- Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167917722
作品紹介・あらすじ
ノンフィクション界のトップランナーによる最高傑作。
ヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞、W受賞!
探検家にとっていまや、世界中どこを探しても”未知の空間“を見つけることは難しい。大学時代から、様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜――「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。
シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。本番の「極夜の探検」をするには周到な準備が必要だった。それに3年を費やした。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。そしていよいよ迎えた本番。2016年~2017年の冬。ひたすら暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。
読む者も暗闇世界に引き込まれ、太陽を渇望するような不思議な体験ができるのは、ノンフィクション界のトップランナーである筆者だからこそのなせる業である。
感想・レビュー・書評
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探検ノンフィクションの快作。
あなたはまったく光のない暗黒世界で4ヶ月間過ごせるだろうか。しかも氷点下30度以下の極寒の地で、たったひとり。
本書はそんな探検の話だ。2016-17年の冬、グリーンランドの極夜期間に単独で(お供に犬が一匹)ソリを引き、北極点を目指す。
この探検にあたり著者の角幡さんは3年をかけて入念に準備している。それでも、この旅には試練しか訪れない。残酷なほどに。
心身に不調をきたす<極夜病>。猛り狂うブリザード。極夜の女王<月>にすがり、騙され、食料を失い….。
著者は言う。探検・冒険とはシステムの外側の領域に飛び出し、未知なる混沌の中を旅する行為なのだと。
この探検でのシステムの領域外とは<根源的未知>である極夜だ。過酷な暗黒世界で死にかけたあとに見る太陽は果たして彼に何をもたらすのか。
この恐ろしくも美しい探検を是非読んでみてください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
探検家である著者角幡唯介氏は、とってもクレイジーな人間であることが良くわかりました。(悪口ではありません)
最近、この歳になって気付きました。常人ではできないことを平然とやってのける人、その人の生きざまを知ることが楽しくて仕方ない。
犬一匹と脱システムで、人生に勝負をかけた旅「極夜行」に挑んだ彼は、まさしく常人ではありませんでした。
未知の領域を教えてくれる冒険紀行です。
自然には抗えない。陽が昇る日常に感謝。 -
グリーンランドから月の明かりもなくなる期間があると言う「極夜」を探検したノンフィクション。
犬と橇を引き旅をする。ツンドラの果ての果て氷と一瞬にして豪風の世界。
どんな旅にしようと計画しても、天気には逆らえない多くの変更を経てたどり着く。
何を考えどう行動したか、最悪の事態をシミュレーションしながら旅は終わる。
星野道夫、椎名誠、いくつかの極地の旅を読んではきたが、角幡唯介さんの旅も違う世界の扉を開きパズルのピースをもらった気分。
この著書の前に、極夜行前と言うものがあると言うのでこちらもこれから入手したいと思う。 -
極夜という日本ではイメージ出来ない旅を、臨場感ある文章で表現され、恐怖や畏怖の有り様もよく感じられた。
パートナーである犬を食さねばならないのか…?の自問自答の下りは、非日常における葛藤として、とても鮮明に残った。無事で良かった…。
旅以上の冒険というジャンルの書籍が初めてだったので、よい読書体験ができた。-
2024/04/04
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北極に近い北半球の高緯度地方では、夏の間、太陽が沈まない白夜が続く一方で、冬には何か月も太陽が昇らない極夜という状態が続く。本書は、2016年12月から2017年2月にかけての極夜の時期にグリーンランドを犬と一緒に橇を使って旅をした筆者の冒険の記録である。
本書に描かれている冒険は、ひとつ間違えれば簡単に命を落としてしまう危険と隣り合わせの、想像を絶するような体験だ。その体験を筆者は人生における大きな勝負の一つであると表現したり、また、極夜時期が開けて初めて上った太陽の光を人間が誕生して初めて見るこの世の光に模したり、また、それを妻の出産体験に重ねたりといった具合に、筆者自身の人生と重ね合わせての解釈を本書中で語っている。冒険談も面白いが、この語りの部分も面白い。
しかし、筆者が時々かます「おやじギャグ」的な表現やエピソード(かなり多い)は、好みが分かれるのではないか。私自身は、ない方が良いと思いながら読んでいた。 -
角幡唯介『極夜行』文春文庫。
ヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞のW受賞の北極での極夜の探検を描いたノンフィクション。
非常に興味深い内容だった。地図上の空白地帯が無くなった現代に於いては、もはや未知の状況下で過酷な自然に挑むしか探検を行う術は無い。まるで厳冬期のエベレストで無酸素単独登頂に挑むような過酷で無謀な探検の様子が詳細に描かれる。
残念なのは著者の計算とは真逆に、俗っぽい話を挿入したことが反って、過酷な探検に創作の匂いを感じさせてしまうことだ。探検というのはわざと過酷な状況に身を置いてこそ価値が出る訳で、その状況を作り出すのが創作と言えば、創作なのだろう。また、あとがきにも商業的な香りがするが、探検家を生業にする以上はそれも仕方無いのか。
著者は足掛け4年の準備期間を費やし、太陽が地平線に沈んだままの漆黒の闇の世界を4ヶ月間に亘り北極圏を探検する。相棒は犬一匹。GPSを持たず、頼みの六分儀も失い、地図とコンパスを頼りに氷の上を橇を引いて移動する。ブリザードに見舞われ、デポを白熊に破壊されて食糧不足に陥り、暗闇の中で迷子になるなどアクシデントが続く中、4ヶ月後に再び太陽の下に立った著者の思いは……
本体価格800円
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白夜行……じゃなくてその反対、極夜行。
日が昇らない暗黒の極北を冒険するお話。
面白い!
とにかく面白かった!!
熱量のある文章、緊迫したシーンでも平然と挟まれる冗談描写、なのに話の張りつめた緊張感は損なわない、というとても危ういバランスの上で奇跡のように成り立っている作品。
なんだこれ、最高すぎる。
文庫版あとがきにある『カオスをいかに文章で表現するか』が大成功していると思う。
この本が発行されているということは無事生還しているという、存在自体がネタバレになっている作品なのに、そういったシーンを読んでドキドキソワソワが止まらなかった。
無事生還できるか以外にも、そもそもの旅の目的である「極夜明けの太陽を見る」や「犬との関係の行く末」など見どころがたくさんなので、飽きることなく……というか、胃もたれするくらいの楽しさがあった(笑
あと犬可愛い。これ。
ウヤミリック可愛い。
ひとつ不満を言わせてもらうなら、写真がいくつか欲しかった!
描写と想像で楽しむのも本の面白さなんだけど、それはそれとしてノンフィクション作品なら写真があってもいいかなーって。
使っているテントの大きさってどれくらいなの?とか、ウヤミリックってどんな感じの犬なの?とか、引いてる橇ってどんなサイズ感なの?とか、そのあたりの情報は写真があると嬉しかったなぁ。