- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198610579
感想・レビュー・書評
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日本の戦後の大衆音楽、つまり娯楽音楽の歴史を描いているが、楽しい本というよりは、真面目なアプローチを取った本である。
単行本たった一冊で、約50年分の日本の大衆音楽シーンを紹介しようとすれば、紙幅の関係で内容は「広く浅く」なるか、「深く狭く」なるかのどちらかに傾く。本書は広く浅い方を採用している。
私は、幅広いジャンルの音楽を人一倍聴いてきたので(リアルタイムではなく後追いの知識で)、日本の戦後の歌謡史も一応把握しているが、全体的に物足りなさを感じた。力作であることは認めるが、内容はあっさりし過ぎる嫌いがあった。
タイトルに「私的全史」と銘打っている様に、この本の主人公は著者自身である。通史を追ってはいるが、その中心にはいつも著者がいる。著者の目を通した通史。著者が業界人として音楽業界の内側で見聞きしてきたことを、ヒットチャートや流行と織り交ぜながら、時系列でまとめている。
一人の著者による個人的な視点を通した音楽史なので、著者の年齢によって見方や感じ方も当然違ってくる。一般的に言って若い時の方が、知識がない分、新鮮さを感じやすいし、音楽にも熱中しやすい。それに感受性も豊かであろう。若い頃に聴いた、自分より少し上の世代や、同世代の歌手にシンパシーを感じるのは普通の成り行きである。だから、歌手名の列挙だけで、あまりにもあっさりと通過してまう年があったり、全体を通して吉田拓郎に関する記述が異常に多かったりする(吉田拓郎は著者と同い年である)。
以上のことからも、本書を真に楽しめるのは、著者と同じ昭和20年代生まれ人たちではないだろうか。昭和歌謡史を全く知らない人たちが、何の予備知識も持たずに読んでも理解できないのではないかと思う。例えば、J-POP史を知りたいと思った平成生まれの人たちが読むには説明が足りない。もっとも、1999年に出版されて今は絶版になっている本なので、今更そんなことを指摘するのは野暮な話かもしれないが。
2023年の今現在、一般の方にお勧めできる様な本ではないが、時代を遡って昭和のヒット曲をも聴いている様な音楽マニアなら、どの世代でもある程度は楽しめるだろう。その様な方にお勧めしたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後のポピュラー音楽史が当時の世相と共に書かれています。S22年生の著者だけに、私たちの人生の各局面と重なり、とても懐かしく思い出されました。東京ブギウギ、りんごの歌に始まり、ひばり、橋幸夫・坂本九、渡辺プロ、GSブーム、拓郎と陽水、オフコース・アリス、ユーミンとみゆき、P/Lと百恵、YAZAWAとロック御三家、佐野元春と浜田省吾、尾崎とリンゴっ子たち(東京五輪後生れの人)、小室哲哉と氷室京介、小田和正とチャゲアス、宇多田ヒカルと椎名林檎、GLAYなど、いかにも面白そうな名前が並んでいます。改めて、なるほど、こういう時代にこういう歌が流行ったのだと整理出来ました。それにしても最近、歌謡曲といわなくなりました。J-POPというそうです。
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【目次】
プロローグ
[第1章] 戦争が終わって,彼らは歌った
[第2章] ジャズが聞こえる“フェンスの向こうのアメリカ”
[第3章] ロックンロール上陸
[第4章] 青春が輝いていた
[第5章] アメリカン・ポップスと無国籍歌謡曲
[第6章] 誰が美空ひばりを演歌の女王にしたのか
[第7章] ビートルズがやってきた!
[第8章] GSの残したもの
[第9章] フォークソングとカウンターカルチャー
[第10章] シンガー・ソングライター革命
[第11章] ポップスとニューミュージック
[第12章] 女性アーティストの時代
[第13章] 苦闘するロック
[第14章] テレビが作るモンスター
[第15章] ロック新時代
[第16章] それぞれの疾走
[第17章] 第三世代台頭。二つの終わりと一つの始まり
[第18章] “ロック元年”とバンド・ブーム
[第19章] 昭和から平成へ。イカ天とファンク。多様化の波
[第20章] メガヒット時代の幕開け
[第21章] 新世代の旗手たち
エピローグ