- Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167528096
感想・レビュー・書評
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作者もあとがきで触れていたとおり、これより前に発刊された本に収録されていた「鉄輪」という短編に新たなエピソードを混ぜ、省略されていた背景を詳らかに語り直した長編。
既刊をしっかり読んでいる読者には、もう知ってるぞその話は、と思わせるところもあるが、相撲節会や琵琶のくだりは新たなエピソードだったし、なにより博雅の話を丁寧にしてくれたおかげで、生成りになってしまった姫との名状しがたい感情のやりとりがとても哀しく、印象的にうつった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安陰陽師伝奇ファンタジー第五巻。初の長編。以前に短編として発表されていた"鉄輪"をベースにした話で、悲恋の末に鬼(生成り)へと化していく姫と、晴明・博雅との絡みを描いていく。鉄輪以外にもこれまでに短編に出てきたエピソードがちりばめられており、さながら総集編といった趣。それでいてしっかりと魅せるあたりは流石かと。
ただ、これまでの短編では時に濃かったえぐみは薄目で、晴明というよりも筆者あとがきにもあるように博雅の物語といった感がある。彼の純真さにこころ救われる思いがする。 -
シリーズ5番目
晴明からたびたび、お前は良い男だな、優しいな、と言われる博雅の魅力がいっぱいに散りばめられたストーリーとなっています。
博雅と晴明のキャラもよく見えて、エンタメとして読むのが楽しみになってきました。
。。。
博雅と長年の思いびとの徳子姫との一部始終。
博雅の笛を橋の袂で聞いたことから、お互い恋心を持ってきたが、徳子姫は別の男性と結婚して、そののち捨てられ、鬼に変貌してしまった。男性の新しくできた恋人を呪い殺し、浅ましい姿になり、それを博雅に見られるという失態。
恨みと辱めと愛憎がぐるぐるして恐ろしい情景が描きだされるのだが、最後は大きな博雅の愛に包まれて、元の徳子に戻っていくのだった。
すさまじい鬼の姿になってもまだ徳子を愛おしいと思う博雅の優しさにじんとくる
自分の腕を噛まれても!! -
博雅の悲しい恋物語。
夫に捨てられ鬼と成りかけ自害した徳子に語り掛ける場面は本当に切なくて読むのが辛かったです。
どこまでも優しい博雅、それに比べて済時の下衆なことよ…。 -
長編版もよかった。
男の勝手な都合に振り回された徳子が可哀想だと思った。鬼になりたくないのにならざるをえないほど心が耐えられなかったんだろう。
博雅は本当に優しい男だ。
相撲の話もそこで繋がったかと合点がいった。 -
「人は誰しも心に鬼を飼っている。人は鬼になりたいと願ってそうなるのではなく、鬼になるべくしてなるのだ。」という清明の言葉が印象的。確かに、人は追い詰められて、追い詰められて、どうしようもなくなったときに鬼になるという気がする。
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長編には長編の良さがあった。
けれども個人的には短編の方が好きだな。
徳子姫の哀しさがよく見えるのは長編。 -
なんとも哀しい、ただ哀しい。
誰の心にも鬼が棲んでいて、鬼になってしまうのをどうすることもできない。せつなかった。
晴明が言うように、博雅はよい男だ、と改めて感じた。 -
博雅お前は本当に良い漢だなぁに尽きる(╹◡╹)悲しい終わり方だけど読み終わってスッキリした気持ちになった。悲しいハッピーエンド?前作より式神も多めでそこも面白い。あと平安時代の話だけどそんなに堅苦しくなくサクサク読めました。今後もシリーズ読み進めていきたい。