決定版 鬼平犯科帳 (2) (文春文庫) (文春文庫 い 4-102)

著者 :
  • 文藝春秋
3.92
  • (11)
  • (26)
  • (15)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 243
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907648

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 鬼平シリーズ第二作。
    (各話の結末にも触れているので読みたくない方は飛ばしてください)

    木村忠吾登場。ドラマとは少し違って惚れっぽいというか、すぐにのめり込むのだが飽きやすい。う~ん、これじゃいつまでも結婚は出来ないな。
    知らずに盗賊の娘と恋仲になってしまった「お雪の乳房」など、ドラマと違って『お雪さんそのものが好きだったんじゃなくて、そっち?』とガッカリしたし。これでは女性層には受けないだろうとドラマでは結末を変えたのだろう。

    しかし「谷中・いろは茶屋」ではそののめり込み癖が思わぬ活躍に繋がる。本来デスクワーク専門で捕物、ましてや剣術などからっきしの忠吾だが、こうして見るとやはり火盗改メ同心なんだなと納得する。
    そしてそんな忠吾を厳しくも甘やかす鬼平。彼もまた若き頃は数々のヤンチャをしていたらしいから彼の気持ちも分かるのだろう。


    鬼平といえば数々の密偵(いぬ)が登場するのだが、その密偵たちの活躍だけでなく、それぞれのドラマや人生模様が描かれるのもシリーズの魅力。
    「密偵」に登場する弥市。彼もまたかつては大泥棒の元で数々の悪行を繰り返してきたものの、同心・佐嶋に見いだされ密偵としてかつての同業者たちを捕縛するための情報を伝える役目をしている。
    だがそのお役目は妻のおふくにすら言ってはいけない危険なこと。ましてやかつての仲間の生き残りが自分を狙っていると聞いて緊張感も最高潮。密偵としての役目と自分の命を狙うかつての仲間との間で揺れ動く弥市の結末は、過去の業を切れない密偵の厳しさを感じた。

    だがそれでも『悪を知らぬものが悪を取り締まれるか』という鬼平の意志はブレない。
    悪を知り悪に染まること悪に毒されることの恐ろしさを知っている者、そこから這い出そうとする者だからこそ出来ることがある。
    純粋培養の者、正義感の塊だけの者では出来ない解決法がある。

    「妖盗葵小僧」などはその最たるものだろう。本来なら事細かにその悪行を書類に残した上で裁くのだろうが、現代で言うセカンドレイプを危惧した鬼平は何も残さずその場で犯人の首を刎ねてしまう。
    それが何よりも被害者の心の傷を最小限に抑える術であり、犯人の歪んだ悦びを叩き潰す何よりの罰だと判断したからだ。
    現代ならこんな乱暴な裁判はないのだが、それが良いかどうかは別としてこれが鬼平流ということだろう。

    また「女掏摸お富」では、過去と決別するために再び掏摸を繰り返すお富を見逃してやろうとする鬼平だったが、お富がそのうちに再び掏摸の快感に絡め取られようとしているのを見るや厳しい態度に出る(これもドラマでは少し結末が違う)。
    いたたまれず悪行を繰り返しているのなら止められるが、悪行の快感に掴まってしまえば人はどこまでも堕ちてしまう。その瞬間を見逃さず、今なら厚生出来るという絶妙なタイミングで声を掛ける鬼平、さすが。

  • 名作、鬼平犯科帳。
    密偵の小房の粂八や兎忠こと木村忠吾の活躍など目が離せない。
    妖盗葵小僧では、葵小僧の捕縛により、妖盗の毒牙にかかった女達、家族を思い、すぐさま妖盗の首をはねる。平蔵の粋で痛快な生き様が心にささる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    うまいと評判の蕎麦屋“さなだや”で、貝柱のかき揚げをやりはじめた平蔵だが、店を出た先客がどうも「気に入らぬ」と…。独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。

  • 一巻からの連続性があるのは世界観が造られていく上では興味深い。また往時の江戸の街並みが丁寧に描かれている点が物語の世界観の構築に寄与している。
    人間模様としては、一巻の方が面白かった。

  • 20170216 久しぶりで少しテンポがあわなかったが、読むうちにだんだん会ってきた。良いストーリーは飽きさせない。

著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池波正太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×