決定版 鬼平犯科帳 (4) (文春文庫) (文春文庫 い 4-104)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907952

作品紹介・あらすじ

池波正太郎の「鬼平」誕生50年を記念し、2017年、本格時代劇アニメ「鬼平 ONIHEI」が満を持して登場。同時に、21世紀の国民的時代小説ともいえる原作「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、さらに読みやすい【決定版】で毎月2巻、順次刊行中。カバーデザインも一新し、全巻揃える楽しみも倍増である。「アニメもスゴイが、原作はもっとスゴイ!」と年齢性別を越えて、話題沸騰。第4巻収録作品は、「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「血闘」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「敵」「夜鷹殺し」。女密偵・おまさ登場の「血闘」では、〝鬼の平蔵〟の凄絶な剣技に圧倒される。解説:佐藤隆介

感想・レビュー・書評

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  • 鬼平シリーズ第四作。
    ついに女密偵・おまさ登場。

    初登場がいきなり見張り相手の盗賊団に囚われるというハードな話。
    その盗賊たちが地も涙もない残酷な野郎どもだけにおまさの状況が心配でたまらない。
    ついに監禁場所を突き止めた鬼平が、なかなかやって来ない部下たちにしびれを切らして単身飛び込み、おまさを救う。
    格好いい~。しかし多勢に無勢、鬼平絶体絶命…と思いきや、待ちわびた部下たちが現れる。格好いい~。

    こんな酷い目に遭ったというのに、おまさは連続夜鷹殺しで、再び危険な役目を買って出る。夜鷹の振りをして囮となるのだ。
    そこまでするのは勿論、鬼平への気持ちがあるからなのだが、そんなおまさの気持ちを知りながらお役目で応える鬼平はやはりそれだけ魅力的ということか。
    命がけのお役目で鬼平へ尽くすおまさと、ハードな仕事を影で支える妻・久栄と、二人の対象的な女性がいるのもこのシリーズの魅力。


    またこのシリーズでは良い盗賊と悪い盗賊が出てくるのがお決まり。
    同じ盗賊なのだから本来なら良いも悪いもないのだが、有り余る財産の一部だけ頂くとか、盗む相手を傷つけないとか、盗賊なりの矜持を持っている良い盗賊がいて、押し込む相手を皆殺しにした上に全財産を奪っていく残虐な犯行を行う悪い盗賊がいる。

    この手の悪い盗賊は鬼平に徹底的に痛めつけられ捕縛され罰を受け、良い盗賊は厚生の道、あるいはそれなりの前向きな道が用意されているというのが読者の期待するところだが、実際にはそう簡単には行かない。
    悪い盗賊に良い盗賊がやられてしまう場合もあるし、鬼平の上を行って悪い盗賊たちが逃げてしまう場合もある。
    だが収録の「敵」ではスッとする結末が用意されていて爽快だった。


    今回は「あばたの新助」で生真面目だった同心が女の色香に惑わされて盗賊の協力を強制させられてしまうという話もあった。
    確か第一作でも似たような話があったが、真面目で素朴な人間ほどハマり易いのか。
    そう言えば、前作まであれほど女に惑わされっぱなしだった木村忠吾のダメっぷりはすっかり影を潜め、お役目に真面目に取り組んでいるようだ。描かれていないだけで本当のところはどうか分からないが。

    第一話に登場する鬼平の長男・辰蔵はなんとも危うい匂いがするのだが、ギリギリのところで危機を躱していたり、これまた悪運が強いのか、父親譲りの感覚で危機を読み取っているのか。
    今後辰蔵がどう成長するのか、それともこのままフラフラするのか、その辺も注目したい。

  •  おまさ登場の回が収録されている。アニメで見ていて、小説を読んでみると、アニメの再現度が素晴らしいことに気づく。やはり、鬼平さんはカッコいい!これが、もう半世紀前に書かれたものとは思えないほど、まだまだ色褪せない作品。
     佐藤氏の解説もぜひ読んでほしい。現代が殺伐として、何かが足りないと言う漠然とした問題意識に、これだ!と思う答えがあるような気がする。白か黒かではなく、その間にバリエーションがあるという考え方、大人のモラル、そのあたりを失わないように生きていきたい。5巻も楽しみ。

  • 基本的に『鬼平~』さんは、オジさんたちがターゲットなので、絶対間違いなく各お話にエロなシーンがありますね。
    巻末解説の佐藤隆介さんが書いているように「女にはわからない男のためのハードボイルド小説」なのかも。
    まぁ、それが活劇モノとして、血の通ったものになっているのかもしれないけれど…。

    若い頃は暴れん坊で、結婚してからもしばらくは街中のたくさんのお姉ちゃんと楽しみまくり、家督を継いでからは頭も剣の腕も立ち、しっかりと仕事をしているという鬼平さんの設定も、中年男性にはあこがれる設定なのかもね…。

  • ▼「鬼平犯科帳4」池波正太郎、文春文庫。初出は1967−1989、月刊誌「オール讀物」連載。江戸時代に実在した「火付盗賊改・長谷川平蔵」を主人公として、平蔵とその仲間、そして捕物相手になる盗賊たちを描いた連作捕物帳小説。


    ・霧の七郎
    ・5年目の客
    ・密通
    ・血闘
    ・あばたの新助
    ・おみね徳次郎
    ・敵
    ・夜鷹殺し

    このうち【血闘】は志ん朝の朗読もあります。

    この巻で印象に残ったのは【敵】がこの後密偵としてレギュラーになる五郎蔵が登場し、盗賊から密偵に商売替えする事件が描かれて印象深い。自分としてはどうしてもフジ版(二代目吉右衛門版)の刷り込みがあるので、綿引勝彦さん一世一代の当たり役でしたね。

    あと、密偵おまさの活躍が目立ちました。【血闘】はまさに、おまさを助けるための平蔵チャンバラ大活躍の一編。【夜鷹殺し】でもおまさは目立っています。作者がこのキャラクターを気に入ったことがよくわかります。ちなみに【夜鷹殺し】は言ってみれば「切り裂きジャック物語」で、なんの救いも解明も無く、人間の異常性というか残酷性がポンと放り出されていて印象に残りました。

  • 1 2 - 4 - - 7 -

  • おまさの一途さが…なんか凄いです。
    人並みに幸せになって欲しい人ですが、無理だよな~

  • audible で視聴
    血闘
     戦いのシーンがかっこいい
     志ん朝がやっぱり最高

  • 解説の佐藤隆介による「時代物の形をとっているものの、実際はこれほど現代的な小説はない」との指摘におおいに納得。

  • 見かけで人を判断する愚かさ(「霧の七郎」)だったり、酷いパワハラ(では到底済まないけれど)があったり(「密通」)、幼い頃の恋心の健気さ(「血闘」)、長谷川平蔵の人間観(「夜鷹殺し」)。
    どの短編も読み応えがありました。
    「霧の七郎」の上杉さん、良いキャラクターだなぁ。
    佐々木新助の末路を己の胸ひとつに秘めたり、「夜鷹とても、人ではないか!!」と激怒する平蔵だからこそ、家族も部下も友人も、盗賊さえも一目置くのだろうなぁ。
    理想の上司です。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「おなつかしゅうござります」二十余年ぶりに平蔵の前に現われ、「密偵になりたい」と申し出たおまさには、平蔵への淡い恋心と語りたがらぬ過去があった(「血闘」)。鬼平の凄絶な剣技に息を呑む本作ほか、「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「敵」「夜鷹殺し」の全八篇を収録。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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