- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167337025
作品紹介・あらすじ
人間の顔は時代を象徴する。幸運と器量に恵まれた歴史上の大人物、ペリクレス、アレクサンダー大王、カエサル、織田信長、千利休、西郷隆盛、ナポレオンなど十四名を描く。(井尻千男)
感想・レビュー・書評
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男の肖像 (文春文庫)
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14人の歴史上の男性を、教科書的な一般的な歴史の人物評ではなく、彼女独特の視点で評している。
特に北条時宗の生涯は、ヨーロッパからモンゴルがどう捉えられていて、その視点を挟むとこういうことになる、と、彼女の歴史観から語られている。不勉強な私には目から鱗だった。
幅広い時代から人選されている。取り上げられた人物から、興味がある時代の理解を深めるものいいと思う。 -
私、塩野七生先生の文体すごく好きなんですよ。
最初の出会いはチェーザレボルジア関連でしたが今回はその塩野先生が様々な歴史的大人物について述べている、しかもなんと日本の偉人、しかもチョイスが北条時宗、織田信長、千利休、そして西郷隆盛!!ハハー!!!
と思って購入、読了しました。
で、冒頭に戻ります。
塩野先生の文体すごくすきなんです。井尻千男さんの解説の中で「文章の中に知情意がある」というふうに表現されてますが。
まず、知がある。私のような小娘から見ると「知」でいっぱい。
で、そのあとにある「情」。これがまさに塩野先生らしく、歴史的偉人に恋心を抱いているようなそんな柔らかく、めろめろな文面にこっちも釣られて惚れてしまいそう。
塩野先生は地中海、イタリアにお詳しい、というのが私の認識であるから毛沢東についての記述はどんなものかと期待しながら読みました。
「この種の力がないことを正直に白状した上で、あえて無謀にも」という文句。ひけらかさず知ったかぶりもせず。
そしてそこに自分ならではの感想、分析、評価を付け加えることができるのは、やはりそこに至るまでに並以上の調査をしているからこそなのだろうなと思う。 -
西郷さんの話がみにしみました
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ローマ人だけと思いきや信長あたりも入っています。
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人間の顔というものは、その人個人のものであるはずである。
だが、場合によっては、その人が生きた時代を象徴する「顔」になるときもある。
という一文で始まる。
ペリクレス、アレクサンダー大王、大カトー、ユリウス・カエサル、北条時宗、織田信長、千利休、西郷隆盛、ナポレオン、フランツ・ヨゼフ一世、毛沢東、コシモ・デ・メディチ、マーカス・アグリッパ、チャーチル
14人の歴史上の人物をとりあげている。
各人物の肖像画、彫像の写真、顔写真が合わせて掲載してある。
日本史に出てくる名前は一応みんな知ってましたが・・
この齢になって初めて聞く名前も2・3あった(世界史の先生ごめんなさい・・)
少し紹介しますね。
【ペリクレス】
著者はこの人物の顔を初めてみたのは高校の教科書だったと書いている。
アテネの民主政治の説明のかたわらに載っている、その「端正な美貌」を見ながら読むと
その政治体制自体が「端正」のものに思えてきたとも・・
ペリクレスの顔は民主主義の広告として大いに貢献しているのではないかとも言っている。
う~ん・・妙に納得してしまった。
アテネの民主政のリーダーとして民衆から支持を得るにはもちろんそれだけではないことも確かだ。
「選ばれたる能力の持主ではない人が、全員平等の制度を好むのはうなずける。だが、その種の人々だけでこの制度を運用すると、なぜか失敗におわるのも事実だ。やはり、運用役には、選ばれたる能力の持主を必要とするらしい。」
といっても、その反対の平等主義の民主政を運用するのだから、その能力も性格も第一級であったのでしょう!
本にはアルカイックスマイルを浮かべる胸像の写真が載っているがホントにハンサムだ!
その上、彼の演説は定評のあるものだ(それくらいは知ってます^^)
また演説の際にはいかなる感情にも乱されない上衣の着こなし、という評言も残っているらしい。
もって生まれた美貌だけではなく、言葉つき、歩きぶり、声の出し方などすべてにおいて崇高な雰囲気だったのかもしれない。
【西郷隆盛】
私も著者と同じで、上野の山にある銅像は子供の頃からみていたが・・
あまり興味をもったことはなかった。
著者が愕然としたという
「一日西郷に接すれば、一日の愛生ず。三日接すれば、三日の愛生ず。親愛日に加わり、
今は去るべくもあらず。ただ、死生をともにせんのみ」
これには私もへぇ~って思いました。
これは男が男に抱いた思いだと思うと、西郷どんの人柄が思い浮かんでくる。
坂本龍馬の西郷評に
「大きく打てば大きく響き、小さく打てば小さく響く釣鐘のような人物」
というのがあるらしい。
良い人物であることはわかりますが、
100年以上前に身長180センチ近く、体重100キロ超え、牛のように太い首回り・・
何度見直しても・・私の好みじゃない(そんな情報要りませんね)
【ユリウス・カエサル】
この章はカエサルからエジプトの女王クレオパトラへの手紙という形になっている。
著者の戯作ということだが、カエサルならこういうこと書きそうって感じだ。
(もちろん私の知ってる範囲のカエサルだが)
これを読むとカエサルのひととなりとともにクレオパトラの愛人としての可愛らしさや母親としての愛情深さや、
なにより女王としての知性を浮き彫りにしている。
男女の格差が大きくあった当時・・カエサルは妻にはけしって愛を囁くことはなくても、
女王としてのクレオパトラには自分と同等の者として充分に囁いたのかもしれない。
著者はいいところをついていると思った。
著者はすべて女性としての目線で書いています。
読んでいてなるほど!そうかもって思えることが多い。(それは私が一応・・女だからかもしれない・・笑)
作家としての塩野七生はすごいと思うだれでも知っている歴史上の人物(それも大物)を
「歴史上の人物は皆、私の知り合いになってしまった。いや、イイ男だったら、皆、愛人にしてしまった。」
と言ってのけた(笑)
解説者が述べるところによると・・
「こういう文章を味わっていると、セクシーな感覚の深化は、ただ感覚的な表現で達成されるものではなく、知的な営みの深さによってはじめて可能になるものだということがわかる。塩野七生さんの男性論の魅力はそういうところにある。」
さらには、著者を地中海作家と呼ぶ解説者は
「高貴なる精神と通俗的なエロスの微妙な重ねかたも、この地中海作家の得意技といえる。そこがユーモアの源泉でもある。」とあるように・・
人間に興味があるなら歴史に興味のない人にも面白く読める本だと思った。 -
歴史上の人物14名を独自の視点で評価していく。著者がローマ世界、中世ヨーロッパを書いてきたからこそ、その視点に思わず唸る。特に織田信長の比叡山焼き討ちに対する評価はさすがだと思う。他に北条時宗、千利休、西郷隆盛に対する視点も印象深い。
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(1993.05.03読了)(1992.06.12購入)
(「BOOK」データベースより)
人間の顔は、時代を象徴する―。幸運と器量にめぐまれて、世界を揺るがせた歴史上の大人物たち、ペリクレス、アレクサンダー大王、カエサル、北条時宗、織田信長、西郷隆盛、ナポレオン、フランツ・ヨゼフ一世、毛沢東、チャーチルなどを、辛辣に優雅に描き、真のリーダーシップとは何かを問う。
☆塩野七生さんの本(既読)
「イタリアからの手紙」塩野七生著、新潮社、1972.06.05
「ルネサンスの女たち」塩野七生著、中公文庫、1973.11.10
「愛の年代記」塩野七生著、新潮社、1975.03.30
「イタリアだより」塩野七生著、文芸春秋、1975.06.20
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「サロメの乳母の話」塩野七生著、中公文庫、1986.01.10
「海の都の物語(上)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10
「海の都の物語(下)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10 -
塩野さんが大胆な想像も加えてペリクレス、アレクサンダー、カエサル、時宗、信長、西郷どん、ナポレオン、フランツヨゼフ一世、毛沢東、チャーチルなどについて論じている。史上の大人物を女の視点からみるのもなかなか面白い。