- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167546151
感想・レビュー・書評
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昔気質の一人のヤクザの人生。侠客と言うべきか。真っ直ぐで静謐で。もちろん彼がやってることは犯罪(殺人・暴力)だけど守りたいものを命をかけて守る。純真で控えめで。タイトルの羊の目とは最後のエピソードの中で。
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戦前・戦中・戦後、激動の昭和を苛烈に駆け抜けた男の数奇な人生。
主人公・武美はどこまでもひたむきに辰三を親と仰ぎ献身を捧げる。
辰三に仇なすものは容赦なく葬り去り、辰三が死ねといえば過たず死ぬほどの忠誠を誓う武美の姿は切ない。
しかし武美の目はどれだけ人を殺しても汚れない。決して濁らない。
辰三の命により背中に彫った獅子とは裏腹に、どれだけ手を血に染めても、その目だけは生まれ持った純粋さを失わず澄み続ける。
「私は神を信じません。
私が信じるのは親だけです」
侠客の物語である。
おそるべき暗殺者の物語である。
あまりに哀しい男の物語である。
羊の目をしながら群れからはぐれ、羊として生きられず、一匹の獅子として修羅に身を投じた武美。
売られ裏切られ遠い異郷の地に身をひそめても一途に辰三を信じ、辰三の為にできることを模索し続ける生き様に胸が苦しくなる。
沈黙者ーサイレントマン、神崎武美。
静かなる暗殺者。
神を信じず、唯一の親だけを信じ仰ぐ無垢で孤独な羊。
神とは、救いとは。
昭和の闇の永きを彷徨する孤独な魂は救われたのか。
武美が最後に回想する情景の美しさには涙が出る。 -
静かな世界。
もう少し狂気があっても。。
話的には -
捨て子としてヤクザに育てられた男の物語。
親分をひたすらに信じ、親分に害なす者をことごとく排除し、時代が義を尊重しなくなったとしても自分だけは信念を貫き通す。
昨今では裏切り裏切られが当たり前の風潮だが、このような生き方が完全に過去のものとなってしまうのは寂しい気がする。 -
少し背伸びして普段は読まないような伊集院静の作品を手に取った。
ヤクザものの作品は初めて読むこともあり、言葉が難しかったが、内容はスッキリとしていて読みやすかった。侠客の義とは何か理解はし難いが、触れることができた。神崎武美の壮絶な人生を描いた作品だが、嫌な気持ちにはならず、柔らかな気分で読み進められた。 -
侠客の生きざまカッコイイ(≧∇≦)!主人公の神崎武美は優しく不器用だけど、育ての親辰三を最後まで慕う姿が素敵‼(^o^)しかし辰三は読み進むうちに、どんどん嫌な奴になってきて途中で切なくなった(--;)「眠る蝶」の話が一番好き♪
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戦前から戦後を経て現代に至るまでを生き抜いた一人の侠客を描く大河。久々にズシリとくるものがありました。ヤクザ業界は確かに時代の変遷に大きな影響を受けるでしょうね。所謂シノギ・ミカジメで成り立っていた彼らが、土建・港湾・風俗など所謂正業へとシフトしていくに伴い、「義」の世界とは遠ざかる。そんな中、この流れに逆らってでも、最後まで「義」を自分の生き方の軸に据えや男の人生…うーむ、痺れる。ハードボイルド小説を読んだ後は、自分もかっこよく生きたくなる。
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己を捨て、誰かのために戦う究極の侠客を目指す孤高の男の物語。時は太平洋戦争の前後。名もなき夜鷹の子として生まれ、浅草の親分辰三の元で育てられた武美。唯一絶対の親と崇め、ともに手を携え破竹の勢いで勢力を伸ばしていく。しかし、戦後日本全国制覇を目指す、関西系暴力団の魔の手が二人に忍び寄る。裏切り、救済、大義が蠢く世界で、生き抜く様を繊細かつ大胆なタッチにて書き込む一大大河もの。終わりはかなりはっちゃけています。が、連作短編にて、静と動のストーリーをうまくからめ、多視点にて高潔、寡黙、孤独の裏に潜む温かさを綴る至極の一品もの。羊の目とは、誰かの温もりがほしいという喩えのようだ。初伊集院作品。この作家はまりそう~。
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牡丹の女
観音堂
ライオンの舌
眠る蝶
竜の爪
ホットドッグ
羊の目
神崎武美・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -
伊集院静さんで一番好きな本。一週間で読んでしまった。面白い過ぎで読み終わるのが残念だった。