- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167640149
感想・レビュー・書評
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髪結い伊三次捕物余話、8作目。
2011年には出ていたんですね。
主人公はシリーズ名どおり、廻り髪結いの伊三次。
町方同心不破友之進の手伝いもしているのですが、息子の龍之進の力になる機会も増えています。
じつは‥若い世代の話ばかりで、伊三次以上にごひいきだった妻で芸者でもあるお文の出番が少ないのでちょっと飽きてきて、しばらく読むのを休んでいましたが。
やっぱり、好きなシリーズです☆
龍之進も番方若同心になり、進境を見せるところがすがすがしく、頼もしい。
「委細かまわず」では、上役の小早川と対峙して成長していく。
「黒い振袖」では、ある藩の姫が行方不明となった事件を若手で捜査することに。
お家騒動の渦中にあり、喪服がわりに黒い振り袖を着た、かがり姫。
ひととき危機を共にしたことで、忘れられない相手に。
「明烏」は、久々にお文が主役。
夢の中、異界へ迷い込んだような形で、生みの母のいる美濃屋に引き取られた場合の生活ぶりが描かれます。
嬉しさと違和感と寂しさと。
そして、今の幸福をかみしめる。
いい味わいの話でした。
「我、言挙げす」という題は、内容が想像できませんでしたが、いい言葉ですねえ。
龍之進は、かって上司の不正を告発しようとして閑職に追いやられた人物・精右衛門へ、「言挙げなさった」という言葉で、共感を伝えるのです。
ラストは火事で家が焼けてしまうという衝撃的な結末ですが、この続きで暮らしが立ち直っていく様子もちゃんと出版されているので、続けて読みつなぎましょう☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伊三次シリーズ第8弾。近作では、伊三次が脇役にまわり、不破の息子・龍之進を主役とする作品が増えてきた。志だけ高かった龍之進も段々と御役目が地に足が着いてきて、頼もしくなってきた。
それでも、伊三次の登場シーンには安心感があるし、お文の心の揺れを描いた「明烏」は長期シリーズならではの名作である。
「我、言挙げす」・・・。奥の深いいい言葉です。 -
髪結い伊三次捕物余話ももう8作目。ますます快調という感じ。伊三次の親分である町方同心不破友之進の息子で番方若同心になった不破龍之進が物語の主役格となって活躍する。その初々しい感性が作品の大きな魅力だ。なんていうのはこっちがトシとったということなのか(笑)。
「委細かまわず」の謎の上役小早川への澄んだ眼と評価、「黒い振袖」の井川藩かがり姫への純心と淡い慕情、「我、言挙げす」の精右衛門の正義への共感、いずれをとっても清廉直情の若者ぶりが表れていて好もしい。
前にwebmaster日記(2009.10.12)に書いたけど、シリーズ第6作「君を乗せる舟」の中の名セリフ、思いを寄せる娘あぐりが祝言に向かう舟を見送っての「私は舟になりたいと思いました」にはほんとに泣かされた。トシは取りたくない、いやトシはとってもずっとこういう感性を持ち続けていたい、とつくづく思う。
あ、もちろん伊三次とお文の夫婦に一粒種伊与太は健在で、そっちが主体の物語もこれまで通り。中には「明烏」みたいな珍しい異界譚もあって、趣向が凝らされている。
と、ほめておいて一つ苦言。著者による「文庫のためのあとがき」、これは蛇足以下だったね。web上の書評への感想なのだが、「アホかいな」はいくら筆が滑ったとはいえ、プロの書き手が読者に対する言葉としては不穏当だろう。思うのは自由だが印刷紙面に載ることの意味がわからぬトシでもなかろうに。 -
夢の話や某大名家の姫様やら、毛色の違う話がいくつか。多彩。
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龍之進の出番が多くなった。シリーズとともに成長して、今後が楽しみ。