決定版 鬼平犯科帳 (2) (文春文庫) (文春文庫 い 4-102)
- 文藝春秋 (2016年12月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167907648
感想・レビュー・書評
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鬼平シリーズ第二作。
(各話の結末にも触れているので読みたくない方は飛ばしてください)
木村忠吾登場。ドラマとは少し違って惚れっぽいというか、すぐにのめり込むのだが飽きやすい。う~ん、これじゃいつまでも結婚は出来ないな。
知らずに盗賊の娘と恋仲になってしまった「お雪の乳房」など、ドラマと違って『お雪さんそのものが好きだったんじゃなくて、そっち?』とガッカリしたし。これでは女性層には受けないだろうとドラマでは結末を変えたのだろう。
しかし「谷中・いろは茶屋」ではそののめり込み癖が思わぬ活躍に繋がる。本来デスクワーク専門で捕物、ましてや剣術などからっきしの忠吾だが、こうして見るとやはり火盗改メ同心なんだなと納得する。
そしてそんな忠吾を厳しくも甘やかす鬼平。彼もまた若き頃は数々のヤンチャをしていたらしいから彼の気持ちも分かるのだろう。
鬼平といえば数々の密偵(いぬ)が登場するのだが、その密偵たちの活躍だけでなく、それぞれのドラマや人生模様が描かれるのもシリーズの魅力。
「密偵」に登場する弥市。彼もまたかつては大泥棒の元で数々の悪行を繰り返してきたものの、同心・佐嶋に見いだされ密偵としてかつての同業者たちを捕縛するための情報を伝える役目をしている。
だがそのお役目は妻のおふくにすら言ってはいけない危険なこと。ましてやかつての仲間の生き残りが自分を狙っていると聞いて緊張感も最高潮。密偵としての役目と自分の命を狙うかつての仲間との間で揺れ動く弥市の結末は、過去の業を切れない密偵の厳しさを感じた。
だがそれでも『悪を知らぬものが悪を取り締まれるか』という鬼平の意志はブレない。
悪を知り悪に染まること悪に毒されることの恐ろしさを知っている者、そこから這い出そうとする者だからこそ出来ることがある。
純粋培養の者、正義感の塊だけの者では出来ない解決法がある。
「妖盗葵小僧」などはその最たるものだろう。本来なら事細かにその悪行を書類に残した上で裁くのだろうが、現代で言うセカンドレイプを危惧した鬼平は何も残さずその場で犯人の首を刎ねてしまう。
それが何よりも被害者の心の傷を最小限に抑える術であり、犯人の歪んだ悦びを叩き潰す何よりの罰だと判断したからだ。
現代ならこんな乱暴な裁判はないのだが、それが良いかどうかは別としてこれが鬼平流ということだろう。
また「女掏摸お富」では、過去と決別するために再び掏摸を繰り返すお富を見逃してやろうとする鬼平だったが、お富がそのうちに再び掏摸の快感に絡め取られようとしているのを見るや厳しい態度に出る(これもドラマでは少し結末が違う)。
いたたまれず悪行を繰り返しているのなら止められるが、悪行の快感に掴まってしまえば人はどこまでも堕ちてしまう。その瞬間を見逃さず、今なら厚生出来るという絶妙なタイミングで声を掛ける鬼平、さすが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名作、鬼平犯科帳。
密偵の小房の粂八や兎忠こと木村忠吾の活躍など目が離せない。
妖盗葵小僧では、葵小僧の捕縛により、妖盗の毒牙にかかった女達、家族を思い、すぐさま妖盗の首をはねる。平蔵の粋で痛快な生き様が心にささる。 -
内容(「BOOK」データベースより)
うまいと評判の蕎麦屋“さなだや”で、貝柱のかき揚げをやりはじめた平蔵だが、店を出た先客がどうも「気に入らぬ」と…。独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。 -
一巻からの連続性があるのは世界観が造られていく上では興味深い。また往時の江戸の街並みが丁寧に描かれている点が物語の世界観の構築に寄与している。
人間模様としては、一巻の方が面白かった。 -
20170216 久しぶりで少しテンポがあわなかったが、読むうちにだんだん会ってきた。良いストーリーは飽きさせない。