不穏な眠り (文春文庫 わ 10-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913984

作品紹介・あらすじ

仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶。吉祥寺のミステリ専門書店でアルバイトとして働きながら、〈白熊探偵社〉の調査員として働いている。「さよならの手口」(2014年4位)「静かな炎天」(2016年2位)、「錆びた滑車」(2019年3位)と「このミス」上位常連の人気ミステリシリーズ、文庫オリジナルの最新刊。「水沫(みなわ)隠れの日々」終活で蔵書の処分を頼んできた藤本サツキのもう一つの依頼は、死んだ親友の娘・田上遥香を刑務所から自分のところに連れてきてほしいということだった。刑務所からサツキの元に向かう道で、遥香は車に乗った男たちに拉致されてしまう。「新春のラビリンス」(「呪いのC」改題)大晦日の夜、葉村は解体直前の〈呪いの幽霊ビル〉の警備をすることになった。ヒーターが壊れ、寒さの中一夜を明かした葉村は、女性事務員の公原から連絡が取れない男友達の行方を調べてほしいと頼まれる。「逃げだした時刻表」葉村の働くミステリ専門店でGWに〈鉄道ミステリフェア〉を開催することになった。展示の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。本の行方を追ううちに、互いを出し抜こうとするコレクター同士のトラブルや、過去の因縁まで絡んできて思わぬ展開に……。「不穏な眠り」亡くなった従妹から引き継いだ家にいつのまにか居座り、そこで死んでしまった宏香という女の知人を捜してほしいという依頼を受けた葉村。宏香を連れ込んだ今井という男の家を訪ねたところ、今井の妻に危うく殺されかける。今井は宏香の死後、家出していた。解説・辻真先TVドラマ化決定!ドラマ10「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」主演シシド・カフカ 間宮祥太朗 池田成志 津田寛治 中村梅雀2020年1月24日(金)スタート予定(連続7回)

感想・レビュー・書評

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  • 正月に、ドラマに触発されて葉村晶シリーズを読み始めて1年になる。遂にこれで最新作まで追いついてしまった。読んだ端から寂しい。何度も言うけど、探偵・葉村晶は私の推しメンになった。私は、一生懸命頑張る女の子が好きなのだ。もはやアラフォーをかなり過ぎたと思える彼女だけど(1年で随分歳をとったものだ^_^;)、私よりも歳下ならば女の子である。以下、ネタバレなど無いのでご安心ください。

    冒頭、慣れない高速を運転すると行く手に「天使の梯子」がかかっている。普通の物語ならば吉兆ではあるが、葉村晶に限っては不吉な前兆以外の何ものでもない。その証拠にラストは飛び切りのバッドエンドを迎える。(「水沫隠れの日々」)

    探していた男は某所でインフルエンザにかかって寝ていた。葉村晶は自販機でお茶とスポーツドリンクを買って、マスクをし、変装用の素通しメガネをかけ、息を止めて縁側から家に入る。もちろん、この2年後に日本がパンデミックに襲われるとは葉村晶は予測しているわけではないが、あまりにも完璧なウイルス対策だし知識だと思う。葉村晶はつくづく優秀な探偵なのである。(「新春のラビリンス」)

    本作はミステリと映画の情報満載だ。葉村晶が住込で働いている古本屋の店長が思い付いた〈鉄道ミステリ・フェア〉のうち、富山店長推薦のDVD『大陸横断超特急』『大列車強盗』『バルカン超特急』『カサンドラ・クロス』『見知らぬ乗客』もちろん高倉健の『新幹線大爆破』などの蘊蓄に刺激されて、私は正月鑑賞にとTSUTAYAを探し回るが、一作も置いて無かった。おいおい、TSUTAYAよ‥‥(泣)。(「逃げ出した時刻表」)

    葉村晶は久しぶりの探偵依頼に、ほんの少しだけ「贅沢」をする。新宿のメトロ食堂街の更科そばの店の立ち食いスペースで、春菊の天ぷらそば(800円)を自分に奢ったのである。この自己肯定感の少なさが、私が彼女を応援したいと思う大きな理由である。ひとつ賭けるけれど、この店は実在するだろう。いつかコロナ禍が終わって機会が有れば、殺されかけて喉を潰され飲み込めずにむせた白いそばを食べてみたい。(「不穏な眠り」)

    本書は「オール讀物」昨年12月号に掲載された短編含めて、超速で昨年暮に出版された。テレビシリーズに合わせた事情はあるにせよ、次回では、必ずこのもやもやとした三密の世相を歩き回って犯人を追いつめているはずだ。文庫は来年ぐらいには出てくるだろう(と、思って葉村晶ばりに直ぐスマホで検索したら一件もヒットしなかった。今年はもう書いてないのか?)。

    • goya626さん
      kuma0504さん
      ありがとうございました。カフカがカラスだったとは!なるほど、黒い服が似合いそうです。若竹さんて、なんか人の悪意がもろ...
      kuma0504さん
      ありがとうございました。カフカがカラスだったとは!なるほど、黒い服が似合いそうです。若竹さんて、なんか人の悪意がもろに出てきますよね。
      2020/12/21
    • kuma0504さん
      goya626さん、
      彼女俳優と歌手の二足の草鞋ですから、
      名前は大切なんでしょうね。
      ブクログには。イヤミス大好きなひと大勢いますが(私は...
      goya626さん、
      彼女俳優と歌手の二足の草鞋ですから、
      名前は大切なんでしょうね。
      ブクログには。イヤミス大好きなひと大勢いますが(私は嫌いですが笑)、若竹七海さんの作品は話の構造自体がイヤミスなので、是非広く読んでもらいたいと思います。
      2020/12/21
    • goya626さん
      宍戸カフカさんの曲は聞きました。なかなかいけますね。
      私もイヤミスは好きではありませんが、若竹さんのは一味違いますね。
      宍戸カフカさんの曲は聞きました。なかなかいけますね。
      私もイヤミスは好きではありませんが、若竹さんのは一味違いますね。
      2020/12/23
  • 『満身創痍で不運な女探偵』(裏表紙より)葉村晶シリーズ最新刊。
    今回は長編ではなく四話収録だったが、これくらいのボリュームもスピード感があって楽しい。

    相変わらずの富山店長のSっぷりから始まり、簡単な依頼の筈があれよあれよと思わぬ事態の出来や依頼人の豹変、事件関係者の身勝手さや毒に振り回され、あっという間にぬかるみに嵌まり込んでいくというお約束の流れだが飽きさせない。

    刑務所から出てきたということは自分の犯した罪を償ったということに、少なくとも法的にはなるのだが、全く悪びれてもいない女。
    彼女にも会社にも社会にも全く誠意を見せず、言われるがままに動き、困ったら土下座してそれで済むと思っている男。
    自分の祖父の持ち物なのだからと、貸した古本屋の店員を怪我させて奪っても平気でいる男。

    …とまぁ数え上げればきりがないほど、今回の作品にも迷惑な連中が次々出てくる。
    とっくにブチ切れて罵倒するか、依頼を適当に切り上げて終わりにするかにしたくもなるのだが、葉村晶はそうしない。それでは探偵は勤まらないからということもあるが、結局のところは晶の心の問題なのだろう。

    『なんで葉村はこうも面倒と関わりあうのかねえ』

    晶が面倒と関わりあうのではなく、面倒の方から晶に寄ってくるようなところもあるが、これ以上突き進めば面倒なことになると分かっていながら自ら進んでいくところもあるのだから、桜井のこのセリフも間違いとは言えないだろう。

    今回はあまりの寒い現場で凍死しそうになったりスタンガンで気を失った程度(?)でそれほど大怪我はしていないな…と思っていたら、最後の表題作でこれでもかというほど来た。
    二度殺されかけ、最後は車もろとも泥流に巻き込まれ…さて、晶は生還出来るのか。

    しかしこれほどいろんなエゴイズムや憎悪や悪意にさらされつつもそこに侵されない晶は誰よりも強く清らかだと思う。
    女探偵だってタフで優しくなければ生きていけないのだ。

    • goya626さん
      いやあ、晶さん、大変ですなあ。それにしても若竹さんの人間観は、なんちゅうかブラックですねえ。
      いやあ、晶さん、大変ですなあ。それにしても若竹さんの人間観は、なんちゅうかブラックですねえ。
      2020/06/18
    • fuku ※たまにレビューします さん
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      毎回色んな意味で痛い目に遭う晶を可哀想だな、作家さんもこんなに酷い目に遭わせなくても...
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      毎回色んな意味で痛い目に遭う晶を可哀想だな、作家さんもこんなに酷い目に遭わせなくても良いのになと思いつつ読んでいるのに、今作の途中まで富山店長に振り回されたりスタンガンで気絶させられる程度?では物足りなく感じている私ですから、私も相当たちが悪くなってきてます(^-^;
      2020/06/18
  • ミステリ専門書〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉の店員であり、〈白熊探偵社〉調査員。
    女探偵・葉村晶シリーズ第6作。

    あいかわらず、襲われ、身の危険にさらされる日々。
    ただ今回は、葉村ではなく依頼人の方が危険だったり、いつもよりはマシな気がした。

    不運で、ものごとが悪い方へ悪い方へと転がり落ちていく。
    ビターな展開なのに、ぶつぶつ言いつつも、タフに生きるハードボイルドな姿に、おかしみがある。

    ドラマの印象が強く、富山店長の台詞が、脳内で役者さんの声で再生されてしまった。

    『このミステリがすごい! 2021年版』国内第10位。

  • 若竹七海『不穏な眠り』文春文庫。

    女探偵・葉村晶シリーズの連作短編集。文庫オリジナル。全4編を収録。某国営放送で連続7回でTVドラマ化されるらしい。葉村晶役はシシド・カフカ。不思議な雰囲気はハマり役のような気がする。

    ユーモラスな独特の世界観の中で繰り広げられるミステリー。相変わらずの痛い目に遭う、仕事は出来るが世界一不運な探偵・葉村晶の活躍が描かれる。そして、作中にはいつものように古今東西の傑作ミステリーが登場する。えっ!葉村晶も40代に突入かよ!

    『水沫隠れの日々』。余命幾ばくもなくなり、終活を続けている藤本サツキから葉村が受けた依頼は死んだ親友の娘の田上遥香を刑務所から連れ帰ることだった。刑務所からの帰り道に何者かに拉致されそうになる遥香だが、どんな秘密を握っているのか……はたまた……

    『新春のラビリンス』。またまた葉村晶に解体寸前の呪いの幽霊ビルの警備という変な依頼が舞い込む。報酬は五割増しの料金にみかん一箱、餅代付き。寒さの中、一晩の警備を終えた葉村に女性事務員から人探しの依頼が……ミステリーらしいミステリー。

    『逃げだした時刻表』。葉村晶がまたまた痛い目に遭う。葉村が居候するミステリ専門店の鉄道ミステリフェアを目前に控え、展示の目玉である古い曰く付きの時刻表が盗まれる。あれよあれよという間に犯人を捜しあてる葉村だったが……

    『不穏な眠り』。表題作。葉村晶が知人からの依頼で10年前にとある家に居座り病死した女性の知人を捜すことに。またまた痛い目に遭う葉村。果たして……

    本体価格650円
    ★★★★

  • 本シリーズを初めて読んでから約20年。ほぼ自分と同じように歳を重ねて40代になった葉村さんに親近感を禁じ得ない。思えば若竹七海さんの作品も90年代に創元推理文庫版『ぼくのミステリな日常』を手にしてずっとだから相当に長い。好きな作家の新作を定期的に読めるのは幸せだと思う。

    本シリーズはトリック重視の本格ものではなく、ソフトなハードボイルドという感じ。何せ最近の葉村さんは推理を働かせる前に調べ物はネット検索。これがスパスパとヒットして、葉村さんの検索能力が意外に高いことがよくわかる。一匹狼の葉村さんは逞しく時代に順応しているのだ。
    基本的には常識的な一般女性である葉村さんが、ドンパチ騒ぎや殴り合いの格闘をすることは(あまり)ないが、本書でも首を絞められ、スタンガンを当てられ、果てには土砂崩れに遭うなど、順当に相当な不運に巻き込まれていく。若竹さんはエスっけがあるに違いない。

    しかし、不運に巻き込まれながらも、きっちり仕事の結果を出すのが葉村晶である。何ともカッコいいではないですか!軽妙なトーンに紛れているが、このシリーズの事件はシビアで、痛ましいものが多い。それらをすべて呑み込んで、葉村晶は一人、探偵であり続ける。

  • わたしは葉村晶という。国籍・日本、性別・女。東京都下吉祥寺の住宅街にあるミステリ専門書店の店員にして、この書店が半ば冗談で始めた〈白熊探偵社〉に所属する、ただ一人の調査員でもある。

    これこれ、いつもの葉村晶のフレーズ。
    20代の頃から始めた探偵稼業。現在不惑を過ぎた40代、ということは単純に計算してもかなりのキャリア。
    なのに何故か葉村が調査し始めると想定外のトラブルに次々に巻き込まれるのは、もはや前世からの因縁としか思えない。
    素早く危険を察知して回避行動が取れるよう長年に渡り鍛え上げているはずなのに、葉村は今回も読み手の期待を裏切らない。
    なにせ新年最初の願いが「いい年でありますように。…いや贅沢は言わない。今年こそ、病院に担ぎ込まれませんように。調査料を踏み倒されませんように。依頼人が死にませんように」という具合だ。

    今回も池に落ちて泥まみれになったり、スタンガンで気絶させられたり、掃除機コードで首を締められたり…よくもまぁ次から次へと災難にあうものだ。
    その度に呆れたり苦笑いしたり、と読み手を飽きさせない。
    短編4編のうち『水沫隠れの日々』『不穏な眠り』が特に良かった。
    『水沫…』の後味の悪いラストに苦笑したかと思うと、『不穏…』で切なくなったり。ミステリというより、葉村を中心としたヒューマンドラマにますますのめり込んでしまった。
    ところで葉村は一体何歳まで探偵稼業を続けるのかな。
    出来ればおばあちゃんになっても、このままの葉村で探偵を続けてほしい。

    もうじきテレビドラマが始まる。
    思い描いていた葉村がどんな風に演じられるのか、とても楽しみだ。

  • シリーズ最新刊。四遍の物語はどれもダークでビターで、ちょっと愉快。

    水沫隠れの日々
    サツキという女性から友人の娘を迎えに行って欲しいと言う依頼があった。
    遥香というその女性はなんと刑務所から出所してきた。
    放火殺人に大麻の所持使用。
    そんな遥香が怪しげな集団に追われることとなる。
    彼らが探す宝物とはなんだろう。
    遥香は、「すんごいの」つまり頭がぶっ飛ぶような(違法)薬物を思い描いていた。
    しかし実は…
    宝物が目に見えるもの、あるいはモノとは限らない。
    優しい人が必ずしも優しい人ではない。
    キラキラ輝くガラスは、誰の心を映していたのだろう。

    逃げ出した時刻表
    貴重な書籍である時刻表が盗まれた。
    葉村晶は店番の最中に何者かによって気絶させられ、その間に時刻表は消え失せた。
    一体誰が何のために持ち出したのか。
    人間関係を複雑にさせた時刻表。
    これもまた、自分勝手で自己中心的、愚かな人間が他の人のことなど何も考えずに犯した罪の物語である。
    それにしても主人公はよく気絶させられたり、首を絞められ、殴られるがよく生きているものだ。
    そしてよくただ働きをさせられている。
    運が悪いと嘆いているが、それでも生きているんだから、どっちかというと、運がいいんじゃ?
    もちろん自分がそれでいいのかと言われたらそれは全力でお断りしたい。

    巻末のミステリー作品の解説も面白い。
    でもほとんど読んだことがないので私はミステリーファンとは言い難いのではないか。
    いやいやそんな事はない。
    上には上がいる、ただそれだけだ。

  • 1.水沫隠れの日々
    2. 新春のラビリンス
    3.逃げ出した時刻表
    4.不穏な眠り      の4短編集

    1はラスト2行が…。
    2は新春から厳しい仕事で...。
    3のような次から次へと...好きです。
    4は嫌な話だなと思いながら読んでたら最後に...。
    葉村がいつものごとく真面目に取り組み巻き込まれて酷い目ににあって…事件に対する感嘆に共感させられる。
    2のウイルス、4の土砂崩れは後に起きることの予測?
    4に出てくる新宿駅の蕎麦屋は今は閉っちゃった。

  • 腕はいいが何かと不運な女探偵、葉村晶の安定の貧乏籤引きっぷりが堪能できる短篇集。簡単そうな依頼なのにだんだん面倒くさい方向に転がっていき、その度に痛い目に合い文句言ったり嘆きながらそれでも依頼はこなしていく。次々起こる展開と結末への畳み掛け方に無駄がなく安定の読み応え。出所した友人の娘を迎えにいくだけだった「水沫隠れの日々」や捨てるつもりの遺品を渡す相手を軽く探すだけだった表題作は結末の落とし処の落差が凄い、というか酷いのか。「新春のラビリンス」は年末の幽霊ビルの警備が原因で人探しの時点で風邪ひいてるし「逃げだした時刻表」は初っ端からスタンガンで気絶させられ、住み込んでいる書店の盗難事件なので経費はお察し。四十路に入って無理出来ないのに本当にお疲れ様だ。お茶の一杯差し入れしたい。

  • 目次
    ・水沫(みなわ)隠れの日々
    ・新春のラビリンス
    ・逃げだした時刻表
    ・不穏な眠り

    私もたいがい間が悪いと自覚しているけど、葉村晶の間の悪さ、不運の連鎖ったらない。
    けれど、事件は割と後味の悪いものが多いのに、葉村晶に関しては、いつもその不運に癒されるのだ。

    彼女は美学にこだわるよりも実利の人だ。
    本人はどう思っているかわからないが、頭の回転もすこぶる良い。
    だけど自覚していないと思うけれども、お人好しだ。
    これは契約範囲外だ、と一度は切り捨てても、つい気になって様子を見に戻る…と、厄介事に巻き込まれて命さえも危機に陥る。
    なぜ、学習しないのだ、と言えば、それが彼女の人としての矜持であり、お人好しな部分なんだろうなあ。

    「水沫がくれの日々」の、最後の2行が意味する寒気がするほどの憎悪とか、「逃げだした時刻表」の、金に飽かした自分勝手とか、やっぱり事件の後味は悪いのだけど、でも、今までの作品に比べて、なんかちょっと薄味じゃない?
    葉村晶、それほど不運ともいえないのでは?

    と思ったら、表題作はさすがにどど~んと不運満載でしたね。
    たった60ページほどの作品の中で、2回死にかけ、最後は自然災害に巻き込まれる。
    どんだけよ!と突っ込みながら、満足して本を閉じることができる。

    「水沫隠れの日々」の遥香、「不穏な眠り」の宏香は、生まれてきた意味について考えさせられる。
    彼女たちは一度でも、誰かから必要とされたことがあったのだろうか。
    「生まれてきてくれてありがとう」と言われたことがあるのだろうか。
    彼女たちの人生を思う時、苦いものがこみあげてくる。

    富山店長は相変わらず理不尽で、エゾノー並みに理不尽で、そこが好き。
    知り合いにはなりたくないけれど。

    本屋の2階に住み込んで、本屋のバイトをしながら探偵業をこなす葉村晶。
    職住一体についてこう語る。

    ”なにしろ家賃がない。通勤がない。昼食を家で済ませられるから、ロスする食品も出ない。読む本に困らない。”

    我が家の1階も本屋なので、やっぱり憧れる本屋勤務。
    探偵業と兼ねなければ、それほど大変にならないんじゃないかと妄想中。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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