戦火の三匹: ロンドン大脱出 (児童書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198640507

作品紹介・あらすじ

1939年9月、英国がドイツに宣戦布告すると、ロンドンに住む12歳のロバートは、9歳の妹ルーシーと共に、デヴォン州でひとり暮らす祖母の元へ疎開することになった。ペットの犬バスターとローズ、猫のタイガーは、近所の家に預けられたが、その家の主人はペットを邪魔に思い、3匹を安楽死させようとする。危機を感じたバスターたちは難を逃れ、ロバートたちがいる遠いデヴォンを目指して歩き出した…。戦時下の動物たちの姿を描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦初期のイギリス。二匹の犬と一匹の猫が、飼い主兄妹の疎開先を目指して旅に出る。
    タイトルと粗筋から、三匹のロードノベル的な物語なのかと呑気に思っていたがとんでもなかった。戦時下のシビアさ…疎開先でのロバート・ルーシー兄妹を取り巻く環境の厳しさ、安楽死を余儀なくされるペット達の末路など、丹念に描き出す。今更ながら知る当時の状況に愕然とし、いつの時代も人間の都合でペットの命は軽んじられるのか…とうなだれる。
    とはいっても物語自体は決して暗くはない。三匹のキャラが立っていて、とにかく犬らしく猫らしい。動物の生態をよく知っているからこそ描ける生き生きさ。一体どうやってロンドンからデヴォンまでの長い距離を移動できたのか…そこは彼らの勇気と知恵、そしてさり気なく彼らをサポートしてくれる人々との出会い。そんな出会いを引き寄せたのも、ひとえに彼らの人柄…ではなく犬柄?猫柄?ゆえだろう。様々なピンチを乗り越え逞しくなっていく三匹の姿に、胸が熱くなる。
    様々な伏線が回収されていくラストは気持ちよかった。苛酷な状況下だけど、そんな中でも互いを思いやる家族、友情の絆の強さにぐっときた。
    ウェットすぎず、重すぎず、ほどよく明るくて物語としてきっちり面白い。でも、問題提起をしっかりしてくるミーガン・リクス作品にすっかり魅了された。未訳の作品も、早く日本で紹介して欲しい。

  • 1939年イギリスがドイツに宣戦布告するとロンドンから子どもたちを疎開する人々が増えた。ロバートとルーシーのふたりも祖母の元に疎開することとなり、両親も戦争に備え空軍基地や船上病院での勤務につくために、ペットの三匹を近所に預けることとなった。しかしそこの主人によってペットたちが処分されそうになった時、三匹は命からがら逃げ出すのだった。

    第二次世界大戦下でのイギリスの様子を、疎開する子ども、都会に残る子ども、その親たち、そしてペットの動物たちの目を通して書かれています。そこには戦争を前にして40万匹以上のペットが安楽死させられたという史実があります。
    逃げ出した三匹ジャックラッセル犬のバスター、ボーダーコリー犬のローズ、猫のタイガーはローズの帰巣本能を元に旅をすることになるのですが、この三匹の個性が物語を引っ張っていきます。
    イタズラ好きで好奇心いっぱいのバスター、真面目で慎重なローズ、マイペースなタイガー。それぞれの見せ場も用意されており、三匹の旅を彩っています。三匹は擬人化することなくあくまで犬猫として書かれています。そこは描写の巧さと言いましょうか三匹の内面に入り過ぎず、少し離れた位置から三匹の様子が書かれているのです。そんな三匹の行動から三匹の気持ちが想起され共感を生むことになります。そして読者も三匹と共に旅をすることになるのです。
    そんな三匹と並行して人間の様子も描かれます。疎開先での人間関係、先の戦争の悲しみのために奇行を繰り返す祖母、戦争のために犠牲となる動物とそれを助けようとする人の活動。それらが組み合わされ戦争という重いテーマを扱いながらも温かさとユーモアにも溢れた作品となっています。

  • ペットを飼いたい、もしくは飼っている子どもに読んで欲しいお話。
    第二次世界大戦当時のイギリス。そこに暮らす子供達は空爆から逃れるため、田舎へ疎開していった。そしてペットたちも避難を迫られた。その避難先は、安楽死。空爆や飢え、怪我やドイツ軍の毒ガスにやられて死んでしまうのなら、安楽死したほうがよいと考えられた。合計75万匹のペットが安楽死されられ、この数値は第二次世界大戦中に亡くなった英国の民間人の死者数の12.5倍を超えるそうです。人間の勝手な営みで、動物も多くの命を失いました。
    空爆を逃れるため、別の家に引き取られた2匹の犬と1匹の猫は、ある日その家の人に安楽死施設へ連れて行かれます。
    その施設から逃げ出し共に元の飼い主のもとへ旅を始める三匹。テーマは重厚ですが、三匹がそれぞれの性格でのびのびとユーモアも交えながら協力していきます。
    犬や猫を擬人化することなく描かれているので、大人も楽しめる一冊です。

  • 第2次世界大戦直前の英国、ドイツの宣戦布告によって子ども達は田舎へ疎開することになった。ロバートとルーシーも、ペット(トラ猫のタイガー、ボーダーコリー犬のローズ、ジャッククラッセル犬のバスター)を母親の友人宅に預け、おばあちゃんの家に移る。
    ところが、おばあちゃんの様子は変だし、預けた動物たちも姿を消してしまって……。

    バラバラになってしまった家族と動物たちの絆、戦時中の人々の動物たちとの交流や別れを描く。

    ストーリーにいくつか無駄がある点を除けば、感動の作品。
    タイガーは、チャーチル首相の猫になるエピソードは必要なかったでしょうし、列車のコンパートメントで同乗したジョーも、お父さんの同僚なのにその後何の展開も生まない。
    シルビア婦長が受け取ったヘレン宛の電報(訃報?)は一体なんだったのか?
    さらに、最後にいきなりお父さんが登場するあたりには突飛な印象を受ける。

    タイトルは「戦火の……」ではなくサブタイトルの「ロンドン大脱出」の方が適してはいないか。この三匹も、軍隊にいるお父さんを除いた家族も、戦地にはいなかったのだから。

    戦時下の人々の心情、動物たちの知られざる悲劇や活躍を細やかに描いていて、共感できる。

  • 第2次世界大戦時のイギリスで、犬2匹と猫1匹が旅するというお話です。

    「3匹荒野を行く」的なものかと思いましたが、この本では疎開した飼い主の子どもたちを初めとした人間たちの話にウエートがかかっているようです。

    イギリスではナルパックが犬猫を救っていたのかと思っていたが、この活動を快く思わない人々も多く、また飢えや怪我で死なせるよりはと75万匹が安楽死させられてたということも驚きです。
    これに比べても、平成25年度において13万匹近くが殺処分されている日本は異常としか言いようがないですね。

  • こんぴら狗を思い出すアニマルロードムービー。
    世間的に何が正しいかはそこがどんな世間かで決まる。
    私は戦争を経験していないし欧米人でもないのでこの時代のこの舞台の人々の行動を一概に非難はできない。
    飢え死なせたり敵国の作戦に使われるくらいなら責任持って安楽死させるというのも一つの正しさだったのだと思う。
    その世間的個人の正義が大きな残酷に繋がってしまったことは悲しく二度と起きてほしくない歴史である。
    信念的に何が正しいかは世間に関わらず決められる。
    私は、同じ状況になったときに、彼らを守りたいと思える人間でありたいと思うね。

  • ロンドンに住むロバートとルーシーは、戦争が始まったため、デヴォン州のおばあちゃんの家に疎開することになった。お母さんも看護船に乗り込み、お父さんは軍隊へ。そのため、飼っていた犬2匹と猫1匹を預けることに。しかし、預け先の主人が心ない人間だったために、3匹は殺処分施設に連れていかれ……。

    戦争中の疎開の物語ではあるが、主として動物のかしこさということについて語られる。だからといって、動物に人間の言葉をしゃべらせるなんていうこともなく、ひじょうにうまく動物の行動を描いていると思う。第2次世界大戦中の悲劇については様々あるが、動物園の動物だけでなくたくさんのペットが殺処分されたということについては初めて知った。

  • 戦争の犠牲になるペット
    ペットが自分の意思で、飼い主の疎開先まで大移動

    実話?だったらすごいなー

  • 戦争で人間は人間だけでなく動物をも殺す。

  • 第二次世界大戦中のロンドン、田舎の祖母の家に疎開することになった兄妹。二人のペット2匹の犬と一匹の猫は、その間ロンドンの知り合いの家にあずかられるが、その家の主人は動物が嫌いで動物シェルターに連れていかれる。どうにかそこから逃げ出した3匹は、兄妹を探しに田舎へ歩き出す。

    大事なペットの運命から戦争の悲惨さを考えさせる。

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著者プロフィール

1962年ロンドンに生まれる。学習障害児の教育法を学んだ後、教職につくが、その後アメリカ、ニュージーランド、シンガポールなどで暮らす。現在は英国東部在住。

「2015年 『戦火の三匹 ロンドン大脱出』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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