タマリンドの木 (文春文庫 い 30-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167561055

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛をきっかけに、どのような社会・価値体系・自然環境・政治環境のなかで誰と生きてゆくのかをゼロから検討することになり、たまたま生まれ慣れ親しんだデフォルトの社会を自ら逸脱する可能性と災害などによって社会が崩壊するかもしれない可能性とを見つめて、静かに決断する男性のお話。縦糸が恋愛なので読みやすかった。冒頭の難民キャンプで過ごす母子のモノローグが、世界は広いようで地続きですべて繋がっていてあらゆることは対岸の火事ではなくいつ同じようなことが自分や身近な人たちにふりかかるか分からないのですよ、という厳しい現実を影絵のように写し出しているようでした。二人が出会うきっかけを作ることになった同僚と主人公の男性との近過ぎないけれど親しさや分かり合っている感じの関係性も良かったです。少しロマンチックに過ぎる向きもありつつ、大変満足して読了しました。

  • 大人の恋愛小説。
    静かに時間は過ぎていて、世界を揺るがすような事件はなくて、でも、2人の世界は大きく様変わりしていく。
    短い小説で、映画のようだけども、映像にしたら案外と単調かもしれない。

  • 恋愛っていい!(したい!)って激しく感じてしまう物語だ。

    出会いも、会話も、女性の存在感も、男の奥手な感じも、美しい性愛描写も、カンボジアという国の貧しさ・悲惨さ・力強さも、そしてタマリンドも、すべてピシャリときた。

    池澤夏樹にでてくる女性はいつも美しいが、とりわけこの本の女性は美しい。

    いつかのために、私も主人公と同じような決断がとれるような心構えをしとかなくては。

  • レベルの低い本だとまでは言わない。それなりにストーリーはあるし、何より修子のキャラが立っている。行動の人手ある。これに対し主人公の野山は思考の人だ。出会いが2人を結びつけるが、相互に理解できる言葉を持たない。そこがおそらくは肝となるのだろう。物語の3の2ほどまではそれなりに良くできていると感じた。少なくとも『骨は珊瑚、眼は真珠』より良い。しかし最後のまとめ方が良くない。修子と野山を結びつけるものが観念でしか示されない。最後のシーンも無駄だった。彼女に連絡を取り、タイまでやって来るというところまでは良いだろう。しかし再会を書くのは蛇足にしか見えない。タイトルについても再考が必要だ。タマリンドの木はほとんどこの物語を支えてはいない。

  • タイのカンボジア難民キャンプで働くとはどういうものかを教えてくれる。人助け、ボランテアで働くのでは長続きしない。それが自分にとって必要だから長続きするのだ。2020年の今は難民キャンプも閉鎖され、カンボジアも着実に復興している。

  • 生き方の選び方」ついて思いました。

    アジアのNPO法人で働く彼女と
    日本でメーカーの営業職をしている主人公の彼とが
    ある接点を持ち惹かれ合いますが
    お互いの生き方の違いのため離れて生きることを選択する。


    男の生活に女が合わせるという常識は
    ともすれば生活の安定する方を選ぶという事である。
    常識のために生きるのか。


    『流される安定の息苦しさ』と『自分で選択する気楽さ』の狭間で
    受け入れ感や許容範囲・請け負う覚悟・納得感などの中でもがく主人公。



    世界に住む日本人のキッカケのようなものが話の中にあり
    どうして海外で暮らせるのだろうか?
    行ってみたいと思ったのか?
    日本が居場所じゃない感じはどのように感じられるのか?
    といった疑問にも説得力がありました。


    相手の人生の先を自分の人生の先の延長線上に見られるかどうか。
    どちらかの妥協ということではなく
    より強いイメージや進んでいく力が境界線を曖昧にし
    自分ごとが相手ごとになっていく様子に彼らの未来を感じました。

    重く難しいテーマはなく短いお話なので案外気楽に読める一冊です。

  • 恋愛小説!です。心地よい一気読み。こういうの久々。
    盛岡の町の感じがわかるから読んでて面白かった。カンボジアは行ったことないけれども。

  • 20年以上前に、池澤夏樹の一連の南国の物語に熱中したころに読んだ本書を、ミャンマーに旅したこときっかけに再読した。「タマリンド」はなぜか私にとって、南国の湿度や浅黒い人々、美味しい食べ物などをノスタルジックに想起させる言葉の一つである。この本を以前読んだからだろうか。
    小説『タマリンドの木』のほうは、行ったばかりのミャンマーを、都市の交通渋滞と汚れた空気、田舎の何もないけれど何でもある感ややたらと安くておいしい食べ物などを、今度は生々しく、想起させてくれた。同時に、私が惹かれるアジアの暮らしのシンプルさや暮らしたら得られるであろう日々の暮らしの充実感に対する憧憬を、主人公と(おそらく再び)分かち合えたのも嬉しかった。
    このころの池澤夏樹作品を熱烈に好きだったあの頃を懐かしむ機会にもなった。

  • こんなラブストーリーも書くのか?爽やかなエンディング。

  • 前半、いいんだけど、後半が足らない~。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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