- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167902407
作品紹介・あらすじ
元裁判官の祖母と孫娘が難事件を次々解決!
警視庁の新米刑事・葛城は女子大生・円に難事件解決のヒントをもらう。円のブレーンは元裁判官の静おばあちゃん。イッキ読み必至。
感想・レビュー・書評
-
面白かった
5編からなる短編連作ミステリー
一点だけ、最後の最後が自分としては気に入らないオチでした。
法律家を目指す静あばあちゃんの孫娘の円と葛城刑事が次々の難題を解決していきます。
■静おばあちゃんの知恵
組織犯罪対策課長が射殺体で発見。被害者の体内に残されていた弾丸は組対課長補佐の拳銃から発射されたもの。
犯人は課長補佐なのか?
■静おばあちゃんの童心
派手な服装をしている資産家の老婆が殺害。動機ある身内はみなアリバイがある。
そのアリバイは崩せるのか?
■静おばあちゃんの不信
新興宗教団体の教祖が死亡しながらも、死体が消失
教祖が蘇るとのこと。
密室からの死体消失の謎を解きます。
新興宗教にのめりこむ上司の娘を救い出すことができるのか?
■静おばあちゃんの醜聞
クレーン操縦者がその運転室で殺害。実質密室な状態でどのように殺害されたのか?
ここでは、冤罪について語られ、「テミスの剣」での自身の判決についてのエピソードが語られます。
■静おばあちゃんの秘密
独裁国家の元首が厳重な警備のホテルの部屋で銃殺
これまた実質密室状態の中で、どのように殺害されたのか?
全編を通して、静おばあちゃんの法律に対する想いが伝わる物語となっています。
さらに、円の両親の交通事故の真相にも迫ります。
いわゆる謎解き系なので、謎解き好きな方にはお勧め
しかし、残念なのが最後のオチ
このオチは嫌いです。
「テミスの剣」を読んでから、本書を読むのがお勧めです詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく読みやすかった。
タイトルと装丁からは想像しないくらい
しっかり事件が起きる感じが驚きもありました。
最後は切なくなったけれどそれがなんとも言えない。 -
大好きな中山七里先生の本。
作者買いしたが、装丁が、六法全書を胸に抱いた可愛らしい女の子の横に、椅子に座るおばあさん。
あら、中山七里のいつもの雰囲気と全然違うわね、、、
読み始めると、あら?これは短編集ね!?
しかし一編目からかなり重め(笑)
装丁と全然違うやん(笑)
しっかり中山七里よ!
捜査一課、葛城刑事には天才的な閃きも洞察力も無い。
しかしガールフレンドの高遠寺円に助けられて難事件を解決する。
実は円にアドバイスしていたのは、元裁判官の円の祖母だった。
中山七里先生の作品は、作品は違えど、名前の知っている人がたくさん登場するのがたまらない!高遠寺さんもそうだが、犬飼さんも登場していた(*^^*)
そしてただでは終わらない中山七里先生はこの本でも健在!
最後の落ちにはびっくり!ってかオチがあるんかい!!!
いや、やられました。
さすがです!! -
H31.1.16 読了。
・元裁判官の祖母が裏で活躍するミステリー。最後はそうきたかという終わり方でした。
それぞれの事件の謎解きも少し展開が予想できてしまい、私的にはもっと大どんでん返しな部分が欲しかった。
テミスの剣に期待したい。
・「個人や組織の唱える正義なんて、所詮は自分の行動を正当化するための理屈でしかないのよ。」
・「正義というのはね、困っている人を助けること、飢えている人に自分のパンを分け与えること。定義なんてそれで充分。」
・「物心つく頃からその人なりの行動規範というものは自然にあってね。その自分の規範と世間の良識を擦り合わせていく作業を成長というの。」
・「理解されているという前提があるから、最後には角を引っ込めて笑い合える。笑い合えることで叱責が心の財産になっていく。」
・「仕事の価値はね、組織の大きさや収入の多寡じゃなくて、自分以外の人をどれだけ幸せにできるかで決まるのよ。 -
安楽椅子探偵ものの短編集。元裁判官の静おばあちゃんが探偵役、その目や手足となって動くのが孫の円(法科の大学生)、事件を持ち込むのが円の恋人の葛城(警視庁捜査一課の若手刑事)。
「静おばあちゃんの知恵」「静おばあちゃんの童心」「静おばあちゃんの不信」「静おばあちゃんの醜聞」「静おばあちゃんの秘密」の5篇。日常を扱ったほのぼの系ミステリーと思いきや、何れもハードな内容の本格ミステリーだった。
静おばあちゃんは、「テミスの剣」に登場した、あの高円寺静裁判長だ。円、葛城も登場してたな。「静おばあちゃんにおまかせ」は「テミスの剣」より前の作品だから、「静おばあちゃんにおまかせ」の登場人物を「テミスの剣」で使ったってことなんだろうと思いながら読んでたら、なんと「静おばあちゃんの醜聞」で語られる冤罪エピソード、「テミスの剣」そのものじゃないか!
そして、「静おばあちゃんの秘密」のラストでやられた。え~、そうだったの。ラストにこんな仕掛けが隠されていたとは! -
別冊文藝春秋2011年7月号静おばあちゃんの知恵、9月号静おばあちゃんの童心、11月号静おばあちゃんの不信、2012年1月号静おばあちゃんの醜聞、3月号静おばあちゃんの秘密、の5つの連作短編を2012年7月文藝春秋から刊行。2014年11月文春文庫化。法曹界に身を置いたことのある静おばあちゃんの安楽椅子探偵ミステリー。謎解きも面白いが、裁くことの難しさへの言及が興味深い。どんでん返し的なラストもインパクトありました。静おばあちゃんの魅力的な人物設定に魅入られました。
-
中山さんシリーズでお馴染みの葛城、円。
彼らに助言する立場の静おばあちゃん。
3人が難事件に対し解決に導く物語。
元判事の静おばあちゃんの視点は鋭く、盲点を突くトリックを見破っていく。
章を追う事に円の悲しい過去。その事件の真相。
そして「静おばあちゃんの秘密」
最後かなり驚かされました。
あの玄太郎との絡みも次作あるそうなので、これも読んでみたいと思います。 -
警視庁捜査一課の刑事・葛城公彦と、法律家を目指す高円寺円のコンビが、元裁判官・静おばあちゃんの知恵を借りながら事件を解決する連作短編ミステリ。事件に社会派テーマを織り込み、読み応えありの一冊。
第一話『静おばあちゃんの知恵』
警視庁捜査一課の葛城公彦は神奈川県警を訪れた。かつての上司である椿山が、組織犯罪対策課長の久世を射殺した容疑で逮捕。管轄ではないが放っておけない葛城は、非番の日に県警で詳しい事件の様子を聞き込みするが──。
暴力団の宏龍会と癒着していた久世や課員たち。そこに正義を貫く椿山が転勤で入り、暴力団とも組織犯罪対策課とも一触即発!久世の体内に残った銃弾は、椿山の銃から発砲されたものに間違いない。しかし、椿山はその日には銃を一度もホルダーから抜いていなかった。不可解な事件を葛城は円の手を借りながら追いかけ、仕上げは静おばあちゃんの推理。結局あのトリックでは科捜研で足がつきそうではある。
「人を殺すために唱えられる正義なんて嘘っぱちだと思います」
この円の一言が痛快でよかった。
第二話『静おばあちゃんの童心』
ド派手な服装で出歩くことから「町田のレディー・ガガ」と噂される朝倉喜美代が撲殺された。資産家である喜美代だったが、その人格面ではいろいろあるようで──。葛城は円の助けをもらいつつ、子どもたちや孫の証言を集めていく。その結果、容疑者全員にアリバイがあるとわかってしまい──。
当たり強めな静おばあちゃんが怖い。ファストフードをエサと言い、子どもを味オンチにして主婦は怠け癖がつくと炎上しそうなことを言いまくる。賢さや冷静さの産物だとは思えない毒舌を、年寄りの知恵は大切みたいな一般論でくくる方がどうなの?最後は円に理解を示しているようで、支配している気がしてならない。物語に必要な展開だったとはいえやり過ぎ。やはり車椅子暴走老人が必要(笑) 事件もトリックはシンプルだけど、こういう背景があるとしたらやり切れないものが残る。
第三話『静おばあちゃんの不信』
宗教団体「至福の園」に入信した娘・亜澄を脱会させてほしい。釘宮警備部長と財部(たからべ)管理官からの非公式な潜入調査依頼を受け、葛城は記者を騙って潜り込む。なんとそこでは教祖である総領龍人(たつと)が死後、密室から消失したらしく──。
教祖の死は亜澄自身も脈拍、鼓動、瞳孔の点から確認している。さらに、文字通り鉄壁に囲まれた儀式の間からいかにして消失したのか。この二重の謎を解かなければ、亜澄の洗脳もまた解けない。普段から目にしているものも、見ようとしなければ見えないものと同じ。盲信は救いにあらず。疑問に感じることが自らを救う第一歩なのだ。その死角を突いてくる団体の巧みさ。それ以上に、彼らがやろうとしたことがおぞましい。トリックは理解できるけど、そんなに上手くいくものなのか疑問かなあ。特に瞳孔。
第四話『静おばあちゃんの醜聞』
東京スーパータワーの工事中、タワークレーンで作業していた須見田が苦しみ出した。その様子をカメラで見ていた現場監督の土岐が駆けつけると、須見田は脇腹を大型カッターナイフで刺されて死んでいた。クレーンという空中の密室で、彼はどうやって殺されたのか。
謎自体はシンプルで犯人の目星もつきやすい。そこに織り込んでくるのは外国人労働者への差別問題。ブラジル人労働者を侮蔑していた須見田を殺したのは、彼と口論していたパウロではないか?偏見によって事件は大きく歪んでしまう。日本に働きに来てくれる人を、日本人が差別して扱うのは悲しいことだよね。真相がわかっても心に苦いものが残る事件。
第五話『静おばあちゃんの秘密』
ホテルパラドールに宿泊している国賓、パラグニア大統領のオマール・ロドリゲス。彼は夫人や護衛の軍人たち、さらには警視庁警護係の監視の中、密室で銃殺されてしまう。全員にアリバイがあり、部屋に入るのは不可能。国際問題に発展する大事件に、葛城と円は挑む!
独裁国家の大統領が暗殺されたことによる余波や、法律の違いが描き出されているのが面白い。軍事クーデターを起こし、世界から批判を受けている独裁者を殺した人間は、英雄にもなり得るのだ。
「国境を一つ越えるだけで善悪、正邪の基準は大きく変わってしまう。それはね、所詮人間を裁く法律が国そのものだからよ」
国によって違うのは言語や文化だけではない。善悪の価値判断すら違う。四話で外国人労働者をテーマにして、今度は外国との法の隔たりを扱うのが憎い演出。
そして、円に関わるあの事件の謎も紐解かれる。帯に「驚愕のどんでん返し!」とあるけど、ここまでハードルを上げない方が楽しめたのでは?と感じる。シリーズを飛び飛びに読んでいたので、円の事件が解決した場面を見ることができてよかったなあ。
p.239
「仕事の価値はね、組織の大きさや収入の多寡じゃなくて、自分以外の人をどれだけ幸せにできるかで決まるのよ」 -
刑事の葛城公彦とガールフレンドの高円寺円の恋愛模様が話を進めていく要素になっているので、なんとなくほんわかしていて、気楽に読んでいける。しかし、次から次へと殺人事件が起こるのではある。解決の裏に静おばあちゃんがいるのだが、このおばあちゃんにも秘密があって、それは最後まで読んでのお楽しみ。
-
この作品は所謂「安楽椅子探偵」ものだが、そこは流石の中山七里。普通の安楽椅子探偵ではない。
別のシリーズで主役になっている犬養隼人がちょこっと出たりしながら、こちらの主役は割とほんわかキャラクターで話が進んでいく。
作品全体としては普通の出来だが、最後の最後にファンタジー要素が飛び出してきたのは驚いた。
この作品は第二弾が刊行されているようだが、どうやって次作に繋がることやら…。それも楽しみに次作も読んでみたい。