖いと思っても見たい。危ないと分かっていてもやりたい。人間てそんなとこがありますね。後編では好物のヨットがでてきます。ゴッド・ファザ-のような場面もあります。最後まで面白い。難しい解釈は、頭の良い方におまかせして。そして、また冒頭に戻って131ページまで読みました。屋敷の敷地が200エ-カ-なんて言われても全然イメ-ジが湧かなかったもので。日本人にはとうてい無理な風景なんです。ぜひ、御一読を。

  • (上巻の感想からの続き)
    その他の登場人物の内、スーザンは最初、二コール・キッドマンとも思ったが、それは時たま頭をよぎるだけで特に俳優になぞらえなかった
    あとはマンクーゾ。彼のイメージは俳優は特定できないが、帽子をかぶり、肩まで掛かる天然パーマ気味の長髪と白髪交じりの口髭を生やした初老の痩身の、黒のスーツが似合う男がはっきりと浮かんだ。これはかなり正しいイメージだと思う。

    こういった人物がイメージとして湧き上がるほどの性格付け、また夢の中の世界として描かれる金持ちの敷地やリトル・イタリーのレストランの描写が非常に素晴らしく、小説を読みながら映像を思い浮かべることが出来た。
    特にこの小説は映画好きが読めば読むほど映像を喚起できると思う。

    またサッターの独白で明かされるベラローサの、サッターを自身の弁護士として取り込む手練手管の精緻さ。これが何とも懐が深く、本当にマフィアならそうするだろうと思わせるほどのリアリティがある。
    こういった構成が結末の悲劇―スーザンがベラローサを射殺する―への十分な裏付となっている。しかもプロットは堅固なのに人物が前述の通り、個性豊かで単なる駒として機能しているわけではない。これらの人物ならばそれぞれこのように行動するだろうと納得させるだけの筆力があるのだ。
    いやあ、神業ですよ、これは。
    デミルを読むと私も含め、作家を目指す人はしばらく創作意欲が無くなるのではないのだろうか。

    芳醇なるワインを飲んだ心地ですな、特に読後の今は。

  • 有閑階級の衰退を独特のスタイルで描いた才人デミル1990年発表の異色作。
    急速に台頭したアメリカ型資本主義社会の恩恵を受け、永らく栄耀栄華をほしいままにした大資産家ら。主人公ジョン・サッターは、その代表的階層となる「ワスプ」の体現者であることを、常日頃から自嘲気味に吐露する弁護士だった。妻スーザンも生まれながらの超富裕層に属し、〝超弩級の高級別荘地〟ゴールド・コーストの邸宅を受け継いでいた。広大な敷地内には厩舎を構え、別邸へは馬に乗り移動。だが、実態は、本邸の莫大な修繕費を賄うだけのカネは無く、ステータスシンボルは錆び付き腐食するままにまかせていた。夫婦は刺激に飢え、倦怠と枯渇感に陥っている。
    そんな中、サッター家の隣りに、イタリア・マフィアの首領フランク・ベラローサが越してくる。当然、界隈の住人らは戦々恐々となるが、持ち前のシニカルさで渡り合えると踏んだサッターは、「良き隣人」としてギャングのボスと交流を深めていく。ベラローサがもたらすドス黒くも甘美な酔いに身を委ね、サッターは次第に感化される。だが、正気に戻り、酒に沈殿していた「毒」に気付いた時には、何もかもが既に手遅れとなっていた。術中にはまり闇組織へと組み込まれたサッターの人生は、発覚したスーザンの不貞によってひとつの破綻を迎える。

    エリートとは名ばかりの俗物らを揶揄するデミルの筆は容赦無い。
    裏を返せば、暴力の蔓延る世界でのみ生彩を放つベラローサの虚妄。僅かなひびが入れば、一瞬でカネも名誉も〝愛〟も失う薄氷上のワスプ、サッターの虚飾。一見対称的でありながら、根底にあるマチズモは共通しており、脆くも自壊していく矮小さは、したたかな女の存在によってより際立っていく。



    世評の高い作品だが、私はそれほど感銘を受けなかった。筋立ては至ってシンプルで、個々のエピソードは印象深い。人物造形も流石の仕上がりである。けれども、やはり長大すぎる。主人公のシニカルな語りは、社会批判よりも自己憐憫に費やされているため、世界観も終始閉じられているという印象しかない。停滞した物語は終盤で一気に動き、退廃的ムードも高まるが、そこにカタルシスは無く、憐れな者どもの凋落ぶりのみが浮遊する。

    アメリカ独自の歴史、風土、気質などを踏まえ、読解/実感へ結び付くだけの素養が、私には不足しているのだろう。

  • ゴールドコーストシリーズ

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