高峰秀子の捨てられない荷物 (文春文庫 さ 39-1)

著者 :
  • 文藝春秋
3.78
  • (3)
  • (8)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 61
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656584

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高峰さん、松山さん、斎藤さん、全員違うタイプの愛すべき方々。高峰さんは孤高、カリスマ、ユーモア、依存しない人。松山さんは誠実で責任感のある人。お二人とも自律していて潔くて優しい。斎藤さんは天真爛漫、オープン、謙虚。謙虚については高峰さんと松山さんも傍目に目れば謙虚だけども自ら持つ尺度が強固であるが故に謙虚の自覚がない。斎藤さんは凡人の尺度も持ち合わせてることからくる意識している謙虚。
    あえて自分がどなたに近いタイプか考えてみたら斎藤さんに近いのかなと思った。弱みを自覚してさらけ出して可愛がってもらうタイプ。

  • 恥ずかしいながら女優高峰秀子についてほとんど知識がなく読みましたが、高峰氏と松山氏の人柄がとてもよく分かった気がします。終盤の高峰氏が数学が不得意な事を恥じている件がとても悲しかったです。人間は誰でも学ぶ権利があるはずなのに、それが守られない場合もあるのだと…。

  • 788.2

  • 『芸術新潮』の1月号(ベン・シャーンの特集)→そこに載ってたクレー小論の後編→前編をたどって『芸術新潮』12月号(高峰秀子の特集)→そこで強く印象に残った斎藤明美の「まさに"食う"ように」から、この本を借りてくる。斎藤明美は、高峰の養女となった人。高峰のことを敬愛し、「かあちゃん」と呼んでいる。

    高峰秀子=デコちゃん、というくらいは私もかろうじて知っていた。しかし高峰映画を見たこともなく、子役時代から働き続けた半世紀の役者人生、そしてたくさんの本を書いていることも、『芸術新潮』の「高峰秀子の旅と本棚」の特集記事で初めて知った。

    高峰秀子が背負ってきたデカい荷物―女優業、デカい家、大量の家財、別荘、執筆業。そのなかでも一番捨てたかったのは"女優"だった。これさえ無くなればあとのものも自然となくなる。その悲願だった引退を、養母の死から一年後に果たした高峰は、デカい荷物を処分していく。

    思い出の詰まった品もある。普通はなかなか処分できないものだ。そこのところを、斉藤のインタビューに、高峰はこんなふうに答えている。
    ▼…かあちゃんは『徒然草』が好きだろ。あの、何でもかでも『いと見苦し』のオジサンが書いてるじゃない、『身死して財残ることは智者のせざる処なり…』って。だから思い切って物への執着は捨てて、思い出だけを胸にしまおうと思ったわけ。思い出は何時でも何処でも取り出して懐かしむことができるし、泥棒に持っていかれる心配もないからね。…(p.257)

    「まさに"食う"ように」本を読んできた高峰は、さかのぼれば5歳からの子役人生を容易に降りられなかったために(多くの親族の生活を担って稼ぎ続けていたために)、小学校にもほとんど通えず、読み書きを独学してきたのだった。そのことについてふれた部分には胸がふさがる思いがする。こんなにも学びたかった人が、「学校に行かなくても人生の勉強はできる」と学校をやめねばならなかった。

    高峰への10時間以上のインタビューと、「かあちゃん」との日々のつきあいをもとに書かれたこの本は、そういう環境で生きぬいてきた高峰の人となりを伝えて、ところどころ吹き出すほどおかしい。私がこの本を読み終わると、えらい笑ってたナーと同居人に言われたのだった。

    「自分のお財布からお金を払って、私が出た映画をわざわざ観に来てくださった方、一人一人が、私の勲章です」とという気持ちで仕事をしてきた高峰の言葉に、自分の財布からお金を払って『We』を買ってくださる読者のお一人お一人に対する有り難さを、あらためて感じた。

    (2/9了)

  • 潔い生き方の女性。でも、そうせざるを得なかった壮絶な人生に驚く。

  •  こんな壮絶な人生を送りながら,静かに生きる人がいるとは驚きであった。
    4歳で叔母の養女となり,天才子役としてもてはやされながらも,金銭に意地汚い猛女たる義母の下,むらがる親戚を養う秀子が,毅然と生きる姿は戦慄を覚えた。

    「学校に行かなくても人生の勉強はできる。わたしの周りには善いもの悪いもの,美しいもの醜いもの,何から何までそろっている。そのすべてが,今日からわたしの教科書だ。映画会社は慈善事業ではない。わたしは一個の商品だ。商品が女学校に行きたいなどとホザくのは贅沢の限りだ」。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

斎藤 明美(さいとう・あけみ):作家。1956年高知県生れ。津田塾大学卒業。高校教師、テレビ構成作家を経て「週刊文春」の記者を20年務める。1999年、初の小説「青々と」で第10回日本海文学大賞奨励賞を受賞。2009年、松山善三・高峰秀子夫妻の養女となる。

「2024年 『高峰秀子 夫婦の流儀 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤明美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
村上 春樹
宮部みゆき
斎藤 明美
高野 和明
池井戸 潤
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×