日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫 は 8-15)

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  • / ISBN・EAN: 9784167483159

感想・レビュー・書評

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  • これは本当に事実なのかと疑問に思ってしまうほどドラマチックな1日の話。
    日本の行く先の方向性を決定づけたこの日は、薄氷を踏むような綱渡りの1日だったのだと初めて知った。
    ここまで引っ張って戦況を悪化させてしまったことを思うと、やっぱり日本人の組織は撤退判断が苦手なのかな。

  • 「半藤一利」のノンフィクション作品『日本のいちばん長い日 決定版』を読みました。

    『聖断 天皇と鈴木貫太郎』に続き「半藤一利」が太平洋戦争の終結を描いた作品です。

    -----story-------------
    あの日、日本で何が起こったか……

    昭和二十年八月六日、広島に原爆投下、そして、ソ連軍の満州侵略と、最早日本の命運は尽きた…。
    しかるに日本政府は、徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられ、先に出されたポツダム宣言に対し判断を決められない。

    太平洋戦争を終結させるべく、天皇の「聖断」に従い和平への努力を続ける首相鈴木貫太郎をはじめとする人々と、徹底抗戦を主張して蹶起せんとした青年将校たち──。
    玉音放送を敢行しようとする政府関係者に対して、陸軍の一部軍人は近衛連隊を率いて皇居に乱入した。
    そのあまりにも対照的な動きこそ、この一日の長さを象徴するものであった。
    玉音放送が流れた昭和二十年八月十五日正午に至る一昼夜に繰り広げられた二十四時間を、綿密な取材と証言を基に再現する、史上最も長い一日を活写したノンフィクション。
    -----------------------

    太平洋戦争終結に至る昭和天皇の判断(聖断)については、『聖断 天皇と鈴木貫太郎』で読みましたが、、、

    その二度目の聖断(八月十四日正午)から、玉音放送(八月十五日正午)までの二十四時間を一時間毎に区切り、二十四幕の構成で描かれています。

     ■序
     ■プロローグ
     ■十四日正午―午後一時 “わが屍を越えてゆけ” 阿南陸相はいった
     ■午後一時―二時 “録音放送にきまった” 下村総裁はいった
     ■午後二時―三時 “軍は自分が責任をもってまとめる” 米内海相はいった
     ■午後三時―四時 “永田鉄山の二の舞いだぞ” 田中軍司令官はいった
     ■午後四時―五時 “どうせ明日は死ぬ身だ” 井田中佐はいった
     ■午後五時―六時 “近衛師団に不穏の計画があるが” 近衛公爵はいった
     ■午後六時―七時 “時が時だから自重せねばいかん” 蓮沼武官長はいった
     ■午後七時―八時 “軍の決定になんら裏はない” 荒尾軍事課長はいった
     ■午後八時―九時 “小官は断固抗戦を継続する” 小園司令はいった
     ■午後九時―十時 “師団命令を書いてくれ” 芳賀連隊長はいった
     ■午後十時―十一時 “斬る覚悟でなければ成功しない” 畑中少佐はいった
     ■午後十一時―十二時 “とにかく無事にすべては終った” 東郷外相はいった
     ■十五日零時―午前一時 “それでも貴様たちは男か” 佐々木大尉はいった
     ■午前一時―二時 “東部軍になにをせよというのか” 高嶋参謀長はいった
     ■午前二時―三時 “二・二六のときと同じだね” 石渡宮相はいった
     ■午前三時―四時 “いまになって騒いでなんになる” 木戸内府はいった
     ■午前四時―五時 “斬ってもなにもならんだろう” 徳川侍従はいった
     ■午前五時―六時 “御文庫に兵隊が入ってくる” 戸田侍従はいった
     ■午前六時―七時 “兵に私の心をいってきかせよう” 天皇はいわれた
     ■午前七時―八時 “謹んで玉音を拝しますよう” 館野放送員はいった
     ■午前八時―九時 “これからは老人のでる幕ではないな” 鈴木首相はいった
     ■午前九時―十時 “その二人を至急とりおさえろ!” 塚本憲兵中佐はいった
     ■午前十時―十一時 “これから放送局へゆきます” 加藤局長はいった
     ■午前十一時―正午 “ただいまより重大な放送があります” 和田放送員はいった
     ■エピローグ


    『聖断 天皇と鈴木貫太郎』を読んだあとだったので、主な人物はわかっているものの、、、

    あまりにも登場人物が多く(巻末の主要人名索引では261名の名前が索引できるようになっています… )、あれっ… これ誰だっけ と思うことが何度もあり、進んだり、戻ったり、たまにはそのまま流したりと、そんなことを繰り返していて、読了まで意外と時間がかかってしまいました。

    でも、近衛師団が(ニセの命令により)決起してからの展開は、どんどん先が読みたくなり、後半は随分、早く読み進んだかな。


    戦争を終結させようとした人たちと、徹底抗戦しようとした人たち、、、

    それぞれ意見の食い違いはありますが、国体護持について、真剣に考え、議論し、自分の行動を決断し、その結果には責任を持つ… 国家のことや国民のことを、これほどキチンと考えた時代は、これが最後なんじゃないかと思いますね。


    そして、もし微妙なタイミングのズレがあれば、八月十五日正午の玉音放送は実現しなかったかもしれないということを初めて知りました。

    日本の、最も長く、そして劇的だった一日について学ぶことのできる作品でした。

    映画も、ず~っと過去に観たことがあるのですが、殆んど記憶にないので、また、時間の取れるときにゆっくり観たいですね。

  • 「忍び難きを忍び、•••」昭和天皇の玉音録音放送がラジオから流れた日、日本国民が無条件降伏の終戦宣言を聞く正午までに、日本国、国民の命運を定める長い1日に起こった出来事を天皇陛下、鈴木内閣閣僚、陸海軍将校達の国を愛する強い思いを通して、叙事的に感動的に描いている。
    昭和天皇の国民を想う心、鈴木首相の国を思う心、阿南陸軍大臣や青年将校達の国体を思う心、それぞれの思いが根底で繋がるのは強い愛国心であった。
    今の日本を取り巻く国際環境では他国から侵略されることが起こりうる、このような愛国心が国民に芽生え、国を救えるだろうか?歴史の転換点を見過ごすことなく、国を守るという平和を守るという意識愛国心を持っていたい。

  • 『本書は単に「終戦の日」の思い出ばなしを羅列したものではない。いま まで埋もれていた資料をもとに、日本人の精神構造を主題にして構成した、二十四幕の 長篇ドラマ"なのである。』
    という冒頭の文章が正にこの本はなにかということを
    端的に表現してくれている。

    『ここに登場する人物は、それぞれ自分のもっている”日本的忠誠心”にしたがって行動し、ぶつかりあっている。だが、ぜんたいをマクロ的に観察し、冷静な判断をくだす という大政治家、大監督がいなかった。そのため、同様の事態におちいった他の国々の 場合にはみられない独自の喜劇と悲劇が、出演者の意思にかかわりなく、いたるところ でおこった。それだけに、このドラマはスリルとサスペンスにみちた場面を展開した。
    「もはや戦後ではない」といわれるが、この敗戦という大激震のの ち、現在もなお目にみえないところで余震"がつづいているのである。』
    読んでいて終始苦しい本だった。
    誰が間違っているという訳でもなく、
    真剣に考えて動いているのに悲劇に進んでしまう。
    こんな長い一日があったことを、日本人の多くが知らないだろう。
    全員が知るべきであると思う。

    内容は苦しいものだが、文章はとても読みやすく
    わかりやすくて非常に良い。

  • 言葉が難しく、読み方や意味を調べながら読んだ。ウクライナとロシアの戦争中の時に読めてよかった。終戦に至る時にこれほど大変な事件になるのかと、思った。日本は戦後70年以上経っているから昔の話のように思うが、戦争勃発してしまうことの怖さも感じた。

  • ちょっと時代を感じてしまう…

  • 迂闊にも今に至るまで読んでこなかったのですが、読み通しました。敗色濃厚となり、ポツダム宣言受諾と玉音放送に向けた8月15日をめぐる24時間を詳細に描き出すもの。
    この期に及んでもさまざまな策動があったことは知っていたものの、これほど被害者や自決者を出していたとは知りませんでした。なんといいますか、言葉がない。

  • 2021年1月21日記述

    日本のいちばん長い日 決定版
    単行本1995年6月文藝春秋刊
    文春文庫2006年7月10日第1刷
    半藤一利氏による著作。
    これは半藤一利氏が35歳の時(1965年)に書いた作品。
    つい先日亡くなったというニュースが流れていた。
    既に高齢であることは知っていたのでやむを得ない。
    読んでいる途中で著者が亡くなった事を知るというある意味貴重な機会だった。
    ご冥福をお祈りしたい。

    1930年〈昭和5年〉5月21日 - 2021年〈令和3年〉1月12日(90歳没)
    Wikipedia上では生年月日、死亡年月日は上のように記載されていた。
    まさに人生100年時代かという思いもする。

    池上彰氏との対談本も面白かったし、2015年頃だったか終戦70周年のTV番組企画でこの日本のいちばん長い日を題材とした終戦時の裏舞台を紹介したものを見た記憶がある。
    その元ネタはこの本だ。
    人名索引もあり、非常に力を入れた作りであることはよく分かる。
    (野口悠紀雄氏によると索引をうけるのは大変面倒な作業のため、つけていない本が非常に多い。索引があるだけで評価に値するという)

    宮城で玉音放送の録音盤が奪われる事が無かったの幸いだ。
    ほんの少しの、ボタンの掛け違いが起きていたら、日本の終戦、敗戦はさらに遅くなり事態はもっと悪くなったかもしれない。
    国体が、国体が、と多く出てくる。
    当時の日本人にとっては大変に重要な問題だったのだろう。
    今ではちょっと考えにくい。

    ただ1つだけ個人的に感じたのは漢字表記の違和感だ。
    簡単な漢字は使わない所が多いように感じた。
    でも他の部分で漢字は多い。
    この違和感はかつて鎌田慧氏の原発暴走列島(2011)を読んだ時にも感じた。
    半藤一利氏が1930年生まれ、鎌田慧氏は1938年生まれ。
    何かこの世代特有の漢字選定なんだろうか・・・

    印象に残った点

    この本は、その特長として直接に証言者にあたり、実地の踏査を重んじたことにある。
    30年前にはまだそれが可能であった。
    もちろん当時刊行されていた幾つかの文献に
    あたったが、それらで定説となっているようなことでも一応は直接関係者の証言をとおして再確認し、疑いの残るものはとらなかった。
    そして今回知るかぎりの新事実を足したが、これで完璧になったかどうか、確信はない。
    歴史を正しく書くことの難しさは実感している。
    まして証言の食い違う当事者の、生存している現代史を書くことにおいてをや、である。

    聖断は下ったのである。
    いまはそれにしたがうばかりである。
    不服のものは自分の屍を越えてゆけ


  • 御聖断が下り、大日本帝国は降伏へと向かう。承詔必謹の方針は日本陸軍でも決まった。
    一方で、現実離れした独りよがりの国体の護持を企てる青年将校は、宮城占拠し聖戦貫徹を目指す。いずれにせよ、青年将校が自分たちの理想だけ見て、国民の惨禍に思いを馳せない、弁護の余地無し。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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