米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて (文春文庫 い 95-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904746

作品紹介・あらすじ

知られざる戦略マニュアルを大検証沖縄戦直後に作成された米兵向け小冊子「卑怯な日本軍」。そこに描かれる帝国陸軍の虚実から、「あの戦争」の本質が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 米軍は米軍なりに当時、訳の分からない無茶苦茶をやりそうな日本軍(というか日本人と言うべきか)をかなり警戒していたのかなと思った。

  • 「英雄たちの選択」に時々出演される一ノ瀬さんの本だったので読んでみようと思いました。
    文章が難しかったうえ、貸出期間が短かったためじっくり読み切れず・・・でしたが、要は米軍は日本のゲリラ戦にビビっていたという話(ですよね?)。

    そういえば映画「硫黄島からの手紙」で栗林中将の介錯をしようとして射殺された部下の遺体のそばにやってきた米兵が遺体をツンツンしながら「仕掛け爆弾じゃないよな」と言っていましたが、要するにそういうことなんですね。

  • 【書誌情報】
    著者:一ノ瀬俊也(1971-)
    DTP:エヴリ・シンク
    頁数 368
    判型 文庫判
    初版奥付日 2015年10月10日
    ISBN 978-4-16-790474-6
    Cコード 0195
    http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167904746

    【感想文】
     書名はややおちゃらけているが(=書名において括弧を適切に使用している珍しい本です)、資料に丁寧に基づいている点では、きっちり固めの本。

     簡単に言えば、アメリカと日本帝国の「軍隊のマニュアル」を読もうという内容。これらマニュアルは、兵士向けのプロパガンダ成分も多分に含んでいたらしい。
     そのへんのことが書かれている部分を、第一章の冒頭から抜粋。

    《本章では、米陸軍が兵士向けに作成した対日戦マニュアル The Punch below the Belt(一九四五年八月)全八章の内容を見ていくことで、大戦末期の米軍がみた日本軍「対米戦法」の全貌を明らかにする。〔……〕以下では分かりやすさを優先して『卑怯な日本軍』と呼ぶことにしたい。/そもそも戦争末期になって『卑怯な日本軍』のようなマニュアルが作られた背景には、当時の米軍兵士の錬度低下があった。〔……〕ドイツ降伏後の米陸軍は、議会からせかされてヨーロッパ戦線から太平洋戦線に移動する部隊の経験豊かな兵を除隊させ、代わりに実戦経験のない新兵を充てたからだ。/そのような新兵たちに手っ取り早くの「戦術」を教え、かつ以下で明らかにするように(人種の面も含めた)憎悪、侮蔑も植えつけることが『卑怯な日本軍』の目的だったのだ。》

     この通り。

     脱線するが、戦争下で敵対国への悪感情を煽るものには、パズルやおもちゃも利用された。例えば、アメリカで販売されていたおもちゃの一つに、(13人を12人に減らすアレ)「日本人を消せ!」と題されていながら、辮髪&中国風の服装の人たちが描かれているスライド式パズルがあった。とても杜撰だ。
     当時のアメリカ世間でのアジア諸国への認識は、こんなデザインが出てくる程度には曖昧だったのかもしれない(本気のプロパガンダというより、おもちゃ製作元がそのときの風潮にテキトーに乗っただけとみるのが妥当かもしれない)。
     もちろん、時代をとわずどの国であっても、数千キロ先の数ヵ国を言語以外の文化的な要素で区別ができるほどの地理オタクはかなり少数派だとも言える。
    (さらに脱線。本書単行本版への(クログやAmazonでの感想文を拝見させてもらったところ、「アメリカ軍は日本の戦術を恐れていたのだ!」で喜ぶ人が何件もあってびっくりしました。一部のレビュアーさんは平成の終わりごろの日本に在りながらも頭脳レベルは当時のプロパガンダ以下になってしまう。国語教育の敗北……。)


    【目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-009]
    太平洋戦争作戦地域図 [010-011]

    第一章 アメリカ軍の見た日本軍「対米戦法」の全貌 015
    これが君の敵だ/策略のかずかず/米軍将兵の回想/死んだふり/友好的な敵/なりすまし/羊の皮を被った狼/民間人と区別できない/内通者/欺編戦術/「くそ海兵隊」/強く見せかける/弱く見せかける/忍び込み/通信に介入/対抗策/待ち伏せ/狙撃兵/狙撃戦法/ダミーの狙撃兵/偽装とダミーの設置/ダミーの兵器と陣地/対人地雷/即製地雷の数々/仕掛け爆弾/手榴弾による罠/爆発する食料雑貨/記念品ハンターよ、注意すべし/その他の引力作動型の罠/電気作動型の罠/『卑怯な日本軍』が伝えていること

    第二章 日本軍「対米戦法」の歴史1――中国戦線編 113
    日中戦争期の日本陸軍歩兵戦法/陸軍は火力軽視ではない/小銃軽視?/自己説得としての「剣術」礼賛/夜雲は困難だった?/取り入れられた火力の戦訓/砲兵との呼吸が合わない/狙撃兵の能力/中国の“卑怯な日本軍”/“卑怯な中国軍”/成功ゆえの懸念/「皇軍独特の肉迫攻撃」/捕虜の「処断」を指示/市街戦の「教訓」/ノモンハンの戦訓/『戦死傷の教育的観察』/地物利用の不徹底/中国戦線の経験

    第三章 日本軍「対米戦法」の歴史2――南方戦線編 163
    戦前の日米相互評価/英米軍が緒戦で得た「戦訓」/通用しない典範令/評価の高い参謀の手記/米軍の機械化戦法/米陸軍の空爆/“人命”への着目/毛沢東に学ぶ大本営参謀/昭和一七年の「対ソ戦法」/昼間の「進攻主義」は無謀なり/対ソ戦法は夜襲しかない/長、夜襲への疑念に激高/「対ソ戦法」は実在したのか?/米軍陣地突破は不可能/『敵軍戦法早わかり』/艦砲射撃の威力/米軍の弱点は何か/水際迎撃に固執した?/部隊・国民の反応/「戦訓」と下ネタ/日本軍、米軍の「対日戦法」を入手/米軍上陸現場の対応――ペリリュー島の事例/「凡ゆる手段方法を以て、多くの敵を殺す」/大本営参謀たちの自己説得/日米それぞれの思惑/『挺進奇襲の参考』/軍犬処理法/斬り込み/沖縄戦/自己説得

    第四章 日本軍「対米戦法」の主力兵器――地雷・仕掛け弾爆 241
    「手榴弾が一番好い」/優秀な中国軍手榴弾/中国軍の仕掛け爆弾/地雷に怯える日本軍歩兵/「地雷の死は余りにも酸鼻である」/防御に巧みな中国軍/中国軍の手榴弾/手榴弾への対抗策/中国軍・ソ連軍の仕掛け爆弾/満州事変と地雷/ニューギーーア戦線/爆破戦闘/地雷戦でも劣勢の日本軍/兵器の遅れ/ソロモンの日本軍地雷/地雷は怖い/ビルマ戦線/無力な日本軍の地雷・爆雷/兵士を「地雷」視する/セブ島の地雷・仕掛け爆弾/日本側の記録/米・アメリカル師団の報告書/セブの洞窟陣地/アメリカル師団の総括/米軍の収集した地雷情報/情報の集約と周知/地雷で飛行機を撃墜/工夫された急造地雷/米軍兵士の畏怖/自衛隊の仕掛け爆弾

    おわりに [339-342]
    あとがき(一ノ瀬俊也 二〇一二年初夏) [343-344]
    参考文献 [345-355]
    関連年表 [356-359]
    解説(早坂隆) [360-366]

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著者プロフィール

一ノ瀬 俊也(いちのせ・としや) 1971年福岡県生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程中途退学。専門は、日本近現代史。博士(比較社会文化)。現在埼玉大学教養学部教授。著書に、『近代日本の徴兵制と社会』(吉川弘文館、2004)、『銃後の社会史』(吉川弘文館、2005)、『皇軍兵士の日常生活』(講談社現代新書、2009)、『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」』(文藝春秋、2012)、『日本軍と日本兵 米国報告書は語る』(講談社現代新書、2014)、『戦艦大和講義』(人文書院、2015)、『戦艦武蔵』(中公新書、2016)、『飛行機の戦争 1914-1945』(講談社現代新書、2017)など多数。

「2018年 『昭和戦争史講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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