- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167646080
作品紹介・あらすじ
恋する男に身請けされることが決まった吉原の女が、真実を知って選んだ道とは…。表題作ほか、ワンマン社長とガード下の靴磨きの老人の生き様を描いた傑作「シューシャインボーイ」など、市井に生きる人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇集。著者自身が創作秘話を語った貴重な「自作解説」も収録。
感想・レビュー・書評
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涙が落ちてしまう瞬間、私ってちょろい人間だなと思ってしまう。時代遅れと感じながらも浪花節に弱い。
浅田次郎さんが、短編集に収められている七編を創られるきっかけになったお話が解説としてある。面白い試みだなとも思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
浅田次郎は人情ものがいい。
「蒼穹の昴」は傑作だし、「壬生義士伝」も何度読んだか。しかしやっぱり浅田次郎は人情ものがいい。
浅田次郎の人情ものは「悲しくて、温かい」。
近年よくある何気ない日常でのほんわかストーリーではなく、ちょっと特殊な舞台設定だ。主人公は大正時代の太夫だったり太平洋戦争のソロモンで戦う将校だったり網膜色素変性症の女性だったり。いずれも辛く悲しい経験をするが、己の幸福のみを追い求めることなく、他人の幸せを願うのだ。何故この人たちはこんなに悲しい体験をしたのに他人に優しくできるのだろう、と思わずにいられない。
だから「悲しくて、温かい」。
本作で私が特に好きなのは「シューシャインボーイ」だ。最後の遺書は、電車の中で読んでいるにも関わらず涙があふれ出て仕方なかった(...恥ずかし)。
ところで、浅田次郎の人情ものを読むと「人情噺」を想像する。落語の「文七元結」や「芝浜」などが有名な人情噺だ。本作の短編を談志や圓楽が人情噺として演ったら絶対にグッとくると思いませんか?もう二人とも鬼籍に入っているので、今なら誰が上手いんだろうか...などと想像するのも楽しかったりする。 -
山岡荘八の「小説太平洋戦争」を読んでる最中だからだろうか、太平洋戦争時、激戦地ソロモンでのエピソードを自衛隊の労陸将が語る「雪鰻」が良かった。
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さすがの浅田短編集
あとがきに作品が生まれたきっかけエピソードがあって
興味深く拝読
日常にある足元の小さな石を懐に入れて温めると
このような世界が出来上がるのかと
感心 -
「泣かせ」に鼻白んで遠のいていた浅田次郎氏の小説を久しぶりに読んだ。やっぱりうまい!本書は、短編集。「鉄道員」は素晴らしかったが、本書もなかなか良かった。
浅田氏のすごいところは、全く自分に重ならない設定の人物にまでどっぷりと入り込んでしまえるところ。どの短編も気恥ずかしくて切なく、読みながらしくしくと胸が痛む。そしてまんまと作者の手の内に引き込まれ、こんちくしょーと思いながらも、気が付くと涙を流しているのだ。
最初の2本が特に良かった。登場人物がそれぞれに悲しいのは、連城三紀彦の小説にも似ている。昔の東京の風景もノスタルジックで、おススメ。 -
浅田次郎、安定の短編集
短編書かせたら浅田次郎が日本最強であると思う。
おすすめ
月島慕情
めぐりあい
シューシャインボーイ -
う〜ん、悪くはないけど、地味な印象の短編集。菊治さんは何処へ行ってしまったのかねぇ。
「月島慕情」★★★
「供物」★★★★
「雪鰻」★★
「インセクト」★★★
「冬の星座」★★
「めぐりあい」★★
「シューシャインボーイ」★★★★
「自作解説」★★★ -
浅田次郎の短編集。短編だが、それぞれの話にしっかり物語がある。シューシャインボーイが良かった。作者自身による解説付き。
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短編が7話あって読みやすい!
思わず泣いてしまう位1つの話に入り込んでしまいました。
個人的には供物とシューシャインボーイが良かった。
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「天国までの百マイル」も良かったけど、、、この短編集最高!
作者も戦争を知らないのに、これだけのことが良く書けるものだと、思う。
7話が、皆物悲しく、又人の心の底に思いを潜ませながら、相手のことを思いやる姿に心打つ作品ばかりである。
「月島慕情」、苦界に居るミノが、やっとはい出ることが出来るかもしれないのに、芥川竜之介の「蜘蛛の糸」ではないが、、、そのきらきらと輝く糸を自分から断ち切ってしまうのである。
「供物」別れた夫が亡くなった初枝は、今幸せに第二の人生を歩んでいるが、、、
離婚の原因は、夫の酒乱であったが、霊前のお供え物へワインを求め、昔の家を辿っていく。
押し付けるようにして、供え物を置いていくのだが、、、、最後の軽トラックから、降りてきた男は、、、離婚の時において行った息子であった。
面影橋という最後の言葉が、余計に涙を誘う。
「雪鰻」戦争で、ソロモン諸島で、飢餓じょうたいで、マラリアと熱帯性潰瘍に身体をむしばまれていても、人間生きなければならない。
人間の矜持とは、、、、
人肉を食うとは、、、生きようと強い意志さえあれば、死神はよけて通る。
師団長からの言葉を受けて、北海道の地へ生きて帰還した三田村は、好きな鰻を、生涯食べないと肝に銘じていた。
その訳は、人生において、戦争というものがまいた出来事であった。
「インセクト」学園紛争真っ只中の話である。
大学に行っても封鎖されており、アルバイトに精を出す悟。
世の中では融通の利かない悟は、隣に住む女の子を可愛がるが、、、
事情のある母子の子供に、クリスマスのプレゼントも相手には重いものとなる。
ゴキブリを知らないで育てる悟を気味悪がられる。
ある程度、人の事情に介入してはいけない部分もあると、、、、
「冬の星座」解剖室にいた雅子は、祖母の訃報を聞き、葬式へと向かう。
そこには、自分の知らない祖母が居た。
生前に、祖母がどれだけの人たちへ『親切と思いやり』を与えていたのか?
そして、疎遠になっていたのに、自分のことをいつも気遣ってくれて、、最後に、自分の身体を、献体すると、、、、
最後の最後まで、クリスマスプレゼントを用意していたのだと、雅子は思うのであった。
「めぐりあい」視力の衰えで、全盲になってしまうという時恵は、結婚で、相手の親から反対されて、身を引いてしまい今は、温泉街で、マッサージをしている。
たまたま仕事に呼ばれた時恵は、昔の相手の事を思っしまう。
全然違う人であったが、昔の事を回顧する。
「シューシャインボーイ」靴磨きしてくれる人の事である。
昔は、靴のおしゃれが、一流の男の見本であった。
戦後のガード下には、孤児などが、靴磨きで、少ないお金で、磨いていたのだろう。
そんな時代を過ごした社長の運転手になった元銀行マンの塚田は、社長の持ち馬の「シューシャインボーイ」の馬券が、当たる。
社長が、未だ靴磨きに靴を磨かせているのか?そして馬の名前を付けた理由は、、、、
過去の時代の人たちが居て、今の自分が居ることに、そして、幸福に生きていることに、常に確認をしないといけないと、、、、作者は物語っている。
当たり前のことが、地震や津波で、どれだけ恵まれて生活しているのかと、認識せざるを得ない人も沢山いたが、、、被災していない自分たちは、なんと幸福な生活を送っているのだろうと、再認識してしまった。