- Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167682033
感想・レビュー・書評
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心の隙間に入りこむ『無料』の罠
怖いとしか言いようがない詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
相手の所有物を持つと、その人の感情を読み取ることのできる能力をもつ遥。その遥に救われたサラリーマンの主人公雪籐が、彼女の能力で1人でも多くの人を救いたいと組織を作っていくという物語。
世間的には怪しげな宗教として見なされる中で、宗教ではないと奮闘していく姿は本当に孤独な戦いとして描かれている。
並行して、娘が失踪した中年女性の物語も展開するが、この女性が遥とまさかこのように絡むとは!というのが想像していなかっただけに驚き。
貫井さんの作品は好きで良く読むのだが、多少毛色が違っていて面白かった。
ただ、ストーリーが分かってしまうと2度読みはしないかな。 -
ぞわぞわ怖いけど、続きが気になる。
そんな感じで読んだ。
面白かった!
辛い時どう乗り越えるか、考えさせられるなぁ。 -
4.5
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ノートに記録済み
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途中までかなりのハイスピードで読めたが、最後に近づくにつれ、不穏な雰囲気になり…
死にたいくらい辛い時、宗教に頼りたくなる気持ちにうまくつけ込んでくる人はどの時代にもいる。
事故で目の前で妻子を亡くした雪籐は仕事にも身が入らずミスを連発。だんだん周りの人達が自分を鬱陶しいと感じていることに耐えられなくなり、退職。
ここまでにも、すでに亡くなった妻と夢の中で会話している。
そこまでは全く無いとも言えないが、だんだん現実と理想の境界が無くなり、狂っていく様子が、恐ろしくよくわかる。
特に天美遥と出会ってからは、加速度的に変わっていく。
境界が無くなるのは、雪籐だけでなく、田舎からいなくなった娘を探しに東京に来るおばさんも同じ。
辛い目にあった人は、この境界線をギリギリのところで綱渡りしていると思う。
身内が亡くなるのは、本当に身を裂かれるような辛さなので、話しかけてしまうのは、そうだと思う。
周りに助けられて、何年も過ごし、だんだんその人の不在に慣れてくる。
亡くなったことを認めつつ悲しい気持ちも忘れずに。
雪籐はいいカウンセラーがいてよかった、と最初のうちは思っていた。
でも最後は違っていたことがわかる。
なんとも恐ろしい話。
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「誰かに理解してもらいたい、悲しみを一緒に受け止めて欲しいという痛切な叫び」
本当にそう。でも、そんな人なんていない。
誰かを救いたいなんて驕りだし、誰かに救われたいなんて依存でしかない。
それでも、人は救われたいと願ってしまうのだろう。
心の欠落感を埋めるために。 -
小説でも宗教じみた話は苦手なのですが…。また、直截に言って救われたがりの人も嫌いなんで、作中の人物にイライラしました。まあ、前向きに行こうや
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ちょっと前に岬一郎の抵抗という本を読んだわけです。
これが結構あらすじが似ていて、特殊能力を持った人が
良い人で、それを熱心にサポートする主人公との
ドタバタ劇、だったんだけども。
途中まで読んでいて、なにこれー、一緒じゃんかー、
展開も変わんないじゃんよー、と上から目線で読んでいたものの、
あっちはSFっぽくて、こっちはもうちっと情緒的というか、
他にも幾つかネタ元がありそうなのもあったりしつつ、
最後はええ話やね、って事になってた。
あと北条先生がエロい描写になっているのがフロイトあたりの
考えでは何か意味があるのか、この裏に潜むものは何なのか、
とか考えたけど、結局このおっさんもそういう人が好きって事なんか、
って勝手に納得した。徹底的に恋愛ネタを避ける主人公に
むしろ溜まりに溜まったものを感じる。