蒼煌 (文春文庫)

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著者 : 黒川博行
  • 文藝春秋 (2007年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167447083

蒼煌 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 冒頭───

    大阪難波、淀屋デパートに着いたのは十時五分前だった。タクシーを降りて新館に向かう。玄関前には七、八人の女性客が並んでいた。待っているはずの美術部長の姿が見あたらない。
    「どうしたんや、伊谷は。おらんやないか」
    腕の時計に眼をやって、いらだたしげに室生がいう。
    「おかしいですね。十分前には新館の前にいるというたんですけど」
    大村は室生のそばを離れた。小走りで『虹の街』のほうへ行く。カフェテリアの向かいにもう一カ所、淀屋の入り口があったが、そこにも伊谷はいなかった。

    黒川博行の作品は特徴がいくつかある。
    一、 常に関西が舞台である
    二、 主人公と連れ添う相方が存在し、二人を中心に話が展開する
    三、 相方との関西弁での会話が絶妙、或いは相方への秘めた心理描写が面白い
    四、 可愛い女性が良いキャラを演じている

    私がこれまで読んだ作品は全てこれに当てはまった。
    この四つが絡まり合って、とにかく読んでいて楽しい。

    この作品は美術界の内幕、芸術院会員になるための派閥争いや贈収賄などの裏抗争を描いている。
    といっても、これがそのまま現実のことではないだろうが。
    でも、清廉潔白に見える芸術分野が、権威や権力を勝ち取るために、裏では金や生臭い争いにまみれているという、いかにもありそうな話になっている。
    ここまで過激ではないかもしれないが、これに近い状況がないとは言えないのだろう。

    私の知りあい(というにはおこがましいが、年齢がかなり上の方なので)が、天下の東京G大の学長に就任したとき、派閥の戦いがあったという噂を耳にした。
    この話のように実弾までは飛び交ってないだろうが。

    それでも、この作品内での魑魅魍魎が跋扈するどろどろした抗争は、政治家なども絡まって妙に現実感がある。
    最後の落ちも、ある程度予想されたこととはいえ、見事だ。
    黒川博行の筆の達者さと言うべきか。

    ラストの大村の呟き、
    「おれは絵描きやな」
    「おれは絵描きやろ」
    「絵描きは絵を描かんとあかん」
    という台詞は、絵描きは名誉や権力を得るための政治屋ではなく、純粋に絵を描くことにのみ研鑽すべきだという警鐘なのだろう。

  • 面白かった。登場人物のほとんどが高齢で欲深い。

  • 内容紹介

    芸術院の会員の座を狙う日本画家の室生は、選挙の投票権を持つ現会員らに対し、露骨な接待攻勢に出る。いっぽう、ライバルの稲山は、周囲の期待に応えるために不本意ながら選挙戦に身を投じる。会員の座を射止めるのは果たしてどちらなのか。金と名誉にまみれ、派閥抗争の巣と化した“伏魔殿”日本画壇の清と濁を描き、その現実の姿に迫った問題作。

    内容(「BOOK」データベースより)

    次期補充選挙で芸術院会員の座を狙う日本画家の室生晃人は、対抗馬の稲山健児とともに、現会員らへの接待攻勢に打って出る。師のために奔走する中堅画家や、振り回される家族たち…。絵に魅入られ、美の世界に足を踏み入れながら、名誉のためには手段を選ばない派閥抗争の巣と化した伏魔殿―。美術界の清と濁、画壇の現実に迫った問題作。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    黒川博行
    1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学卒業後、高校で美術を教え、86年、『キャッツアイころがった』で第四回サントリーミステリー大賞を受賞し、作家活動に入る。96年、『カウント・プラン』で第四十九回日本推理作家協会賞受賞。大阪を主舞台にした軽妙な語り口の中に、産廃問題や北朝鮮関連などの社会的テーマを取り込んだ独自の小説世界を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 面白かった。先が読みたくて一気に読んだ。
    日本芸術院。日本画家。
    芸術の世界はこんな感じなのか。
    …にしても、黒川博行氏の作品はどれもおもしろい。今一番好きな作家だ!2017.01.15

  • 金持ちでない奴が金を持つと次は名誉が欲しくなる。

  • 日本画の勉強にもなるかと思い読み始めた。
    が、どろどろとした汚い世界の連続。
    伏魔殿をあえて書くにはなんらかの理由があるのだろが、なんだか事実のように思えてきてやるせなくなる。

  • 面白かったー!
    日本美術界の裏側、政治家との繋がり、画商の暗躍。これはフィクション?どこまで真実かわからないけど、実際チャンスに恵まれずに埋もれてしまった(潰されてしまった?才能もあるのかも…と引き込まれてしまった。
    作品の良し悪しと、作者の人格は関係ないっていうのは笑えた。

  • 黒川さんの本はどれも最高で甲乙つけがたいが、
    中でもこれがベストワン候補の一つ。
    画家の先生達が個性的で面白い。
    文化勲章などがニュースなどで流れるたびに
    この本のことを思い出してニヤけてしまう。

  • 面白かった。出張の帰り道と家に帰ってきてから読む。飛行機で寝られなかった。ラストは予想できたがいつもながらひどい奴しか出てこない。芸術院会員から訴えられるようなひどい話。しかしボーっと口をあけて待っているだけでは地位も名誉も転がり込んでこないのはその通り。

  • 芸術院会員の座を狙うふたりの日本画家。
    選挙の投票権を持つ現会員への猛烈な接待攻勢。
    はたして勝つのはどちらか・・・
    魑魅魍魎が闊歩する芸術界の深部を暴く問題作。

    展覧会で入賞するのもコネと金
    ひとつ段階をあがるたびにコネと金
    芸術院会員になるためには1億からの資金・・・

    これ、すごいリアルなんだけど、現実もこんなのかなあ

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