茶の湯の冒険 「日日是好日」から広がるしあわせ (文春文庫 も 27-3)
- 文藝春秋 (2024年3月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167921934
感想・レビュー・書評
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森下典子『茶の湯の冒険 「日日是好日」から広がるしあわせ』文春文庫。
著者の25年間に亘る『お茶』のお稽古の日々を綴ったエッセイ『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を原作にした映画作りの内幕と怒涛の日々を描いたエッセイである。
著者と映画監督、スタッフ、樹木希林をはじめとする出演者との交流の様子、様々な苦労を乗り越えて行く過程にリアリティがあり、非常に面白い。
何度か話は来たものの立ち消えになっていた『日日是好日』の映画化が実現し、喜ぶのも束の間、著者は思い掛けず映画の茶道指導者として撮影に参加することになる。
著者は決死の覚悟で、樹木希林、黒木華、多部未華子ら役者や映画関係者などプロ集団の中に飛び込むが、映画関係者は茶道を知らず、予期しなかったことの連続ばかりだった。
そして、映画は完成するが、主演の樹木希林の遺作となってしまう。現場での女優としての魂と高い技術を見せ付けた樹木希林の姿が目に浮かぶようだ。
著者の森下典子と言えば、ドラマにもなった『典奴どすえ』を書いた方だ。それからしばらく名前を見ることがなかったのだが、ここ数年の間に『いとしいたべもの』『こいしいたべもの』『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を読み、知らぬ間に素晴らしいエッセイストになられていたことに驚いたものだ。
本体価格750円
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『日日是好日』の映画が作られていくお話。
併せて映画を流しながら読んだので、シーンと描写が重なって味わうことが出来た。
「形式主義じゃないですか」
「あなたたちは、何でも頭で考えるからそんな風に思うのね」
多部未華子と樹木希林の会話。
形を先に身体に馴染ませることについて、まだ20代の美智子の言葉が可愛らしい。
それに対して、するりと流れるように応える武田先生に、私の視線が留まる。
そうかも。そうだったかも。
自分自身に向けて、ふと肩の荷が下りるような、素敵なシーンだった。
作者の森下さんも、このシーンを間近で見ていて涙する描写がある。
この映画はよい映画になる、は、きっとこういうことなんだろうなと、思った。
本筋を離れるが、あとがきにあった、武田先生の言葉。
「三日我慢したら三ヶ月は耐えられる。三ヶ月耐えたら三年は頑張れる。三年頑張ったら、ずっと続けられる」
我慢を強いない社会になったと思う。
でも、共感が減った社会になったなとも思う。
辛ければ辞めればいい、と言ってもらうことは、楽だと思う。
でも、三年頑張ったら、とか、十年続ければ、とか、そうやって一つの山を乗り越えることが出来たときに、得るものがある。 -
お茶を習い始めからの25年を綴ったエッセイ「日々是好日」の作者が映画「日々是好日」の制作に茶道指導者として参加した記録である。「典奴どすえ」でデビューした作者なだけにノンフィクションは手堅く、映画作りのプロ集団と茶の湯の専門家との軋轢と学び合いの数々が丁寧に描かれている。映画に出演した樹木希林さんの女優人生最後の記録としても貴重だと思う。エッセイも映画も楽しめたが、この作品でもう一度別の角度から楽しめた。
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現代劇として初のお茶の映画である「日々是好日」の原作であるエッセイの著者が、自分の半生の映画化に茶道指導という役割で、茶道経験者がいない撮影現場に立ち会い、そこで初めて見て、触れ、経験し、感じたことをとてもナチュラルな表現で瑞々しく記したエッセイ。自分や自分の先生を演じている様々な撮影シーンを見て、その時には分からなかったそれぞれの思いや気持ちに改めて気付く等、自分の人生の映画の撮影を通して、自分の半生を振り返るとても貴重な体験記。とても気持ちが温かくなる1冊。
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ごぞんじ「日日是好日」の映画化にまつわる回想記。著者にとってもまさかの映画化の話がもちこまれたところから、少しずつ構想が具体化して撮影の準備が始まって、濃密な撮影期間に入って、完成して・・・というメイキング、「史上初めての現代劇のお茶の映画」をつくる挑戦の物語として、また(原作者兼作動指導としてではあるが)素人が制作現場に飛びこんで見聞きした映画制作現場印象記としても、そして樹木希林の女優としての最後の日々の貴重な記憶としても、とてもおもしろく読める(森下典子さんはほんとうに読ませる文章を書く、それもまたお茶の稽古に磨かれてきた感性のおかげなのか?)。これはいつか映画も見なくてはな…と思いながら読んだ。
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茶道を続けているいま、改めてこの映画を見たい。
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GW前に本編読了し、解説だけ残して未読だったので、連休明ける前に慌てて読了。
『日日是好日』映画製作を綴ったエッセイ。
茶道の経験なしの映画のプロ集団の中で、思いがけず茶道指導者として撮影に参加する事になり、そのプレッシャーは相当なものだっただろう。
だが、プロデューサーを筆頭に、スタッフ全員がこの映画に懸ける想いはとても真摯で、原作者を含め「チーム」という感じが伝わった。
知らなかった製作の裏側も知れて面白かった。
もう一度、映画が観たくなった。 -
【樹木さんはじめ茶道経験の全くない人達で、お茶の映画を作る 】作家・森下典子が映画作りのプロ集団の現場に飛びこんだ!その愛おしくも激闘の日々を綴った「日日是好日」大人気シリーズの集大成。