- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167905682
作品紹介・あらすじ
野心が、野望が、戦場をかけめぐる信長の大いなる夢にインスパイアされた家臣たち。毛利新助、原田直政、荒木村重、津田信澄、黒人の彌介。峻烈な生と死を描く短編集。
感想・レビュー・書評
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毛利新助、塙直政、荒木村重、津田信澄、彌助。五人の織田信長の家臣を描いた短編集。
己の分際を知り、全うすることを選んだ毛利新助。
高みを目指し、自ら破滅した塙直政。破滅させられた荒木村重と津田信澄。
外国人であるからか、しがらみなく共感を得ることができた彌助。
容赦なき競争社会という一面が強調されがちな信長家臣の陽の部分が、秀吉・光秀であるならば、塙直政に荒木村重と津田信澄は負の部分なのだと思います。先の二人も、それゆえに本能寺を起こしたと思えば負の部分と言えなくもない。「王となろうとした男」では秀吉が本能寺の黒幕説です。日本史上最大の成り上がりを成した秀吉。こうでないと。
やはり、信長を題材にしている以上「本能寺の変」を避けては通れない。なんというか、この事件の解釈を読むために信長の小説を読んでいるといっても過言ではないような気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安土・桃山時代、織田家家臣団ならびに麾下の武将たちと、織田信長の関係性を抽出して描いた連作歴史小説。
毛利新介、塙直政、荒木村重、津田信澄、弥助。
村重を除けば、決してメジャーとは言えない男たちの人生を翻弄した信長を、今作では脇に設定することで、却って彼の圧倒的な存在感と凄みが際立つ構成となっている。
信長が掲げた、出自を問わぬ徹底した実力重視の成果主義は、一見公平のようにも見えるが、その実態は、家中における弱肉強食を促進させる、命懸けの出世競争を生み出した。
男たちは、信長が持つ凄まじい牽引力に引き摺られ、野心を煽られ、変転する運命の輪の中で、献身と決断を繰り返しながら踊り狂う。
家臣たちが暴走させた野心の渦は、信長本人をも呑み込んで、歴史は移ろってゆく。
信長が、野心に憑かれぬ新介のような愚直で堅実な男を正当に評価し、嫡男の守役に就けた一面からも、彼が単なる暴君ではなく、家臣らの指針であり、道標であり、シンボルであったことが窺える。 -
桶狭間での勇者たちの話しがいい。運命というか、自らのいまの境遇と共感し忘れられない一冊となった。
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久方ぶりの時代小説、まあまあかな。
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名前は知られているが小説化されていない人たちを取り上げており,大変興味深く読んだ。全体としてストーリーは共通なので,読みやすい反面,悪役は悪役のままでその人が好きな人がよんだらがっかりするだろうな。
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主人公を替えながら信長を描き出す手法
塙直政がくせ者で有りながら哀れです -
信長に仕えた男たちを主人公にした5篇の短篇集。
果報者の槍(毛利新助良勝、塙九郎左衛門直政)
毒を食らわば(塙九郎左衛門直政)
復讐鬼(荒木村重、中川清秀)
小才子(津田信澄、丹羽長秀、明智光秀)
王になろうとした男(織田信長、彌介)
桶狭間で今川義元の首を獲った毛利新助。
明智光秀や羽柴秀吉にも勝る勢いで出頭を重ね、本願寺との合戦で討ち死にを遂げた原田直政。
野心家であるがゆえに墓穴を掘ってしまった荒木村重。
父を伯父の織田信長によって暗殺され、復讐のために信長の一家臣として仕えた津田信澄。
黒人の奴隷として信長に献上された男・彌介。 -
信長の周辺の五人を主人公とした五つの短編.表題作の「王になろうとした男」とは,意外や意外,弥助だった.
巻末の対談で作者本人が「敢えて信長本人の視点は設けず,家臣たちの視点から,信長を描きました.」と語っているが,これは非常に上手い手で,確かに,信長というのは色んなものを超越してしまっているため,主人公としてはとても描きにくい人物なのであろう.
五つの短編は全て,信長の苛烈さが産んだ歪みによって軋みをあげながら本能寺の変に向かう.しかし,五編目に配置された表題作の信長は弥助に優しい.この優しさと,これに応える弥助の奮闘が,読後感をさわやかにしている. -
悪鬼羅刹な信長かと思いきや、良い面も悪い面も描かれていた。
ちょっと思ってたのと違ったけど、それなりに楽しめた。
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