カインは言わなかった (文春文庫 あ 90-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919160

作品紹介・あらすじ

公演直前に姿を消したダンサー。
美しき画家の弟。
代役として主役「カイン」に選ばれたルームメイト。
嫉妬、野心、罠──誰も予想できない衝撃の結末。
芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー!

男の名はカイン。
旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」として描かれる男──。

「世界の誉田(ホンダ)」と崇められるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。
その新作公演「カイン」の初日直前に、主役の藤谷誠が突然失踪した。
すべてを舞台に捧げ、壮絶な指導に耐えてきた男にいったい何が起こったのか?
誠には、美しい容姿を持つ画家の弟・豪がいた。
そして、誠のルームメイト、和馬は代役として主役カインに抜擢されるが……。

芸術の神に魅入られた人間と、
なぶられ続けた魂の叫び。
答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。
“沈黙”が守ってきたものの正体に切り込む、罪と罰の慟哭ミステリー。

『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補、
『火のないところに煙は』が本屋大賞と山本周五郎賞候補。
『許されようとは思いません』続々重版中、
芦沢央が渾身の力を込めて書き上げた超傑作がついに文庫化!


「この小説そのものが、底の知れない沼のようだ。
読み始めたら、逃げられずに沈んでいく恐怖を快楽にかえて、
読み耽るしかない」──角田光代(解説より)

感想・レビュー・書評

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  • タイトルのカインは、旧約聖書のカインとアベルから取られている。カインは、人類初の殺人者だという。このタイトルにより、混沌とした構成がより複雑さを増すことになります。
    物語の中核は、世界的評価を受ける芸術監督。彼は、主催するダンスカンパニーで「カイン」の上演を決定する。
    トラブルの発端は、主役を射止めたダンサーの失踪。ここから、失踪したダンサーの関係者やカンパニーと関わりのあった人達が、心情を語り始める。
    各章ごと、思念の流れが変わり、被害者そして加害者となるだろうという人物を読み間違う。
    面白い構成で最後まで楽しめました。ただ、犯罪者となった人物の言動が読み取れず、犯罪心理なんてこんなもんよね、と後書きを読んだら角田さんも似たような事を書いていて安心した。加えて、アベルとなる人物像をもう一息欲しかったかな。
    それでも、芦沢さん覚醒するかもと思う作品でした。

  • 久しぶりの芦沢央さんの作品で、長編という部分
    でも久しぶりに読んだので、よく読んだなと達成感
    が湧いてきました。最初から最後まで緊迫感がでてて、少し怖かったです。バレエの指導って、こんなに怖いのかとビビりました。

  • 体罰禁止や他者を思いやるという言葉が当たり前の世の中で、芸術だけが未だに一昔前の世界が残っていると感じました。
    ただそれを100%否定したいわけではなく、経験していない物事を完璧に表現しなりきるためには必要悪なものなのでしょうか。

    「もはやどこにも道は見えなくて、どちらが前なのかもわからなくなって、たった一人で真っ暗闇の中で立ち尽くすしかなくなるのだとしても。」

  • 何か起こりそうな不穏な空気感がたまらずゾクゾクしました。ステレオタイプな描写ではあるけれど、どこかこういう人たちは恨み買ってるよなぁという共感もあり、話はスラスラと読み込むことが出来ました。しかし、高まった空気感が爆発した時、ピークを迎えてしまった感じがあり、オチを楽しむというよりも、それまでの過程を楽しむのが好きな方にオススメしたい作品でした。

  • 読み出したらすぐその世界に引き込まれて、次は?次はどうなる?この話、どうやって落ちるの?と気になって仕方なくて一気に読んでしまった。
    それぞれの登場人物の背景、行動、言動がこのあと何かを起こさせるような不穏な展開。
    でも結末まで読み進めて、芸術という分野に知識のない私はよく理解できず、そうなのか、な。そうなんだろうな。という程度にしか感じ取れなかったのが残念。

  • それぞれの視点で見て感じたことが、組み立てられて、結末へ繋がる。些細なことが積み重なって重要性を帯びてゆく。独特な世界観に惹き込まれて、追われるように一気読みした。

    読み終えて、タイトルを目にして、あぁそうか、と妙に納得してしまった。

  • バレエもの、小説だと秋吉理香子作ジゼル、映画だとブラックスワンがあるが、とても厳しい世界を描いてるというのは共通してる。今作は視点が何人かの登場人物によって変わっていく群像劇、最後にどう結び付いていくのかわからないし、緊張感があった。これまでの芦沢央作ともまた違う印象がある。衝撃の結末かというとそんなものではないと思うが、エピローグがまた良かった。

  • 一糸乱れぬ〈群舞〉の中に、不穏な足音が。流れる血と、行方がわからぬ大切な人。読み進めれば読み進める程不安が増していく。皆の一挙手一投足に心を右往左往させながら、読了。『それは、絶対誰にも話すな』

  • ついどんでん返しを期待してしまっていたけれど
    それが気にならなくなるほど引き込まれた。

    認められたい、特別な存在になりたいと誰もが思っているけれど、その方法は手探りしかない。
    どうしてあの人が、という思いは誰しも持っている。

  • 芸術の世界とその周りで交錯する殺意が描かれた長編

    今まで読んだ芦沢作品の中では一番ページ数が多い作品なのに、緊張感がずっと続く
    多視点が細かく切り替わって次へ次へ読んでしまう

    殺意を持つこととそれを行動に移すことの間にある差
    バレエにも絵画にも詳しくないのに、その中に渦巻く人間臭さにがっつり引き込まれた

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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