蔭の棲みか (文春文庫 け 3-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656492

感想・レビュー・書評

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  • 第122回芥川賞受賞作。ジャケットのエゴン・シーレの自画像に魅かれて購入。ここには鬱屈した、しかし強い自己主張や、存在自体への怒りの感情のようなものがある。この小説にも、そうしたものとの共通点が感じられるが、ただし主人公はソバンと呼ばれる70代の在日韓国人の老人である。彼はもう何年も以前から生きる目的を喪失している。しかし、周縁の者たちにとって、彼が生きてそこに存在することに意味はある。それは、曲がりなりにも彼が在日として戦争を経験しているからにほかならない。描かれるエピソードは、どれも暗く重い。

  • 3作品、収録されているが全て印象の違う作品で楽しめた。
    個人的には、おっぱいの登場人物達が好き。

  • 好きではない作品でした

  • 玄月さんの文学バー(心斎橋)に先日行ってきました。楽しかった!行く前に読んでおこうと思って、まず芥川賞受賞作を。なんかうまく言えないけど、面白いです。「舞台役者の孤独」がいちばん好き。主人公の内面がぐちゃぐちゃしてて、現実と妄想を行き来して読んでるこちらも混乱してきて…。
    表題作は老人が主人公だけど、こっちは若者で、それも共感しやすい理由かも。

  • 3編収録されているなか、表題作が圧倒的にいい。完成度が高い。

    なんたる時代錯誤、というか。こういう、バブルが素通りしていったような「下町」やらバラックやらが存在すること自体、新興住宅地育ちのわたしにとっては異界っぽい。

    世代間のやりとりとか、まち特有の力関係とか。濃いのだけれども、なぜか、透明感があるような気もする。どろどろと重たい感じはあまりしない。それが不思議だった。

  • 090119(c 090130)

  • 「蔭の棲みか」在日の集落に住むソバン老人、その集落とその人生はほとんど同じ長さ。集落の中で子供が生まれ、出て行った子供の死を知り、妻も先立ち、父母の言葉がわからない集落の支配者永山、息子の友人だった高本、集落で育った金本らに囲まれいまは不法就労の中国人の住む集落で近づく死を思い、日本人として戦争に借り出された過去を思う。集落にかかわる人たち、最底辺からの脱出を図りながらも其処に住むソバン老人に対する優しさ、暖かい接し方。それは同胞としての結束なのか、そういった民族なのか、みな同じ過去の苦渋や傷を持っているからなのだろうか。成功者である永山は、その集落を所有し集落に棲むものたちを所有し支配しているようでいて、昔その集落でもあったようなリンチであるにもかかわらず集落の中で数が増えた中国人たちのその仲間うちのリンチを止めることが出来ない。其処に住む新しい住人たちは自分たちなりの決着のつけ方をしなければならない。うまく言えないなあ。日本の中で肩を寄せ合って生活していた在日の人々、それぞれ集落から成功したり脱出した後、その中で起こる新しい集落の住人たちは過去を反芻しているようで、そしてそれに対して無力であったりその行為を嘲笑したり、その中に何か滑稽なもの哀しいものを感じる。ソバンの次の世代である高本は「わしらの世代以降ではつけられんこの国へのけじめを、あんたらにつけてもらいたいんや。・・・・そこそこの金と社会的地位を維持するだけで満足して、心も体も弛緩しきっとる。この国のやり方に文句をつけられる筋合いではないかもしれん・・・・」といい、日本人の次の世代である警官は、「あんたがここに、日本に住むのは歴史的にも何とか理解できる。しかし、俺の目の届くところで、百人もの不法滞在者が自分たちだけのコミュニティーを作るのはぜったいに許せん。・・・もうこれ以上外人はいらん。・・・」という。堅苦しい文章でもなくすっと読み進むうちに、日本の中で生きてきた在日の人たちの複雑な思いとか多国籍、多民族化する日本とか何か残るものの在る小説だった。しかし、何故か次に載っている短編を読もうという気が起きない。もっとこの人の書いたのを読みたいという気が起きない。何故か・・・2006・10・11

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