鵜頭川村事件 (文春文庫 く 41-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915452

感想・レビュー・書評

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  • 亡き妻の墓参りに鵜頭川村を訪れた岩村明と娘。
    その夜から豪雨にみまわれ、この村が土砂崩れで孤立してしまう。
    その日に若者が何者かに刺されて死亡しているのが見つかり…。
    若者中心で自警団が結成される。
    当初は、混乱による窃盗や暴行の防止目的だったが、やがて内乱へと発展する。

    昭和54年の話であり、人口9百人の村。

    現代では、少なくなった過疎地域での暴動であり、血族であるがゆえのひずみが描かれている。

    若者たちの暴動の内側には幾つもの思いがあったのでは…。

    望んだ子。望まれぬ子。偏った愛情。与えられぬ愛情。家のため。己の老後のため。見栄のため。
    そのひずみが、次代へと繋がる悲劇を生んでいく。

    このことばがすべてだろうと思った。

    自身の田舎もこれほどの過疎ではないが、しがらみや決め事やそれに関わる煩わしさがたくさんあった。
    それを思いだした。

  • 亡き妻の墓参りのため、妻の故郷の鵜頭川村にやってきた岩森とその娘。鵜頭川村は昔ながらの慣習を残す田舎の村。男尊女卑など当たり前。村の権力は矢萩吉朗を代表とする矢萩家に握られている。余所者はいじめられる、と言った村だった。そこで急な豪雨にみまわれ村は孤立する。そこに若者の死体が発見された。殺したのは矢萩家の乱暴者大助か?そして若者を中心に自警団が結成される。リーダーは皆の憧れだった矢萩工業で働く降谷辰樹。岩森親子はそんな暴動と狂乱に陥った村でどうするのか?櫛木さんらしい血と恐怖の戦慄のパニックサスペンス。

  • パニックミステリですね。
    怖いし、嫌だなと思いながら、読み出したら止まらない。
    櫛田さんは凄いわ。

  • 雰囲気がどことなく小野不由美さんの「屍鬼」に似ている。もっとも小野さんのはホラー小説、こちらはクローズドサークルのサスペンスだが。

    物語の展開が少し安易な気もするが、日本人のメンタリティの中に、物語で語られている嫌な部分というのはまだまだ根強くあるような気がする。

    救いのない物語ではあるのだが、愛子の健気さと港人の真っ直ぐさは心に残る。事件終結後の村の様子をもう少し書き込んでほしかった。

  • ノンフィクションのようで怖かった。長雨で孤立してしまった村で、若者たちが自警団と名乗り大人たちに対し暴動を起こす。人が徐々に狂っていくのがとても怖かった。
    主犯の辰樹の気持ちは最後まで理解できなかったが、村に閉じ込められ鬱屈する若者たちの気持ちはなんとなく分かる。
    それにしても、時代や小さな村という背景もあるのだろうが、父親が絶対的存在で嫁や子どもがしもべのように虐げられているのは読んでいて辛かった。
    雰囲気や展開などから、読んでいて小野不由美の「死屍」を思い出した。

  • 過干渉&閉鎖的な田舎って怖い。この一言に尽きる。

  • 昭和54年に起きた「鵜頭川村事件」。大雨による土砂崩れで外部と遮断されて、孤立状態に。一つの死亡事件を皮切りに今まで溜まっていた鬱憤を爆発させるかのように暴動が発生します。小さな集落ならではの派閥や集団心理など渦巻く怒りが狂気へと変化していき、どう主人公は乗り越えていくのかホラーチックに描かれています。


    表紙や帯の紹介から想像するにおどろおどろしい展開が待っているのでは?と思っていましたが、思ったよりは恐怖感はありませんでした。先に同じ作家さんの「虜囚の犬」を読んだせいか、それほど衝撃度はありませんでした。
    確かにバイオレンスな描写を言葉巧みに表現されていて、ホラーな映像は浮かんできます。
    ただ、各章の始めにウィキペディアの情報や後の新聞記事を載せているので、「過去の事件」として紹介されています。
    一旦現在に戻るので、冷めた感覚がありましたし、再現ドラマを見ているような感覚にもなりました。

    また場面場面では、暴力や暴動といった恐ろしい描写があるのですが、そこの一部分しか描かれず、他の住民はどうされているのか恐怖感があまり伝わってこなかった印象を受けました。

    ちなみに同じ苗字でも、血縁関係がない人たちが多くいて、誰が誰だかわからない部分はありました。でも、小さな集落ならではの特徴ということや独特の環境、世代別の考えが後に大きな波動へと変貌していくので、良くもあり悪くもありました。
    最初は穏やかな日常だったのに、何か不穏なことが起きると、次第に人間の感情や欲望が剥き出しになっていく姿は、読んでいて恐ろしかったです。集団心理が次第に恐怖の洗脳へと変わるのは他人事ではないと感じました。

    主人公の妻が、その村の出身ということで、一応関係者でもあり、他所者でもありますが、それほど襲われる必要ある?という疑問もありましたが、娘のなにがなんでも守りたい気持ちが相まって、パニック小説として楽しめました。

    一番恐ろしいのは、生きている人間だということを見せつけられた作品でした。死亡事件の犯人は・・・意外でしたが、それよりも動機が酷いというか、やるせない真実に腐った村の象徴だなと思いました。

  • 櫛木理有さんの『鵜頭川村事件』を読了。

    なんんとなく13日の金曜日的なものを連想。
    しかしちょっとちがいました。
    人がたくさん死ぬことに変わり無いけど。

  • 閉鎖された空間での人の汚さや苦しみが読み取れました。対岸の火事のように読み進めたけど無きにしも非ずなのかなぁ。

    櫛木理宇さんの本はどんどん読めてしまう事に気づいた!好きなんだ!

  • 1979年6月
    亡き妻の田舎・鵜頭川村に墓参りに来た岩森明と娘の愛子。
    豪雨で閉鎖された村に一人の若者の死体が発見されたことから村全体に不穏な空気が漂い始め…

    ホラーミステリーだと思って読んでたら…
    パニックものだった…

    途中からエイキチはもうどうでもよくなったのね…
    とか思いつつ…
    まあパニックものだからそんなものか…
    とか思いつつ

    そうか…
    この小説ドラマになったのか…
    入江悠監督が手掛けるなら見てみたいな~
    きっとイイ感じの怖さが表現されてるだろな~。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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