ユニクロ潜入一年 (文春文庫 よ 32-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915520

作品紹介・あらすじ

週刊文春連載時から話題沸騰、前代未聞の潜入ルポ。ユニクロ愛用者必読の“危険本”がついに文庫化!Amazon、ヤマト、佐川急便……数々の過酷な潜入取材をしてきた著者が次に選んだのは、自分の本『ユニクロ帝国の光と影』を訴え、2億2千万の損害賠償と出版差し止めを求めてきたユニクロだった。「(批判する人は)うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」そんな柳井正社長の言葉を「僕への招待状」と受け止めた著者はユニクロへの潜入取材を決意する。妻と離婚し、再婚して、姓を合法的に変え、新しい名前で住民票をとり、健康保険や免許証の名前を変え、その名前で銀行口座を開き、クレジットカードも作り、伊達メガネで面接に臨む。そして、最後にたどり着いたビックロ新宿東口店は柳井社長が「日本一の立地で日本一売りたい」と宣言した新宿の超大型店。そこは慢性的な人手不足やパワハラが幅を利かせる、まさにユニクロの矛盾を凝縮した店だった。文庫化に際し、新章「株主総会に潜入する」を大幅加筆。逃げ続ける柳井社長とついに株主総会での正面対決!そこで見えた柳井社長の姿と弱点とは……?ときに正体がバレそうになるスリリングな場面や、生々しい会話や内部資料……“企業が最も恐れるジャーナリスト”が10キロも体重を落としながら書き上げた渾身のルポルタージュ。解説は48年前にトヨタに潜入し、元祖潜入ルポの名作『自動車絶望工場』を書いたルポライターの鎌田慧さんです。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「今期は減益見通しなのでその通りだ。まだ人海戦術の状況から抜け出せていないためだ。もっと少ない人数と短い時間で効率を上げないといけない」
    「仕事をしているフリ、商品整理をしているフリ、接客しているフリをする従業員がいる。自分が何のために売り場にいるのか、必要な仕事は何かをわかっていないとそうなる。もっと仕事の内容を明確にして、やった仕事に対して報酬が決まる仕組みにする」
    「感謝祭というのは、少したとえは違うかもしれませんが、中学・高校の文化祭や体育祭のようなイメージで取り組んでもらいたい、と思っています。今までそのためにいろいろ準備して、今日から当日。皆さんも楽しんでほしい。レジ速くなれたね、お客様に喜んでもらえたね、というように自分が成長する機会にしてほしい。お客様も大変楽しみにしておられます。お客様には、ディズニーランドにきてよかった、というような受け止められ方をしてもらえるといい、と思っています」
    これらは全て柳井社長の発言だが、どういう人物かは一目瞭然だろう。「宗教の教祖」だ。

    本書は、週刊文春にて『ユニクロ帝国の光と影』を連載し、ユニクロのブラック企業ぶりを白日の下にさらした横田増生氏によって書かれた。「ユニクロ帝国」の連載中に既に本書のための潜入取材を行っていたため、事実上の「ユニクロ暴露本」第二編である。

    まず事の発端は、柳井社長から筆者が遠回しに宣戦布告されたことに始まる。
    柳井「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」
    この発言が筆者の怒りに火をつけ、「じゃあ実際にやってやろうじゃないか」と、ユニクロでアルバイトを始める。潜入ルポは数多くあるが、当の社長が「文句がある奴は働いて見ろ」と公の場で発言してしまうのは、なかなか無いんじゃないだろうか。しかも暴露されて敗訴したあとの発言なのだから、異常なほどの高慢さである。

    それで実際どうだったかというと、やはりユニクロは「ブラック」であった。しかも、ブラック気質の原因のほとんどは、柳井社長が唯我独尊を貫いているからだ。「ユニクロのすべての情報は私のモノである。誰も勝手に漏らしてはならないし、外部から覗いてはならない」「ユニクロは接客業だ。接客業とはまずお客様に感謝し、働かせてもらえることにも感謝しなければならない。お客様が離れていくのは、そうした心遣いが従業員に足りず、ただ漫然と時給分働くことしか考えていないからだ」。こんな思想である。まさに「帝国」そのものだ。

    ユニクロが利益を減らしている実際の理由は、値上げの影響で客足が離れたからである。そもそも、ユニクロの衣服を買う人はワンシーズン使い捨ての着方をしている人が多い。ユニクロは前のシーズンと次のシーズンのバリエーションが全く変わらない販売形態を取っているが、この方法は値段に敏感な客と相性が悪い。ユニクロの品質が支持されるのは安さあってこそで、前買った商品と同じものが10%値上げされていれば、そのまま買い控えに直結してしまうからだ。

    ただ、柳井社長は値上げによる販売数の減少を「根性論」で解決しようとする。削りやすい人件費を真っ先に削り、人手が足りなくなれば「もっと効率的に働けるだろう」と締め上げ、販売目標に到達しなければ店長を詰めて責任を追及する。それがエスカレートし、「お客様への感謝」や「働くことへの感謝」という宗教に達していくのだ。

    本書は2016~2017年の週刊文春に掲載された記事を基に構成された。あれから5年経ち、働き方改革やコロナによる労働の見直しが進んできたため、こうした「昭和の働きかた」は徐々に無くなってきた……と思いたかったが、ユニクロは2021年4月に、新疆ウイグル自治区での強制労働問題が告訴され、米国への新疆綿製シャツの輸入差止めを食らってしまった。これに対して柳井社長はまた「皇帝」のような発言をしている。「人権問題というよりも政治問題であり、われわれは常に政治的に中立だ」と。強制労働をある意味追認しているような発言であり、大きく問題視された。

    私自身、ユニクロは好きだ。値上げしたとはいえ、まだまだ値段の割に質の良い服が揃っていると思う。ただ、この「少しでも安くてもっと良い服」という消費者心理こそが、各店舗でのサービス残業を助長し、海外工場の労働環境を劣悪にしているのだと考えると、少し罪悪感を覚えてしまう。いちファンとして、ぜひ真っ当な会社になってもらいたいと感じた。

    ――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    1 宣戦布告
    2011年6月、筆者の前著「ユニクロ帝国」がユニクロに訴えられる。元店長と現役店長が語る「月の労働時間が300時間超え」という証言、また「中国の委託工場で未成年を深夜2,3時まで働かせていた」というレポート、これらが「事実誤認」として訴訟されたのだ。
    裁判は「原告からの訴えの棄却」で決着する。文春側の完全勝利だ。しかし裁判後も、ユニクロから筆者への取材拒否が続いた。
    2015年3月2日号『プレジデント』で、柳井社長がインタビューにこう答える。「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」

    この言葉に闘志を燃やした筆者は、ユニクロへの潜入取材を決行する。柳井社長直々の宣戦布告によって戦いが始まったのだ。


    2 感謝祭の不振と人件費の削減
    2015年11月期の、国内ユニクロ事業の既存店売上高の前年同期比は、マイナス8.9%と散々な出来だった。感謝祭の不振が原因だった。ユニクロにとって、11月と12月は、利益の半分を上げるといわれる書き入れ時であるだけに、手痛い数字である。柳井社長は、「ユニクロが営業不振であり、スタッフの出勤を削らなければ潰れる」と発言している。
    柳井社長は、部長会議ニュースで営業不振への怒りを露わにしている。「感謝祭の売上げ不振の根本的な原因は、お客様へ感謝を伝える事が出来なかったことである。残念ながら感謝祭のチラシを見ると、お客様への感謝が伝わる内容になっておらず、ディスカウンターのチラシにしか見えない。(中略)感謝祭の本質は、お客様への感謝である。チラシの構成は自社都合で売りたいものばかりになっており、お客様への感謝が欠けている」

    しかし、感謝祭が不振に終わったため、従業員の出勤時間を削らなければ今にも会社が倒産してしまうというのは、事実とは異なる。売上げ不振というのは、2015年11月という「点」で見た場合であり、ユニクロの経営を「線」で見ると全く違う事実が見えてくる。
    2016年8月期の決算を見ると、国内ユニクロの売上高が、約8,000億円と過去最高を記録。人件費は876億円。それに対し、営業利益は1,000千億円超で、営業利益率12%強を誇る高収益部門である。
    また、この年度の親会社であるファーストリテイリングの内部留保は3,400億円以上あり、これだけで国内ユニクロ事業の人件費の7年分の蓄えに相当する。さらに年間の配当金として、国内ユニクロの人件費の半分に相当する350億円超を支払っている。つまり、11月の感謝祭の売上げが悪かったくらいでは、人件費を削る必要のないほどの超優良企業なのである。

    この「会社がつぶれる」や「倒産する」というのは、柳井社長流のユニクロを自分の思い通りに操縦するための、魔法の呪文のような言葉ではないのか。財務諸表まで詳細に読み込むことのない社員やアルバイトに向かって、会社が倒産する、と言って危機感を煽れば、思い通りに出勤日や出勤時間を削ることができる。そうすれば、人件費を変動費のようにして、売上げの落ち込みに合わせて、引き下げることができるのである。つまり、「倒産する」という脅し文句を使うことで、従業員への給与の支払いを抑え、その分を会社の利益に回している、というように理解できる。

    感謝祭の敗北の答えはもっと簡単なところにあった。それは2年連続の値上げである。1回目の値上げは、2014年8月で5%前後の値上げを実施した。もちろんユニクロで値上げを決断できるのは柳井社長だけである。さらに2015年7月、2回目の値上げに踏み切る。値上げ幅は平均で10%、新商品なら20%だ。
    しかしその結果、2016年8月期の第1四半期の決算は、5年ぶりとなる減益に沈んだ。減益幅は前年同期比で30%。月平均の客数は約20%減少してしまった。


    3 現場での無茶なオペレーション
    感謝祭の不振にもかかわらず、本部からは販売計画通りに、次々と商品が送られてくる。しかし、感謝祭後の12月も苦戦して、店頭では売れ残った商品が場所をとっているため、バックルーム在庫を店頭に出そうにも出すことができない。こうなると店舗業務に大きく支障をきたす。客から求められたら在庫確認を5分以内にしなければならないというルールがあるが、実質不可能に近かった。

    ユニクロが地域正社員制度を導入したのは2014年3月のこと。それまで、1,400人だった地域正社員を、2、3年かけて1万6,000人までに増やすことを打ち出した。実は2007年にも、地域限定正社員5,000人を目標に掲げ、同じような制度を立ち上げたが、途中で挫折している。
    地域正社員制度に力を入れ始めた理由は、今まで柳井社長が「店長が最も重要な仕事で、最終形だ」としていた方針を転換したことに由来する。店長だけに任せていたのでは業務過多となり、サービス残業の温床になり、どんどんブラック化していく。負担を分散するため、1万人を超す正社員を採用するという計画を立てたのだ。

    しかしこの地域正社員制度を巡っては、なってみたものの事前の説明と話が違うと感じた人も大勢いる。1年以上が過ぎてもパートで、閑散期は週1〜2日しかシフトを入れられず、その割に当日のLINEで「出勤してください」と要請されるなど、日雇い労働者と同じ扱いをされているという。

    地域正社員として実際に働いていた中野さんは次のように述べる。
    「月次では週4、5日、出勤できるというシフト表を出しても、結局、週に2、3日ぐらいでシフトが組まれるんです。あとは、直前に(LINEで)出勤要請が入り、それに応えて10日ぐらい出勤する感じですね。結果的には、月に20日前後の出勤となることが多かったんですが、いつくるのかわからない出勤要請に振り回されて、家事や育児が二の次になってしまいました。閑散期になると、朝の7時15分から12時までのシフトが入っていても、9時の開店前になると、もう上がってください、って声がかかることが何度もありました」
    人件費を削るだけ削ってシフトを組んで、人手が足りなくなると出勤要請をかけるという非効率なことをやっていたのだ。

    人手不足は新宿の「ビックロ」で特に顕著だった。ビックロのアルバイトの時給は1000円と、同地区における他のアルバイトよりも安い水準だった。人件費を削っているからだ。そのため人が集まらないが、超大型店のためこなさなければならない業務量があまりにも多く、店長や準社員の間でサービス残業が常態化していた。支給されたパソコンや携帯にはひっきりなしに連絡が来て、休みであろうと、その場での対応が求められることがあった。もちろん、そうした業務に給与が支払われることはなかった。

    ユニクロの売上げと人件費にはある一定した相関関係があるのが見えてくる。平日の売上高と来店客数は、週末や祝日の約半分。その分、ユニクロが店舗運営で最も大切な数字の一つとする「人時売上高(売上高を人件費で割った数字であり、この数字が高ければ高いほど、少ない人件費で売上げをとったことになる)」が、平日に比べ、週末や祝日は2倍、3倍に跳ね上がる。
    ユニクロの経営は、平日だけの数字を抜き出して、決算書を作れば、おそらく収支トントンとなるのではないか。週末や祝日、それに感謝祭や年末年始で、人件費を抑え、大きな売上げをとることで、利益を出している。一方、働く側としては、平日に働くのと比べると、週末に働くのは、2倍近い負荷がかかる。つまり、2倍疲れる。感謝祭ともなれば、3倍の負荷となり、3倍疲れることならば、平日と週末・祝日、感謝祭や年末年始の時給が同じというのは、おかしくないか。忙しい時期だけ必死に働いてくれ、という要求は虫が良すぎないだろうか。

    筆者は海浜幕張店で通常勤務と感謝祭勤務を経験したが、ほとんど気が抜けなかった。店頭で活気出しや商品整理をしているときなら、「常に何か作業をしているように」と指示を受ける。レジを打つようになると、レジ列が一瞬でも切れたら、レジ回りの整理整頓、レジ後ろにあるハンガー箱の片づけ、それでも時間が余れば、レジ前の商品整理をするように、と繰り返し言われる。ほかの仕事のアルバイトならある、まったりとした時間や、何もしない空白の時間がユニクロの場合、存在しないのだ。勤務時間中に少しでもボーっとしていようものなら、「時給泥棒」のように見られるのがユニクロという職場である。


    4 海外工場
    香港の人権NGOは、ユニクロの下請け工場の問題点を次のとおりまとめている。
    1 違法な長時間労働と安すぎる基本給
    2 漏電による死亡などのリスクがある危険な労働環境
    3 労働者に対する厳しい管理方法と違法な罰金システム
    4 労働組合がなく、労働者の意見が反映されない職場

    カンボジアの裁縫部門で働いていたソック・サモットさんは、次のように証言している。「同僚が週7日休みなしに10時間働いてもノルマをこなせず、作業中に気を失って、病院に担ぎ込まれた。工場は一日だけ休みを与え、すぐに職場に戻ってくるように命令した。それ以降は無給の休みとなったので、仲間が彼の日給をカンパして手渡した」。彼女の他にも、「残業代が何日分も出ない」「休むと無給にされる」「中国人の監督者に暴行された」と多くの人が証言している。

    しかし、以前ユニクロの中国の工場を担当していた筆者の知人は、労働問題はほとんどなかったという。変わってしまった理由の一端は、現在のユニクロの生産部門の中核を、いずれも商社上がりの人間が担っていることにあるのではないか、と知人は述べている。

    商社の生産現場の管理方法とは、市場の変化を逃さないことだ。刻々と動く市場の変化に合わせ、生産工程や生産内容、納期やリードタイムを変える。知人からすると、こうした小売りの商売のやり方は、乱暴に映る。
    「一言で言えば、工場に対して『ど厚かましい』態度をとるんです。工場に注文すれば、自動販売機から出てくるみたいに、勝手に商品ができあがってくると勘違いしている。彼らは商社にいるときは、強引なことはしない営業マンたちでしたが、ユニクロという大看板を背負って、また『柳井イズム』に毒されて、人が変わったように高圧的に交渉するようになりました」
    柳井イズムとは、軍隊や新興宗教みたいな社風のことだ。上司は部下に対して、「同じことは二度と言わせるな」と口癖のように言う。これは柳井社長がよく口にする言葉である。

    2017年2月、ユニクロはサプライヤーリストを公開した。ユニクロは長らく「企業秘密」を建前にサプライヤーリストを公開していなかったが、外部からの圧力により公開に踏み切った。
    柳井社長は自身の著書で、「CSRに社会貢献という意識はない」と言い切っている。これは「あくまで商売の延長線上に貢献活動がある。逆に言えば貢献活動はユニクロをよい会社と認識してもらうための広報戦略にすぎず、損をするようなことはやらない」ということだ。深センやカンボジアの下請け工場が抱える問題に消極的な態度を取るのは、こうした思想ゆえなのである。

  • 横田増生『ユニクロ潜入一年』文春文庫。

    この種のノンフィクションやルポの場合、著者が冷静さを失ってしまうと読者は著者が考えを押し付けているように感じ、醒めてしまうのだ。本作はまさにこのパターン。最初からUNIQLOをブラック企業と決め付けて、喧嘩腰で潜入ルポを敢行したところで、著者の思いは読者には伝わって来ない。

    確かにUNIQLOはアルバイトや海外の縫製工場に働く従業員にとってブラック企業であろう。UNIQLOのワンマン社長の考えが末端まで行き届かず、業績も伸びずに苛々を募らせているようだ。

    最初は物珍しさも手伝いUNIQLOは流行の波に乗ったようだが、それも長くは続かなかった。大波を捕らえた時に、次のアクションを誤り、ハイブランド化の方向に舵を切ったことで顧客が離れて行ったことが原因であろう。今さら人件費や経費をケチったところで顧客が居ないことには商売にならない。

    どこの企業も業績が伸びないことで悪戦苦闘している。今の新型コロナウイルス感染が拡大している状況を見ると、企業の悪戦苦闘は暫く続くだろう。その中で正社員に対して厳しい指導をしたり、進むべき方向性を示すのは企業のトップの役割であるが、アルバイトやパート従業員にまで徹底しようというのはやり過ぎだと思う。『自分の城は自分で守る』という言葉があるが、正社員にとって企業は城でも、アルバイトやパート従業員にとっては一時の仮住まいにしか過ぎないのだ。

    本体価格840円
    ★★★

  • ユニクロの店舗従業員がこれほどまでに過酷だったのかとびっくり。斯様な企業がどうしてここまで成長できたのだろうか、と考えると、それはやはり日本がデフレで安い価格が支持された結果なのだろう。
    昔に比べると品質は上がっていると思うので、製品開発をしっかり行ってきているのは間違いないし、手軽に高品質の商品を手に入れられる環境を作ってくれたユニクロには感謝。
    しかし本書を読むと、ユニクロの成長がアルバイトや委託工場の犠牲の上に成り立っていることが分かった。柳井社長については、経営者だから事業環境に応じて朝令暮改になることも、それはしょうがないと思う。しかし、張りぼてというか砂上の楼閣というか、がたがたしている印象を受ける。指示が現場の課長レベルなので、現場従業員はしらける。この辺りを、著者が上手に描き出していると思う。
    ユニクロにはいろいろお世話になっているが、これからは適度な距離感にしようかと。

  • 以前から耳にしていた、とある衣料量販店の裏舞台を潜入捜査するルポ。

    この企業オリジナルの話は少ない。残念ながら、よく聞く『社会で成長してほしくない』と感じる会社の生の経験談でした。

    モノを買うときには、素材や性能、値段でといった目に見えるところだけでは足りない。

    それを買うと、誰が笑って、誰が泣くのか。レジに行く前に考えたいと、より強く意識させてくれました。著者の増田さん(田中さん?)1年間お疲れ様でした。

  • 初めてこういう潜入ものを読んだ。ユニクロがブラック企業とは耳によくするが、こんなにも卑劣な職場とは。
    あんなに安い価格でハイブラントにも合うデザインは本当にすごいと思うが、その裏では血肉を削り、働いてる人がたくさんいるということ。

  • 潜入取材の書籍を初めて読んだ。名前まで変えて潜入する著者の姿勢は驚嘆した。現場レベルになる程思考する暇なく働かされる実情を見ると、ある意味宗教の様相だなと。本書は5.6年前の話だけど、人権デューデリジェンスの必要性が叫ばれる中、今のユニクロの状況は気になるところ。本書を読む限り、ユニクロではバイトするなと言いたくなる。

  • ユニクロが初任給を30万円に引き上げるとニュースで聞いてそんなにもらえるんだ、単純にいいよねと思っていたら友人が「ブラックなんじゃない?」とさらっと言った。潜入した本が昔あったよ、と教えてもらい読んでみた

    ユニクロにはあまり行かないので、感謝祭というのも知らなかった。従業員にとってなんて過酷な期間なんだろう お客にとっても混雑だし並ぶしあまりいことはない それでも行く人がいるのね

    洋服を買う時は作ってる人を大事にしている会社で製作されたものを選んでいる
    みんなもそうすればブラックな会社はなくなるのに。

  • 素晴らしい調査報道。前著を引き継ぐ形で名前まで変えてユニクロにアルバイトとして潜入した記録。東南アジアの工場への対応もH&Mなんかとは正反対でユニクロの体質がよくわかる。まあ結局は柳井市の好きにすればいいんだけどさ、みっともないところ多いなあと思うよ。とにかくユニクロでバイトはするなと若者には伝えたい。最近賃上げの話題が世を賑わせているけども、それよりも非正規雇用の割合減らしたりした方が良いのでは?この著者の取材における姿勢はとても好感が持てた。とても面白かった。「今日やる仕事を今日やるのは作業。明日やる仕事を今日やるのが仕事である。」と、柳井正は言った。バーカそんなこと言って搾取しようとしてもダメだよ。明日やればいいなら明日やるのが知的労働者だろが。お前にとって都合のいい労働者にさせようとすんなよw

  • ユニクロの安さの裏には働く人の犠牲があることを、感じてはいたが見ないようにしていた。
    安さで商品を買うのはやめよう。自分の子供を働かせたくない、と思う会社の商品は買わないようにしよう。では、どの企業がいいのか、、、。実際、私が働く会社もユニクロと似たトップダウンの会社で社長はキレる、怒鳴る、人の話を聞かない。現場は数字がすべてで、私は会話が通じなくて苦痛。そういう会社がほとんどでは。
    大きな会社になるほど、人間が数字になるのかな?
    株式会社ではなく、ワーカーズコレクティブとか、NPOとか、小さな集団で働く形態に目を向けるべき時代なのかも 98

  • ある意味命がけの潜入取材。かなり体を張っている。社長の書籍やインタビューなどを全て読んでいて数値的真実も赤裸々に提示する。ジャーナリストの鏡だ。とにかく内容が面白すぎた。他の書籍も読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

横田増生の作品

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