- Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167912901
感想・レビュー・書評
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あー
わかるわかる。
こういう世界の見方が完全に一致、みたいな人ってね、好きになる。深く考えれば考えるタイプなほどマイノリティに分岐した先を生きてるわけだから、同じ考えの人に出会ったことないのよ。
だから合致する人がいたとき、運命ー!ってなっちゃうよね。
心で生きてる人たちの、心が通じたー!っていう恋愛よね。
身体で生きてる人間とは、ちょっと違うのよね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半が重だるくて時間が掛かってしまった。中盤からノってくる感じ。
大人の恋愛。文学的で知的な小説。賢い人が読んでいそうな。
作為的なすれ違いで離れてしまった2人が5年半も思い合うという状況には、素敵だなとか憧れは一切感じることが出来ず、ただ「もっと現実を見ろ」という感想。こんな風に思ってしまう自分を、つまらない人間だなぁと思う所までが毎回セット。
フィクションをフィクションのまま、そのまま受け入れて感受性の幅を広げられたらいいなと思っているけど難しいな。 -
平野啓一郎さんの本は初めてで、難解なイメージがあったけれども意外と読みやすく、スッと物語に入れた。記憶に残しておきたくなるような、ステキな表現も至るところに出てきて心に響いた。
40代男女、天才ギタリストと美しく聡明な女性の恋の話。
女性はジャーナリストでイラクに赴任していたため、そのあたりの情勢の記述は難しかったが、小説を通してその空気感を少しでも感じられるのは小説が持つ素晴らしさだと思った。
2人の恋の行方が気になって、どんどん読み進めたが、物語なかば、読むのが嫌になるような出来事があったりして、その設定もやや無理があるように感じ、かなり嫌気がさした。
そこから頑張ってさらに読み進めると、話に奥行きが出てきて最後まで楽しむことが出来たけれど、どうにももどかしく、あまり後味の良い作品とは思えなかった。
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極上の大人恋愛小説
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純文学である。
本の宣伝文句として「ロングセラー恋愛小説」と書かれているし、福山雅治主演で映画化もされたようだし、文庫の後ろのほうにある同文庫の広告(それを眺めるのがいつも好きだ)は「文春文庫 恋愛小説」という名目で恋愛小説ばかりのカタログとなっている。すっかり女性が好んで読むその種の小説であるかのようにポジショニングされ、実際よく売れているようだ。
だがこれは、読んでみると純文学作品なのだ。
「赫々たる太陽が」なんていう、古くさくてやや小難しいような単語を駆使した小説で芥川賞を受賞した著者は、エンターテイメントの作者ではない。
その平野啓一郎さんがナンパ化してしまったのか、と疑問に読み始めたら、やはり文体はエンタメ小説にはありえないような凝り方をしている。
言語への執念によってそれ自体が芸の極みとなった文体は、非常に読みにくく、十全に味わうにはすらすらと読み通すことは難しい。これを究めれば晩年の泉鏡花や古井由吉氏のようにもはや物語なんてどうでもよい、芸すなわち文章、といった境地にまで至るのだが、とはいえ、平野さんの場合はそこに向かうわけではない。
途中から文体は幾らか変化したように感じた。
むしろレイモン・ラディゲなどの古いフランス心理小説の伝統に近いような、微に入り細に入り微妙な心理を明かすような執拗な心理描写を展開する。
こうした過剰な「文章」は、およそ一般の読者には受けないのではないかと思っていたが、意外と現代の女性はこのような恋愛心理の描写にも興味をそそられたのか、本書はベストセラーになったのである。
前半の、ギタリスト蒔野とジャーナリスト洋子との3度の「出会い」の場面では、遅々として大きな変動のないストーリーにあって、描写の過剰が常に満腹状態で読み続けさせられているような苦しさを感じたが、「ある罪」が2人のあいだを引き裂いてからは、物語はどんどん面白くなっていった。
ラスト少し前の、洋子が実父と邂逅する場面はとても素晴らしい会話が繰り広げられ、作品で冒頭から何度もリフレインとして繰り返されてきた蒔野の言葉が、これを見事に締めくくる。感動的な場面だ。
この場面のあとに来る蒔野のギター・リサイタルにおける音楽の描写は、それがどういったタイプの音楽なのか具体的にはよく分からないものの、聴取体験の情動がなかなかに見事に描かれており、優れている。
そして最後のシーンはやはり、素晴らしいものだ。通俗ドラマのラストのようでもあるが、全然ご都合主義ではなく、全編を通して体現してきたリアリズムは損なわれていない。
本書は、ギタリストの物語としての芸道小説としての面や、洋子をめぐってはイラク、ユーゴスラヴィアなどの厳しい現実の体験をあぶり出す面なども重厚に備えられていて、かなり豊穣な作品となっている。
コテコテした執拗な描写と文体の重さを乗り越えて読み進めれば、なるほど、最後は感動させられる。これがベストセラーになったことは十分に理解できる。映画化してしまうと「文学」としての充実は消えて別なものに置き換えられてしまいそうだが。
そんな感じで、予想していたよりも遥かに優れた芸術小説だった。読めてよかった。
コングラチュレーション。 -
昔楽しくままごとをしていた石で祖母が亡くなるという悲しいことが起こった、このことへの感じかた、こういう感覚的なものを人に伝えて理解してもらうのは難しいけど、中には同じ感覚をもって瞬時にそれをわかってくれる人がいる。そういう人に出会ってしまえば会った回数なんか関係なく惹かれてしまうのはわかる気がします。
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平野啓一郎といえばデビュー作の「日蝕」
あの難解な文学について行けず、平野離れして久しかった。
ふいに思い立って「マチネの終わりに」を読んでみると、あまりの面白さに読むのをやめられないほど。
音楽も社会情勢も、こんなに分かりやすく表現されるなんて!情景がぱっと目に浮かんできました。 -
東京、パリ、ニューヨーク。出逢って4年間以上経過しているのに、経った三回の出会いだけで、、惹かれる二人。、ゆっくりした時間と深い愛情が美しい恋愛小説。あまり読まないジャンルだけに深く印象づいた物語り。
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音楽に詳しくない私にとって、最初はなかなか読み進められませんでした。
しかし途中の「携帯電話」あたりから、色んな人の色んな感情が、一気に私の読書スピードをあげました。
最後も素晴らしい。
是非最後までくじけず読んで欲しいです。