呪われた首環の物語

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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198618889

感想・レビュー・書評

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  • 結局最初に殺された王子は浮かばれないなあ。

  • 感想記録なし

  • いつも行く図書館が休館で、以前通っていた図書館に行ったら児童文学が充実していて、思わずこのダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品を借りてきました。

    久しぶりに読んだジョーンズ、面白い。
    ちゃんと児童文学で、ちゃんとファンタジーで、ちゃんとわくわくできる。

    イギリスの湿原に暮らすゲイア。
    勇者の父、賢者の母、〈能〉を持つ姉のえいなと同じく〈能〉を持つ弟のセリと暮らしている。
    ひとりだけ何のとりえもなく父の期待に応えられないだろうことを気にしている。
    けれど家族は、ゲイアに何かを感じてそれを尊重している。
    多分ゲイアに本当に何のとりえがなくても、家族はゲイアを愛してたと思うけど。

    湿原にはゲイア達”人間”のほかに”巨人”と”ドリグ“も住んでいる。
    互いに怖れ、接触をを避けているこれらの種族は、しかし湿原の環境の悪化で、居住地の移動を余儀なくされるが、その悪化をもたらしたのが、ひとりの”人間”の愚かな行為のせいだった。

    最初は純然たるファンタジーと思ったのね。
    だけど”巨人”が出てきて、その恐ろしい存在が、ゲイアの目を通して描写されると「あれ?」と思い当たる。

    自分たちの常識が、誰にとっても常識ではないこと。
    他者からどう見えるのか?
    違う常識とは本当に相容れないのか?

    面白いのは、ゲイア達”人間”だけではなく、”巨人”も”ドリグ”もそれぞれ自分たちのことを”人間”と呼んでいること。
    自分たちこそが”人間”と思っていること。

    そして全然別と思っていた彼らも、話しあえば分かり合えるし協力し合えることを、ゲイア達兄弟や、”巨人”や”ドリグ”のこどもたちが証明してくれることが素晴らしい。
    ならどうして人間同士で諍いを止めることができないのか。
    子どもも大人も考えるべき問題。

  • 「霧に霞む緑の湿原に暮らす“人間”と“巨人”、そして水に棲み不思議な力を持つ“ドリグ”。この物語は、昔一人の“人間”の子が美しい首環欲しさに、武器を持たないドリグの子を殺したことから始まる…。首環にこめられたドリグの死に際の呪いはじわじわと湿原を蝕み、“人間”全体を、はては“巨人”をもおびやかすようになった。呪われた首環をめぐって、恐れ、憎みあう三つの種族が一つにからまりあっていく中、“人間”の長の息子ゲイアは、“巨人”の少年と友だちになり、湿原に脈うつ呪いを解こうとするが…?巨石、緑金、サンザシの木…ケルトの香り漂う英国の丘陵地帯に繰り広げられる、伝説を題材にした極上のファンタジー。」

  • 荻原規子などを読んでいると、たまに驚くのですが、この本もそういった、ぶっとんでいる感覚でした。すごいなぁ。
    珍しく、父母が尊敬できる素敵な人。二人の王には、ホビット然り、あれ、自分こういう関係性に弱かったのかもしれない、と思いました。

  • しばらく以前に読了。
    ジョーンズ作品はゆっくり読むのに向いてるものもあるのだけど、これは比較的さらっと読めた。冒頭で呪いが提示され、それを解くために「人間」の三きょうだいが奮闘する展開。「人間」という言葉の意味をひっくり返す手並みが鮮やかで、勝手に描いていた「巨人」イメージが、途中でものすごく変わった。少し気になったのは、「巨人」たちのかかわり方があくまで部分的だった点。呪いの一件と当面の課題の解決までで締めるのは、物語としてのまとまりはいいものの、ダムの件で示された「巨人」の脅威の解決にはなっていない。そこに触れずに「巨人」の良心に頼った終わりでいいのかな…と思った。
    表紙絵の、なんともいえないうら寂しさがすてき。

  • ジョーンズの作品は2作目だけれど、この人の作品はユーモアが特徴なのだな、と感じる。
    面白かった。さまざまな伏線を張ったストーリーもですが、種族を越えた交流を目指すというテーマが面白かった。「人間」同士、わかり合える道がある可能性があるという、その可能性を模索する主人公たちの、あの手この手の工夫が面白い。

  • ケルトの雰囲気たっぷり。
    みごとな細工を施された黄金の首環をめぐって。
    古代ケルトの伝承のような物語かと思っていると、意外に現代的な要素が入ってくる。
    子供扱いされていた少年達が異なる人種と出会い、勇気と誠意を持って、行動していく。

    緑の丘に囲まれた霧にかすむ湿原。
    「人間」と「巨人」、そして水の中に棲み不思議な変身能力のある「ドリグ」が住んでいた。
    人間の幼い兄妹オーバンとアダーラが二人だけで湿原を渡っているとき、ドリグに出くわして、なりゆきでオーバンはドリグの首環を奪ってしまう。
    見たこともない凝った細工のされた緑金の首環。
    ドリグは首輪に死に際の呪いをかけ、その呪いが長い間、湿原で生き続けることになるのだ…

    長じてアダーラは、賢女と呼ばれる美しく賢い娘に育つ。
    なんとか呪いを解こうと勉学に励んだせいもあった。
    兄妹の住むオト塚は、呪いのために不運に見舞われ、オーバンは不機嫌な大人となってしまったのだが。
    ガー塚で英雄と呼ばれる若者ゲストは、アダーラに恋をして、三つの難行に挑むが、結局さらってきてしまう。
    そして3人の子供達に恵まれた。

    長女のエイナは先見の能があり、正しい質問をされれば予言することが出来る。
    しかも弟のセリには遠見の能があり、質問されれば物がどこにあるかを教えられる。
    長男のゲイアにはそういう才能がなく、自分には何の取り柄もないと思いこんでしまう。出来ることは一生懸命やったので、いつしかそれが認められているのだが、そのことにも気づかないままでいた。
    あまり似ていない父親と理解し合えないでいる少年の気持ちが丁寧に描かれていて、共感できます。

    オト塚がドリグに襲われ、オーバンら一族がガ-塚に転がり込んできて、住み込むことになる。
    一体何が起こったのか?
    巨人の住む家を時々覗きに行っていたゲイアは、二人の子供と知り合う。
    湿原はまもなく水に沈むという話に驚く。
    その近くの川にはドリグの子供も来ていて、しだいに助け合うようになる。
    種族の違いを乗り越えて、湿原を覆う呪いを解けるのか?

    著者は1934年イギリス生まれ。
    オックスフォード大学ではトールキンに師事。
    結婚後、3人の子育てをしながら小説を書き始める。
    40冊以上の作品があり、英国ファンタジーの女王とよばれる。
    この作品は1976年発表の初期作品。
    そのせいかストレートな内容で、わかりやすい方だと思います。
    書き込みは堅実で、さすが力量を感じさせます。

  • 3つの種族が暮らす湿原、其々の種族に訪れる危機を救おうとする少年たちの物語。

    物語の展開がさすがファンタジーの女王という感じがした。湿原に住む3つの種族のうち、最初にクローズアップされたのが人間とドリグだ。こう書かれると、私たち人間がもちろん人間の立ち位置にいて、<言葉>や<念>など不思議な力を持っている世界なんだと素直に読んでしまうが、間違いである。私たちはこの世界の人間ではない。私たちは身勝手に湿地をダムと変化させてしまう巨人なのだ。そのことが分かるのは物語の後半になってからなのだが、それまでは不思議な世界の住人になった気持ちで読むことができる。主人公は優秀な姉と才能をもった弟、英雄の父、賢女と呼ばれる母を持つのに何の取り柄もないと感じてしまう少年ゲイアだ。くよくよ悩む彼だが、同じように父親と分かり合えないそれぞれの種族の長に近い位置にいる巨人のジェラルド、ドリグのハフニーと友達になり、首環の呪いを解くことになる。
    結局ゲイアにも才能が開花するので、無力な少年が友情で世界を救ったという美談には持っていかなかったところが微妙にファンタジーではない感じがするが、親と理解し合えない、親を否定したくなるという思いを越えて成長する姿が何だかまぶしく見えた。
    冒頭に述べた自分の種族が何であるかの視点の切り替えが鮮やかで、その点が一番印象に残った。

  • 大好きなジョーンズの作品。この話では特に主人公の男の子に共感して、一層お話に引き込まれた。本当は私よりずっと勇敢だけど。
    ジョーンズの中では結構ストレートだけど、やっぱり仕掛けと種明かしが散りばめられている。
    「指輪物語」を彷彿とさせる物語。でも、ずっと身近。とても魅力的な3種族の三つ巴のおはなしで、立場の違いから生まれる誤解や、ものの見え方の違いについての物語かな。

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著者プロフィール

1934-2011。英国のファンタジーの女王。映画『ハウルの動く城』の原作者。

「2020年 『徳間アニメ絵本39 アーヤと魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品

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