- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167753184
作品紹介・あらすじ
戦う哲学者が、誰一人からも理解されない偏った少年時代、混迷極まる青年時代を振り返り、助手時代の教授による壮絶なイジメ地獄までを実録する。そして、ようやく「孤独を楽しみ、孤独を磨きあげ、孤独に死のう」という積極的孤独を選びとるまでの思索を描ききった。この哲学的自分史の凄絶ぶり、また深遠さは比類がない。
感想・レビュー・書評
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当方ちょっとばかし哲学をかじっている者です。
哲学といってもいろいろな細かいジャンルがあり、このひととは専門が違うのでそもそも考え方に共感できないものがあるけど、有名だし、とりあえず読んでみた。しかし、初めに手に取るべくチョイスを間違えた感はあるな。
勘違いしないでほしいのだが、このひとは哲学者のなかでもかなり異端なほうである。このひとの言葉だけを鵜呑みにしてふむふむ哲学とはこういうものか、どうでもいいことについて考えてるんだなと軽く片付けてはいけない。特にこの本はそう。
本書は自分語り多めの自己啓発本(ほぼ自伝)という感じで哲学的な内容には乏しく物足りない。冒頭にも書いた通りこのひとの考えがあまり好きではないので、共感できる部分も少なかった。
一言で言うとあんまり面白くなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おもしろい。とにかくおもしろい。(僕と同じ人種が居た!)という発見とでも言おうか。
この本は、著者自身の孤独にまつわる自分史であり、したがって、深い哲学的思想がどうこういう類の本ではない。著者の偏屈で混迷極まる孤独っぷりを、これでもかと開けっ広げに語り尽くす。そこが痛快で楽しい。タイトルだけ見れば、めちゃくちゃ重そうなテーマだけれど。
著者はあとがきでこう書いている。「いつか、自分のぶざまな人生について書いてみたいと思っていた。なぜ、周りの者たちがすいすい進んでゆくところを、自分ひとりだけ転倒するのか?なぜ、こんなにも他人とうまくいかず、なぜこんなにも生き方が下手なのか?要領が悪く、不器用なのか?なぜ、こんなにも自分が嫌いなのか?そして他人はもっと嫌いなのか?なぜ(自分を含めた)人間の嫌なところばかりが見えてしまうのか?つまり、なぜこんなにも生きるのが困難なのか書いてみたいと願っていた。」願っていたけれど、「書けば書くほど憂鬱になる」という有様で、ある意味で呆れるくだらなさ。
思えば、僕たちは幼いときから、(明るく楽しく元気よく、みんなと仲良く遊びましょう)と大人たちに教えられてきた。裏を返せば、大人しかったり、根暗だったり、みんなと遊ばなかったり、一人で本を読んでこもったりすること、つまり孤独であることは、半ば絶対悪のように刷り込まれてきたのである。それは社会性を育むため、協調性を育むため、という大義名分があるからだ。しかし、大人になってあることに気付く。確かに社会性や協調性は生きてい
くうえで大切だけど、しかし、じゃあ、時に無性に独りっきりになりたい気分に襲われるのはどうしてなの?と。トイレに鍵を掛けて、便座に腰を掛けているときに味わう、あの独りぼっちの安堵感は何なの?と。
人間は社会的生物だと言った人もいたが、そもそも人間なんて身勝手・自己中心的な生き物である。しかし、自己チューだけでは世の中を生きていけないので、社会性・協調性という仮面を被り、皆、生きているのであり、往々にして、仮面は息苦しいのだ。だから人間には(少しでもいいから)孤独な時間が必要なのである。‘本当に素直な自分に帰れる時間’が必要なのだ。孤独であることは悪いことではない。孤独を楽しめる人間になりたい。
はっきり言って、しょーもない本である。でもこういう本があるから救われる。少なくとも、僕は救われた。皆さんにおかれては、本屋さんで見かけたとき、序章をパラパラと読み、おもしろいと感じたらば、是非買って読むべし。上辻推薦。 -
多分孤独という言葉の定義の仕方の問題だと思うんだけど、この著者は(私の定義だと)決して孤独ではないと思う。
著者が考える「孤独」とは、人とかかわることが少ないまたはないという状態のことではなく、自分自身を強く持って、他人と深く関わろうとしないという自覚のことである。自覚であるから、結婚していようが、哲学に関する塾を主宰しようが、本書を含めて他にも何冊も著作を書こうが、本人は孤独である。孤独という言葉が引き起こす、人とほとんどかかわらないというイメージとは正反対に、はた目には普通以上に人とかかわっているが、それでも本人にとっては孤独である。
この事実に気づいてから、途中で読むのが馬鹿らしくなってきた。はいはい、孤独孤独、生き苦しい生き苦しい。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。
孤独なめんな!!!お前どう考えても、2chの孤男版の住民の方が客観的にも主観的にも孤独だろ。孤独という状態さえ、主観的な孤独意識により馬鹿にされないといけないのか。なんちゅうひどい時代だ。
買って読む前はAmazonのレビューを見て、あー、また負の思考にあてられてネガティブが感染したら嫌だなーと思っていたが、結果としては逆だった。読んできて腹が立って、逆にこんななんちゃって孤独野郎に負けられるかよというポジティブな気持ちがわいてきた。その意味で言うと、「生きるのが困難な人々へ」という副題の目的は、著者の意図どおりかどうかはわからないが、果たされていると言えるかもしれない。 -
【推薦者】
体育学部 体育学科教員 市川 純
【学生へのメッセージ】
私が本書に出会ったのは大学生の時、当時この本はまだ新書版だった。感動し、そして驚いた。こんな風に生きることに真剣に悩み、苦悩する人が自分以外にもいたのか、と。この本は万人受けはしないかもしれない。けれど、必要な人は確実にいる。そして、こういう本は誰にでも書けるものではないのだ。口先だけの慰めや、安易な現実逃避では解決できないほど孤独に悩み苦しんでいる人に読んでほしい。
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00539354 -
救われる
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哲学書かと思ったけど、哲学者の自伝ですね。幸か不幸かは私には解からないけど、強靭な精神を持ち合わせているのは確かかと。
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中島先生の哲学は一見とても捻くれたように感じるけど、的を得た事を言っているのではないかと個人的に思う。この人の思想には何故か惹かれる。
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あなたは俺か。
そう思うような考えばかりだ。
しかし、どれも彼の体験に出自を持つ言葉で、当然自分には当てはまるべくもない。それでもなお、ああ自分の感じた思いはまさにこういうことがいいたかったんだ、と思う。 -
哲学とはどうでもいいことにあーだこーだとこだわって自問するものなのだろうな、と思っていたが本当みたいだ。「生きづらい」って甘ったるい言葉だと思う。おぎゃあと生まれた時から人生は大変なのさ。本書は著者の不器用な半生を私小説として読み、こんな世界もあるのかと楽しめた。