宇喜多の捨て嫁 (文春文庫 き 44-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908263

感想・レビュー・書評

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  • 「敵が少しでも強いとみれば、謀略を駆使し時に仕物も辞さず、それでもなお強大な場合は恥も外聞もなく降伏し、また隙を見て裏切る」戦国時代きっての梟雄、宇喜多直家とその関係者を描いた連作短編。「宇喜多の捨て嫁」「無想の抜刀術」「貝あわせ」「ぐひんの鼻」「松之丞の一太刀」「五逆の鼓」の6篇収録。

    本書で直家は、「秦の始皇帝や三国魏の曹操孟徳ら、乱世の英傑が遣った」という、敵の殺気に反応して無意識に攻撃する「無想の抜刀術」の使い手、そして、「無想の抜刀術」で母親を殺めた際に母親から受けた肩口の傷が癒えず、血膿を出し続け、腐臭を発し続ける(業病「尻はす」を患う)病み人として描かれている。

    「涅槃」を読んだ直後に読んだので、直家の人となりがより明確にイメージできた。本書と「涅槃」の直家像、そんなに大きくズレてなかった(猜疑心の塊のような浦上宗景の下で生き残るため、梟雄にならざるを得なかった、というのが基本線)。

  • 非常に良くできた作品だと思います。

    意外にも5編からなる短編集でした。

    一般的な短編集とは違い、全てが宇喜多直家を中心とした宇喜多家に纒わる物語。

    表題である「宇喜多の捨て嫁」とは直家の四女・於葉の事であり、巻頭に収められていますが、本作は直家を中心にその周りの人にフォーカスを当てていきます。

    「人」を描いた作品だと強く感じました。

    正直、時代物って得意でもないし、好きでもありませんでしたが、冲方丁氏の「天地明察」で時代物の面白さ、楽しさを知りました。

    とは言え、まだまだ読解力が未熟な私には本作の構成は時間軸が一方通行ではない事もあり、軽く混乱しながら読み終えましたが、私の地元や学生時代を過ごした地域の歴史に触れる事が出来、個人的には大満足の一冊でした。

    本作は高校生直木賞の受賞作でもありますが、正直、高校生達が本作を受賞作に選べる程に読み込んだ事にただただ拍手を贈りたいと思います。



    説明
    内容紹介
    表題作は、権謀術数によって勢力拡大を図った戦国大名・宇喜多直家によって、捨て駒として後藤勝基に嫁がされた四女・於葉の物語。
    乱世の梟雄を独自の視点から切り取った鮮やかな短編は時代作家として、高い評価を集めている。本書ではその他に五編の短編を収録。
    いずれも戦国時代の備前・備中を舞台に、昨日の敵は味方であり明日の敵、親兄弟でさえ信じられないという過酷な状況でのし上がった、梟雄・宇喜多直家をとりまく物語を、視点とスタイルに工夫をこらしながら描いた力作揃いだ。
    直家の幼少時の苦難と、彼でしか持ちえない不幸な才能ゆえの大罪(「無想の抜刀術」)、若く才能あふれる城主として美しい妻を迎え子宝にも恵まれた直家に持ちかけられた試練(「貝あわせ」)、直家の主・浦上宗景の陰謀深慮と直家の対決の行方(「ぐひんの鼻」)、直家の三女の小梅との婚姻が決まった宋景の長男の浦上松之丞の捨て身の一撃(「松之丞の一太刀」)、芸の道に溺れるあまり母親をも見捨てて直家の家臣となった男(「五逆の鼓」)と、いずれも直家のほの暗い輪郭を照らしながら、周囲の人々の様々な情念を浮かび上がらせていく――。
    第152回直木賞候補作にして第2回高校生直木賞受賞。
    内容(「BOOK」データベースより)
    娘の嫁ぎ先を攻め滅ぼすことも厭わず、権謀術数を駆使して戦国時代を駆け抜けた戦国大名・宇喜多直家。裏切りと策謀にまみれた男の真実の姿とは一体…。ピカレスク歴史小説の新旗手ここに誕生!!第92回オール讀物新人賞をはじめ、高校生直木賞など五冠を達成した衝撃のデビュー作。特別収録・高校生直木賞ルポ。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    木下/昌輝
    1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒業。ハウスメーカーに勤務後、フリーライターとして関西を中心に活動。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞し、14年『宇喜多の捨て嫁』で単行本デビュー。同作は直木賞候補となり、15年高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞を受賞。同年咲くやこの花賞も受賞した。2作目の『人魚ノ肉』は山田風太郎賞の候補、3作目『天下一の軽口男』が吉川英治文学新人賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 高校生直木賞他受賞との事で読んでみたが、裏切りと策謀で名を馳せた宇喜多家の内容であり凄まじい残虐な話しが多い。構成も年代が行ったり来たりで分かりづらいのに、女子高生が多い中での受賞は不思議な気がした。解説で受賞理由を見ると何度か読み直すことで内容の深みが分かるそう。非道・残虐すぎて再読は暫く先になりそう。

  • 高校生直木賞受賞作。他の候補作を措いて、この作品が高校生に評価されたことに興味を持った。
    戦国の梟雄と言われた宇喜多直家。そんな男の真実を、彼と彼の一族たちの視点を用い、描き出した連作短編。
    自分の娘さえ謀略の手駒とし、彼女たちを捨て嫁と言わしめた表題作。
    次の作品では一転、不幸な才能ゆえ苦難な彼の幼少期が描かれる。
    他の短編でも、謀略暗殺を駆使し、隙を見てはまた裏切る、そんな繰り返しの彼の人生を、時系列を前後しながら、綴られる。
    時代の拘束の中で、梟雄とならざるを得なかった彼の哀しい運命が焙り出された。
    ドロドロとした戦国の世界が描かれているが、読後また読み返したくなる歴史小説。

  • 宇喜多直家の生涯を様々な視点で描いた作品。
    彼は彼なりに必死に家を守ったのだと思うのだけど。
    歴史はたくさんの視点から見なくては分からないということが、この作品を読むとよく分かる。

  • 宇喜多直家という人物が数名の視点から語られており、大変面白く読めました。
    信用し裏切りまた信用する、の繰り返しで
    何かを守る為には何かを犠牲しなければならない、
    戦国の世の慣わしの厳しさを実感しました。
    素敵な本に出会えてとてもよかったです。

  • よくできた歴史小説だった。宇喜多直家を絡めた短編の集まりかと思いきや、6話目で話が引き締まり全てが連なっていく。また、新しい書き手が現れて快哉!

  • これは傑作だ。何といっても章立ての構成が秀逸。最初に「捨て嫁」で一撃の後に、「無想の抜刀術」で生まれついての業の深さを感じさせ、最後の「五逆の鼓」は江見河原が琵琶法師に見える、まさに平家物語。戦国時代が舞台の歴史小説にも関わらず、権謀術数が中心で合戦話が皆無、しかし人物がよく見通せるつくり。圧巻、脱帽。
    高村薫や東野圭吾が推したのに直木賞を逃し、非常に残念だが後世に残る作品だと思う。

  • これが、予想外の面白さ!でした。



    この本は、全国の高校生たちが集まって、

    直近の直木賞候補作品の中から1作を選ぶ

    {高校生直木賞}に選ばれた本です。



    「高校生直木賞」なんて言うのがあることさえ知らなかったけれど、

    高校生が、この本を選んだとということに、

    なんだかうれしさがこみ上げてきました。



    戦国時代の大名・宇喜多直家の生涯が

    様々な人の視点から描かれている。



    自分の娘たちの嫁ぎ先を攻め滅ぼすこともいとわず、

    悪徳非道の男であるはずの直家だが、

    読み進めていくうちに、様々な思いがよぎる。

    ラストのシーンが切ない。



    面白い本を読んで、本を閉じた時、

    すごい満足感というか、感動というか・・・

    胸にあふれるものがあるのだけど、

    それを、どんなふうに表現したらいいかがわからない。

    これを、ボキャブラリーが足りない、というのでしょうね・・・

    • chikachanさん
      横入りすみませン。いやいや充分すぎるほど感動が伝わってきます。この作品の続編も(宇喜多の楽土)読んだと思いますが心にしみる作品だと思います。...
      横入りすみませン。いやいや充分すぎるほど感動が伝わってきます。この作品の続編も(宇喜多の楽土)読んだと思いますが心にしみる作品だと思います。時代物が多い作者ですが現代物も読んでみたいと思うのは欲張りなんでしょうかね。「敵は宮本武蔵」もオススメです!
      2018/09/01
  • 宇喜多直家凄い。業の深さがかなりありました。面白かったです。悪にもそれなりに理由があるとかの次元を超えてる権謀術数でした。
    大河ドラマでやってほしい人ランキング私的2位に躍り出た宇喜多直家。お茶の間がザワつく。
    木下昌輝作品は「人魚ノ肉」以来なのですが、今作も伏線回収が楽しかったです。あの人物のあの行動の裏にはこんな想いが…を知っても、だからといって寄り添えるかというとそうじゃない。非道で残酷です。
    各々キャラ立ちも凄い。天竺の鳥料理??タンドリーチキンではあるまい。。
    どんなに非情でも揺れる瞬間はあるというのが皮肉だし哀しい。人はすんなりと鬼にはなれないです。
    小鼓の名人の音色は梅の薫りを漂わせるというのは美しいなぁ。

    高校生直木賞というものがあるんだと検索してみたら、受賞作品を何作か読んでいました。
    「ナイルパーチの女子会」「また、桜の国で」「くちなし」、最近の受賞作は「同志少女よ、敵を撃て」…結構シビアな作品が並んでおりました。国内海外問わず、時代物歴史物が半数でした。
    「面白い本ないか」と訊かれてオススメするときに相手が生徒さんや学生さんだったりするとどうしても「これちょっと人物とか描写が殺伐とし過ぎるか」と思ってしまうけど、そんな手加減は無用かもしれないです。何歳でも、読みたいときに読みたい本読めばいいという気持ちをすぐ忘れるけど自分自身だってそうだったなぁと思い出しました。

    『軍師官兵衛』で陣内孝則さんがされてた人物か。どおりでなんだか聞き覚えがあるはずです。似合うなぁ。
    装画、山本タカトさん。美麗です。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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