宇喜多の楽土 (文春文庫 き 44-3)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916244

感想・レビュー・書評

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  • 父と違って、なんて不器用な生き方しか出来なかったんだろう、秀家。

    八歳で城主というのは、戦国時代なので仕方ないけれど、そこから始まる茨の道。

    唯一の救いの豪姫がいい(T . T)

    そして、小道具が素敵な役割をしているのが、読んでいてたまらない!

    あー、楽しかった。

  • 戦国時代を背景にした時代モノの小説で、大変に愉しく、素早く読了した。本作の主要視点人物となるのは宇喜多秀家(1572‐1655)である。
    宇喜多家というのは、起こった当初は浮田家であったというが、嫡流の家が「宇喜多」と佳字を当てるようになって行ったのだという。庶流は「浮田」という字を使い続けたそうだ。現在の岡山県に相当する備前国、美作国というような地域に在った。宇喜多秀家の父である宇喜多直家の頃に戦国大名として台頭する。織田信長陣営と毛利家陣営との間で、備前国、美作国に加えて備中国の一部や播磨国の一部にも勢力を拡げて行ったという。
    物語は、宇喜多直家の最晩年頃、未だ11歳の宇喜多秀家が家を継ぐような辺りから始まる。本能寺の変の後、豊臣秀吉が台頭するという状況下、その豊臣秀吉の庇護を受けて宇喜多家を継いでいくような時期以降のことが描かれる。
    作中、朝鮮出兵を経て豊臣家の求心力が弱まり、豊臣秀吉の薨去ということになり、関ヶ原合戦の局面となる。戦後、宇喜多秀家は生き長らえるのだが、そこに在った想いや、何が在ったのかということが描かれる。
    豊臣家の中で色々な事が在ったような時期には、豊臣家の人達と家族同然に過ごしていた宇喜多秀家は色々と悩む。そして2度の朝鮮出兵では主力部隊の大軍を動員することになる。他方で所領の備前を豊かにすることに心を砕いていたが、家中では諍いが絶えなくなる。そういう中で関ヶ原合戦である。宇喜多秀家は西軍に参加して敗れる。敗れた後の物語が少し興味深い。
    宇喜多秀家は、関ヶ原合戦迄の人生よりも長い期間を“流人”として過ごすこととなった。何故、そういうことになったのか?彼が夢見た「楽土」とは何か?色々と考えさせられる内容だった。広く御薦めしたい。

  • 「宇喜多の捨て嫁」が素晴らしい作品だったので期待をして読んだが普通の出来という感想だ。
    この作家が描く「宇喜多」の作品はデビュー作が凄いので評価のハードルが高くなってしまう。

  • 大名は大変だなと思いました。

  • 関ヶ原で負けた側の武将の生き様が小説として読み応えがある

  • 宇喜多の捨て嫁を読んで、木下作品のファンになった。その続編とも言われる宇喜多の楽土は、前作の主人公である父直家を早く亡くし、豊臣秀吉に預けられながら、大大名に出世して行く秀家が主人公である。
    豊臣家の興亡、宇喜多家の興亡、関ヶ原の戦いを経て、八丈島で余生を過ごすストーリーは、流転の生涯である。
    戦国時代に生まれてしまった秀家の楽土はどこにあったのか考えさせられる。

  • 岡山在住の私にとって、宇喜多秀家の話は興味深く読めた!歴史苦手だから、この本で知ったことも多々( ;´Д`)#読了

  • 宇喜多の捨て嫁の続編というか地続きの作品。前作は直家、本作は息子の秀家主人公で、登場人物や設定は引き継がれている。実は戦国ものは連続ドラマ『関ヶ原』や『風雲児たち』などから入ったので個人的には直家よりも秀家の方が馴染み深い。そして、本作の秀家は子供の頃のイメージ通りの人物像だった。八丈島で肩の荷が降りたように不自由なく余生を暮らすくだりを読んで『風雲児たち』の快活な秀家を思い出した。宇喜多の楽土は八丈島にあったという解釈にしている。多分違うけど。
    捨て嫁は時系列も入り乱れ、トリッキーな作品だったけど、本作は王道で物語性も強い。秀家を助けることになる2人はまあベタベタなわかりやすい伏線だけど、この2人をはじめとした周辺を固める人物達が実在で、ある程度作品で描かれた大筋通りの行動を史実でもとってるのも面白い。もちろん、枝葉肉付けの部分は思っくそ漫画的展開だけど、そんなことがあってもおかしくないかもレベルに整合性はとれてる!
    秀家周辺人物でいうと、実は宇喜多左京亮があの坂崎出羽守だったの知らなくて、「な、なんだってええええ!!!!」てなった……この作品ではめちゃくちゃヤバ奴(もはや人かどうかも怪しいレベルに振り切れてる。ちいかわのうさぎを思い出して!)で、そりゃこんな人間に家康も千姫をくれてやりたくなかろう……

    もう一つ関ヶ原の合戦描写が通説と全然違うのも見どころで、まさか一番展開を読めると思っていたシーンが一番予想外「うわぁぁ……死ぬ」てなるとは。。。大坂着陣時の意気揚々とした宇喜多勢の雰囲気見たら通説通り行くと思うやん……

    【余談】実家の香川と現住所の神戸を行き来する時、必ず岡山の児島から早島を通るんだけど、なるほどこの辺は元々宇喜多家の事業によってできた干拓地やったんやな。まあまあ内陸やのになんで島が地名についてるんやろと思ってたけど、もともとは島やったんかな?

  • 前作の捨て嫁とは違った面白さがあった。不器用というか、負けるとわかっていても信念を曲げられない生き方に共感を覚えた。梟雄と呼ばれた父とは違う魅力がある。豪姫とのやりとりもいい。

  • 大好きな作家の一人木下さんの作品。今回の主人公は、豊臣五大老の一人宇喜多秀家。今までほとんど知らない武将でしたが、楽しく読めました。あまり普通の歴史小説では多くは触れられない秀次や豪姫などが実にが魅力的に描かれており、そういうところにスポットを当てる勘所が好きです。最後の豪姫からのメッセージ、正直どういう意味か分からなかったので、ネタバレのネットを読んであぁそういうことか、と気づきました。もっと、ちゃんと分かりやすく書いてほしかったなあと、正直思いました。もっと豪姫について読みたい!と思いました。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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