日本の運命を変えた七つの決断 (文春学藝ライブラリー 歴史 16)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168130489

作品紹介・あらすじ

重大な歴史の岐路はここにあった!加藤友三郎の賢明な決断、近衛文麿の日本の歩みを誤った決断。ワシントン体制の国際協調から終戦までを政治学の巨人が問い直す!

感想・レビュー・書評

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  • 指導者が正しい決断をする三つの条件とは、
    1.正しい状況判断。選択肢とそれぞれの利害損失を明らかにすること。
    2.大局的な判断力。「史眼」を備えていること。いかなる決断も重大な犠牲を伴う。
    3.決断に対する責任感。動機ではなく結果に対して政治家は責任を負う。

  •  原著は1975年刊。著者が特に高く評価するのはワシントン条約の加藤友三郎、二・二六事件と「聖断」の天皇、終戦時の米内光政、東郷茂徳、鈴木貫太郎。逆に低評価なのが、張作霖爆殺事件後に優柔不断な田中義一、盧溝橋事件後に不拡大を決断できずまた後に南部仏印進駐を決めた近衛文麿だ。その他の人物や事象についても、ロンドン海軍軍縮会議での加藤寛治は「日本にとって不幸」、「国民政府を相手にせず」は「史上空前の愚劣な声明」と語り口が明快だ。
     他方、解説で奈良岡が述べるように、複眼的視点もある。浜口雄幸の海軍軍縮は評価しつつ、緊縮政策は間違いだったとする。田中義一についても、満州と内蒙古以外は蒋介石統治に任せるとの構想はそれなりのステイツマンシップだとする。終戦時の阿南惟幾の戦争継続論は批判するが、軍人の立場にも思いを馳せ、また陸軍内のクーデター計画を抑え自決で事態を収拾したことは評価する。
     加えて面白いのが、著者が同時代を生きたということだ。「暴支膺懲」を熱く議論する銭湯の雰囲気、大戦序盤で朝刊の一面は毎日ドイツ軍進撃の記事でいっぱい、など著者の経験を通じて当時を間接的に体験できた。

  • ワシントン会議から終戦まで、昭和天皇の決断とその他日本政府の要人の決断について、当時を生きてきた著者に於ける分析が著されています。中には英断と言えるものもあれば、大きな間違いを犯してしまった決断など今日正しいと思えるものとそうでないものもあります。明治以前の教育を受けた人たちやそれ以後の教育を受けた人との違いなどの分析も興味深いものでした。

  • 名著

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著者プロフィール

猪木正道

一九一四(大正三)年、京都市生まれ。東京大学経済学部卒、三菱信託株式会社、三菱経済研究所を経て戦後、成蹊大学教授、京都大学教授、防衛大学校長、青山学院大学教授を歴任。京都大学名誉教授、平和・安全保障研究所顧問などを務めた。主な著書に『ロシア革命史』『ドイツ共産党史』『政治変動論』『共産主義の系譜』『独裁の政治思想』『評伝 吉田茂』(全三巻)『私の二十世紀――猪木正道回顧録』『猪木正道著作集』(全五巻)などがある。

「2021年 『軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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