彼女は頭が悪いから (文春文庫 ひ 14-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916701

感想・レビュー・書評

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  • 自分より下とみなしてる者に対しては何をしてもいいという無意識の認識がぞっとする。戦時中の話かと思うような思考回路だなーと思ったが、あとがきを読んで、限られた人間の話ではなくて誰にでもそうした無意識の差別意識があるかもと思い直した。

  • 本当に本当に本当に胸糞悪かった。途中から、なんでわたしは働いて稼いだ金でこの本を買い、こんなに嫌な気持ちになる時間を過ごしているんだろう、と、猛烈に腹立たしくなって、目を滑らせるだけの読み方に変えた。
    そして後書きで、まさかの事件のモデルが実際に起こったことであることを知り、さらに胸糞。
    わたしは胸がなく身長も小さく、性格にもかわいげがないので『そういう』対象であると相手にあからさまに示されたことがない。そして、学歴もまったくない。だから誰にも共感できず、ただただずっとひたすらに嫌だった。
    もう二度と読みたくないが、「めちゃくちゃ嫌な話だった」という記憶だけはずっと残り続ける本であろうと思う。

  • 後味悪いけど、東大じゃなくても気づいたら持っている優越感というのはあるだろう。それが描かれているように思った。
    当時よりもさらにSNSが身近で、承認欲求という単語が日常に聞かれる世界で、このような事件は形を変えてどこかに起こるだろう、と考えて身の毛がよだった。
    人の気持ちを汲む想像力を養うのは読書が一番だと思う。

  • 女性でもある自分はもちろん美咲の気持ち、恋をして諦めきれない気持ちや「お姉ちゃん」でいなきゃという気持ちなど、自分と重ね、共感しながら読んだ。とてもリアルだった。
    被害者である美咲に共感しているのだから、東大生5人の考えと行動に全く共感できないだろうと思われたが、そうでも無い。それが怖かったし、この本の本質だと思う。

    いつの間にか心の中に生まれた東大生というブランド、女子大生というブランド、世間からの承認欲求、自尊心。そういったものが社会に蔓延っていて、学歴、肩書きで人を判断し、相手が自分より上か下かを分類する。
    よかった…この人より上だ…
    自分もそう思ってしまう時はあるし、割と多くの人が心に一度は抱いた感情だと思う。

    エリートはエリートだからこそ、視野を広くし、高い倫理観を身につけて、その知性を良いことに使い、社会貢献してほしい。

  • 東大生集団猥褻事件を元に書かれたフィクション。
    被害者と加害者の1人の環境や生活を辿りながら、なぜこの残酷な事件がおきたのかを迫っている。

    とてもとても苦しくて、不快な作品でした。

    それは、加害者たちと加害家族たちの欠落した想像力や良心であり、発言の自由があたえられすぎたこの社会であり、社会の中でヒエラルキーを柔軟に察知しあるべき立場を探そうと生きる加害者と被害者とわたしによるものです。

    あるところでは、この作品に対し様々な意見がでているようではあるけれど、東大=日本で1番優秀な人間という一般常識(偏見でもある)を利用しているのであり作中には様々な形で、この社会に蔓延るヒエラルキーや偏見にあふれている。
    かわいい子とそうでないこ(ぶさいくな子ではない)、運動ができることそうでない子、1部と2部、都会と田舎、、、
    なぜ、人間は他者の上に立ちたいとおもうのだろうか?誰かと比較しなければ自分の価値示せないとおもうのだろうか?
    そんなことを延々と考えてしまうような作品でした。

  • 本屋さんでタイトルが気になって手に取った。
    実際にあった事件を基にしてる。


    事件に至るまでの被害者、加害者
    両方の生い立ちや環境、関係性が綴られており
    最終章では事件の内容が記されている。

    最終章はしんどかった。読み進めるのがつらかった。
    集団レイプ事件、痴漢事件など
    性犯罪は数多くあるし、
    性犯罪に限らずイジメなどの学内暴力などもそうだけど
    人が人として扱われない過程の詳細がきつかった。
    そして、必ずといっていいほど
    加害者は罪悪感を感じてないところを含めて吐き気がした。

    事件が公になったあと、被害者にかけられた言葉を総じると勘違い女なわけだが
    人より少し胸が大きくて、肌が白くて
    笑うと可愛くて、お酒が強い体質で
    空気を読むことに慣れていて、好きな相手から少しでもよく思われたいと思うのが勘違いなのだろうか?
    勝手に見た目でジャッジして、
    ネタ枠だからなんでもしていいと適当に扱ったのは加害者なのに。

    これと似た作品に、
    ヤマシタトモコさんの
    ひばりの朝という作品があります。
    漫画ですがすこしでも興味が湧いたら読んでほしい。

    エネルギーがかなりいる作品だけど、
    読んで得られた気づきもあった、


  • すべてのひとが理解できるであろう、日本の無意識下の差別意識を文字化した一冊だと思う。

    実際の事件をきかっけに執筆された本書。
    その事件は私の記憶によく残っていて、
    なんともいえぬ気分の悪さを抱いたのを思い出した。
    あの不快感はなんだったのか、本書が明らかにしてくれたと思う。

    選評が巻末にまとめられているが、その方達の言葉をかりると、
    本書は勧善懲悪でもなく、告発弾級でもなく、啓蒙小説でもない。
    嫌な話題・素材を、嫌悪さを残さずに、物語としてラスト締めくくっている。
    その締め方にはあっぱれと思った。

    後半にかけて面白くなっていくので、前半で飽きてきた人はどうかもう少し辛抱して読んでほしい…!

  • ずーっと、モヤモヤとした気持ちで読み進めていきました。 最後まで読んで、ズドンと底まで落とされた感じです。
    一つも水面に顔が上げられなかった気持ちです。

    社会で一般的に用いられてる尺度である学歴。
    その最たる所の人達の頭の裡は一生理解できないのでしょう。

  • 最後の最後まで、加害者側たちが何が悪いかわかっていないところが恐ろしかった。

    被害者と加害者がどんな家に育って、どんな感情を抱きながら生きてきたのか、その背景が丁寧に書かれているからこそ、感情移入しやすかった。

    もし現実世界の自分がこの事件の報道を聞いていたら、、私も「被害者側の女が悪い」と思ってしまっていたんだろうか。

    "無知"は怖い。

  • 最低最悪。

    最低最悪な話。言うまでもなく、この本がじゃなくて、この物語に登場する人々が。ストーリーが。社会が、世の中が。そして、なにが最悪かって、それが現実に起きている話だということ。さらに、私自身もそんな世の中に、たった今この瞬間にも生きているということ。ーーー

    これが架空の物語だったらどんなに救われるか。

    なんでこんなにもひとの気持ちがわからない人がいるのだろうか、なんで痛めつけていることになにも感じないのだろうか、なんで、なんでなんで………?心の底から理解ができない、気持ち悪い、吐き気すらする。

    言葉を選ばずに書くならば、もう一生この本読みたくない。出来ればもう思い出したくない。なのに、表紙を見ただけで、胸をギュッと締め付けられるような、このしんどさは、一瞬で思い出せる。

    どうか、これが小説でありますように、、。本当に無理。



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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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