AV女優 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167493028

作品紹介・あらすじ

1991年から96年にかけてアダルト・ビデオの世界で息をしていた少女たちへのインタビュー集。昨日のことのようで遠い昔のあの頃、一人の女の子が傷つき苦しみながらようやく辿り着いた場所。それがAV。一人の女の子が軽やかに笑いながら駆け抜けて行った場所。それがAV。そんな彼女たちの姿を炙り出した記録集である。

感想・レビュー・書評

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  • 42人。42人かぁ。これはすごい本だ。

    一人一人の人生がつまっている、これに尽きる。
    今まで特に知識もなく、ただ漠然と「苦界に身を落とした…」みたいなイメージを持ってたけど、それは違う。そういう人もいるかもしれないけどみんなではない。凄絶な事情を抱えてる人もいれば本当にその仕事を好きな人もいれば流されてやった人もいれば、でもみんな、「語ること」を持っているのだなあと思う。聞き手の永沢さんの力ももちろんあるだろうけど、自分の人生をこういうふうに語れるか、というのは、とてもむずかしいことなのではないかと思う。生きるために毎日手探りをして、その積み重ねで現在があるのでなければ。
    一人一人のエピソードで、ああ、これはいい言葉だなあ、というのがどこかしら見つかる。本人は狙って言っているのではないだけに、はっと心打たれる。

    いい本でした。もう少し生きてから、また読み返そう。

  • 生々しいリアルに寄り添った、愛ある文書。まるで本人たちと話しているような、気持ちになれました。

  • ★人の描き方のお手本★すごく久しぶりに再読。1991-96年にAV情報誌に掲載のインタビューをまとめたもので、出版当時にかなり話題になって読んだ。インタビュー集としては出色のものだと改めて感じた。
    親から虐待やネグレクトにあっていたり彼氏が殺されていたり極端な貧乏だったりそういう事情とは別に性的に奔放だったり、型にはめようと思えばいくらでもできる記事で毎回異なる角度から女の子たちに光をあてる。上からの押し付けでなくそばに寄りそう温かさが根底にあって、そこに技量が重なっている。バブルとその直後の雰囲気もしっかりと写し出されており、同時代史としても読みごたえがある。こういう記事をエロ本に載せた雑誌の力も当時はあったことを痛感する。
    最初に書籍にまとめた、フリーの編集者の向井徹氏の慧眼もすごいと、今になって感じる。文庫版ならではの後書き2編も構成の妙がある。

  • 折しも、1人目の女優である「冬木あづさ」さんの誕生日が12月8日と紹介されており、私がこれを読んだのも12月8日であり、その日、父の誕生日でお祝いから帰ってきた後であったので、印象に残った。

  • 話し手を生かす、すばらしいインタビュー技術との評を聞き、読んでみる。ふつうのおじさんが、ふつうに聞いている気もする。感覚はちょっと古い。1993年だからしょうがないか。

    AV女優になる人というのは、どういう人なのだろうという興味もあり。

    今で言うネグレクト、ヤングケアラー、親のDV、ヒモなどなど、多くがひどい家庭背景。が、読書好き、ソフトボール県大会優勝、水泳選手、ピアニスト、アメリカ留学経験、などなど、華やかなる人達も。もう、幼き頃から性的に錯綜してるとしか思えない人、SEXが好きで好きでAV女優になりたくてまたまらなかった人など。ソープランドで働くのは天職、とか。刹奈紫之の章が圧巻。

    つまり、色々いる、ってこと。体を売るしかなかったかわいそうな人、とは一概には言えないということ。人は(自分は)知らない世界のことを、こんなにも単純化して見ているのだなと思い知って反省。

    彼女達の主体性に希望を見たい。30年近くを経て、いま、彼女達の多くが、私より少し年上の大人の女性である。彼女達がどんな人生を送ってきたか知りたい。できれば、男を食いものにする、力強くしたたかなものであってほしい。


  • 1990年代にAV情報誌に掲載していた、AV女優にインタビューを42人分まとめたもの。

    村上春樹の『アンダーグラウンド』並の分厚い本だが、女優それぞれの生き様が壮絶だったり悲しすぎたりして、最後まで楽しく読めました。

    色んな経緯でAV女優になるのだが、概ね崩壊した家庭で育ち、劣悪な環境で育った女性が多い。少数だがナチュラルボーン大淫乱系や、医者の娘なんかもいた。

    荒みきった環境の中で育ちながらも、たくましく生きる女性たちの物語を読むと、人生って色々あるけどがんばらなくては、と思う。

    娘を育てる方にも読んで頂きたい、素晴らしい本でした。

  • 1

  • ブランチのガイド本から。一度は却下されながらも、どうしてもの熱意で番組に取り上げられた、って経緯にも興味があり、一度読んでみることに。要はインタビュー集なんだけど、確かに十人十色っちゃそうなんだけど、突き詰めるとあまり違いの無い内容の羅列って気も。後半はかなり流し読み。続編もあるみたいだけど、読まないです。

  • 自由について考えるうえで、おそらくもっとも有用な哲学書だ。でもそれは貧しい感想で、「彼女たち」からしてみれば、「まず自由を生きてしまった」ことへのためらいや後悔や自己肯定の記録になっている。

  • いくらこの本の中で彼らがなんてことのないように、明朗快活に語らっていようと、彼らの多くが悲壮な体験を持っていることに変わりがなく、その悲壮な体験をAV女優が揃いに揃って待ち合わせているのは偶然でもない。

    「彼らは自分が「落ちた」という感覚はない」
    そりゃそうだと思う。彼らは毎日を一歩一歩生きているいるし、経験から形成された価値観や選択肢の中で最善の選択をしている。

    「我々が彼らを落ちたという筋合いもない」
    半分同意で、半分同意しきれない。確かに、我々が彼らを「落ちた」という表現をするのは正しくない。でも、もし違う環境だったらAV女優が一つの選択となりえたのかは、分からない。

    なんだろうな、自分でも言いたいことがはっきりしないのだけど、彼らの快活さをリスペクトするも、彼らの人生の選択を尊重することも正しいけど、その明るさと自己肯定があるからって、全部の悲惨さが帳消しされるわけじゃない。

    誰かに、大変だったねって言われて、自分が大変だったってことを認められる・気づける解放感を私が知っているから。

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