光源 (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602055

感想・レビュー・書評

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  • 桐野さんの作品は好きなほうですが、この作品は読みやすいのですが・・・最後まで読むと分かるのですが、なぜここで終わるのかな??と謎でした。でも、このなんともいえない不安感を求めて書いた作品なのかもしれないです。

  • 桐野夏生さんの本は大好きですが、中でもこれはお気に入りです。
    いつもの桐野さんの作品のように、恐い事がある訳でなし、残酷なシーンもなし、あまり話題にもならなかった、どっちかというと地味な作品だと思いますが、読んでいてすごく面白いので惹きつけられました。

    この物語は「ポートレート24」という映画作成に関係する人々、それぞれの目線で描かれている。
    物語の前半の主人公は優れたカメラ技術をもつ撮影監督の有村秀樹。
    有村は金に困っている折、昔の恋人であるプロデューサー、玉置優子の仕事依頼の電話を受ける。
    内容は薮内三蔵という無名の新人が脚本・監督する映画「ポートレート24」の撮影の仕事。
    脚本の内容は、妻を失った細野という男が旅に出て1本のフィルムを撮り終わると同時に自殺するという話で、ストーリーが地味で辛気臭い上に、監督は無名の新人。
    さらに、制作費は優子の個人もちでかなりな低予算というものだった。
    その映画の唯一のウリと言えるのは、今脂の乗った俳優、高見が細野役として主演を演じること。
    やがて始まった撮影では、制作費を度外視して理想を追う監督と技術も経験もある熟練したスタッフの間で齟齬が生まれるが、紆余曲折ありつつも一つの映画作成に向けスタッフは情熱を傾けてゆく。
    しかし、そこに主演、高見の相手役として元アイドルの佐和が加わった事により、撮影不能となる徹底的な出来事が起きてしまう。

    映画撮影というプロとしてのプライドがぶつかり合う現場。
    そこにいるのは映画監督、プロデューサー、カメラマン、俳優といった、自分の仕事や考えにこだわりをもつ一筋縄ではいかない面々。
    一つの素晴らしい作品を力を合わせて作ろうという情熱と個人の打算や我執に揺れる心。
    そんな心情を一人一人の目線を通してしっかりと描かれています。

    この話では、佐和登場前と登場後で話の雰囲気が変わり、描かれる主な登場人物も変わります。
    最初は撮影監督の有村、プロデューサーの優子、監督の三蔵目線で描かれていた話が、中盤以降は俳優の高見、佐和目線で描かれていく。
    結局誰が主人公だったのか分からない話。
    でも、その誰もが自分が光源としてありたい-と思っている。
    そのためには時に他人も犠牲にしなければならない。
    そんな鬩ぎあいが見ていて面白い。
    後半になればなるほど、スピード感を増して楽しめる作品です。

    この話では出資者、俳優、監督、カメラマン、それぞれに権力が分散していて、それがために起きた悲劇のような気がしました。
    高見のとった行動は人間としては間違っていても、俳優としては正しい選択だった・・・それが皮肉だと思います。


  • いったいなんなんだこの後日談は!
    高見の性格が、最初と最後で変わってないか?
    …と、文句を言いたくなるような、めちゃめちゃな結末なんだけれど、でも、許せちゃうんだよなぁ。
    読み進めていく間の、なんとも言えないゾワゾワ感が、それ以上に素晴らしかったから。
    こういったドロドロの人間関係や心理のアヤを描かせると、桐野夏生は、本当に上手い。

  • 一本の映画制作に関わるプロデューサー、新人監督、ベテランカメラマン、大物俳優、アイドル女優たちが、自分を輝かせようとぶつかり合うお話。
    ハッピーエンドでないことがわかるので、ずーっとハラハラしながら読んでました。
    “世にも身勝手な奴らの逆プロジェクトX物語”
    本当にそれだわ…

  • 全体的に読みやすかった!
    この先どうなるの?という感じもあり読み進めたけど、最後のオチが謎…
    どうしてこうなった?
    不完全燃焼!

  • 結構節操ねぇぜ、この作品。
    なので読書の際はホントーにお気をつけあれ。

    なけなしの金で撮影というところで
    まあアカンフラグはたっているわけですよ。
    そして関わる人物も節操なしというか
    なーんの摂生も効かないの。

    だけれどもなんだかんだで一人を除けば
    まっとうに活躍はできてるの。
    思わぬ救いの手が入ったりね。
    でも一人、あいつぁだめだよ。

    身勝手極まりない作品。
    不条理嫌いは読んじゃあだめだ。

  • 映画制作に関わる人間たちの利害や思わくが激しくぶつかり合いながらも、撮影が進んでいく描写は生々しくも読む者を引っ張っていく。。
    普通の物語ならラストに映画が完成しハッピーエンドとなる所が、何故かふとした食い違いから大破綻を迎えてしまうが、予定調和のラストでは絶対に味わえないこのなんとも言えない不安感こそが、桐野作品の真骨頂なのでは。

  • 低予算映画をめぐりプロデューサー、監督、撮影監督、役者、スタッフの思惑が絡み合い、予想しなかった結末へ向かう。あの結末なのに、なぜカタルシスを覚えるんだろう。
    一人一人の行動、感情を納得させるのもすごく、勢いがあって一気に読みきった。

  • 面白かった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    誰よりも強く光りたい。元アイドルの佐和が自分を主張し始めた途端、撮影現場は大混乱。苦り切る人気俳優、怒る監督、傷付く女プロデューサー、佐和に惹かれるカメラマン。金、名声、意地、義理、そして裏切り。我執を競い合って破綻に向かう、世にも身勝手な奴らの逆プロジェクトX物語。直木賞受賞後第一作。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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