ストロベリー・ロード 上 (文春文庫 い 27-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 89
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167530020

作品紹介・あらすじ

キャリフォーニ。ことばの壊れた日系人たちにそう呼びならわされた土地。その一画のイチゴ農場で働く長兄を頼り、移民船「あふりか丸」で渡米した作者は、当時十八歳。なけなしの100ドルが所持金の全て。しかし、そこは夢をつなぐ土地ではなく、違和と混乱の世界だった。大宅賞を受賞した、かつてない真率無類なアメリカ青春記。

感想・レビュー・書評

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  • また面白い小説に出会えた。

    1960年代、アメリカに渡った日系人の話。いちご農家をして生計を立てる兄を訪ねた弟。英語もできぬ中、学校に通い始める。その頃の日本はまだ貧しかった。高度成長期はそれ以降の話だ。その時代については知らないことが多い。まして、アメリカでの日系人の生活は想像がつかない。小説ではあるが、この話は著者石川好の私小説だ。

    小説なので詳細は記さぬが、様々な葛藤と青春が溢れ出るような話だ。性、国民性、語学能力、戦争、年齢、自我。戦時を生きた人たちとの触れ合い。60年代の象徴的なサブカル的キーワード、平凡パンチ、ヘルズ・エンジェルズ、人権の擁護者セザール・チャベス、ビートニク、ヒッピー、花菱アチャコ。

    時代感覚が全く無いが、だからこそ面白い。下巻が楽しみである。

  • アメリカ、カリフォルニアに農業移民した日本人の話。少しデフォルメしてあるが、ほぼ作者、石川好さんの経験、体験に基づく話。上巻は石川さんの兄がアメリカに渡るきっかけと、お兄さんを追ってアメリカに渡り、英語を勉強するために高校に通いながら、いちご畑で働く弟(好さん)とその周りの人達を描いている。戦前貧しかった日本でアメリカに憧れて移民したものの、「成功」とは程遠い日系人農業移民のギャップについての悩みが描かれている。

  • 今まで読んだアメリカンストーリーの中で最もおもしろかったしお気に入りの本ベスト5に入るかもしれない。
    1960年代のアメリカとアメリカから見た日本を綴った話。当時の生活ぶりや大々的に語られることのない、というよりは情報発信手段を持たない移民の人々の生活を知ることができる貴重な文献だ。日本内部から見た日本の本はいくらでもあるけど、結局その人が当事者となってしまっているわけだから客観的に語られていないことがほとんどだ。でもこの著者はものすごく鋭い視点で分析できている。
    排他的な白人、ラブアンドピースを掲げたヒッピーたち、アメリカ化しようとする日本人、夢に破れる者たち、第一次産業を移民に頼り切って搾取するアメリカ人。
    そういった現代に至るまで綿々と受け継がれている問題の発端がよくわかった。
    何よりずっと不思議だった「アメリカンドリーム」の根源が女を呼び寄せようとした男たちの見栄とそれに夢見た女たちによって作られたという著者の解釈がめちゃくちゃ斬新で衝撃的だった。そういうことだったのか!!確かにうなずける!

  • 2016/06/29 読了

  • 地に足の付いた良書。

    なんでもっと売れへんかったのか

  • アメリカの社会問題の一面を垣間見た感じ。
    「キャリフォーニ。ことばの壊れた日系人たちにそう呼びならわされた土地。その一画のいちご農場で働く長兄を頼り、移民船「あふりか丸」で渡米した作者は、当時18歳。なけなしの100ドルが所持金のすべて。しかし、そこは夢をつなぐ土地ではなく、違和と混乱の世界だった。」背表紙より。

  • アメリカの日本人移民社会を知るには格好の書。
    そして著者の文章のセンスはすごいと思う!
    ほんとうにおもしろい。
    そしてアメリカという国の真実を突いている。

  • これも友達に貸してもらいました。
    アメリカに第2次境大戦後移民してきた日本人のお話なんですが、とっても興味深かったです。
    ちなみに実話です。
    明日がどうなるか分からないのに賢明に生きた彼の日々が綴ってあります。
    是非アメリカに来た人たちに読んでもらいたいです。

  • 18歳の青年の息吹がカルフォルニアの地から伝わってくる。カリフォルニアのイチゴ畑で働く兄のもとへ身をよせた著者の、土と汗まみれの青春。

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著者プロフィール

1947 年東京都大島町生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。
89 年『ストロベリー・ロード』で第20回大宅壮一ノンフィクション賞。
新日中友好21世紀委員会委員、
秋田公立美術工芸短期大学学長などを歴任。
主な著書に『60 年代って何?』(岩波書店)、
『中国という難問 生活人新書』(日本放送出版協会)、
『漫画家たちの「8・15」 中国で日本人の戦争体験を語る』
(潮出版社)ほか多数。

「2015年 『漫画家たちのマンガ外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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