12歳で死んだあの子は (児童書)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198648930

作品紹介・あらすじ

彼は12歳で死んだ。
ぼくたちは、彼のことなど忘れたように
それぞれの中学へ進んだ。
だけど今、ぼくは知りたいと思うー
彼はいったいどんな子だったのか、
何を考えていたのか…。

小学校の卒業まぎわに
病気で死んだクラスメートをめぐり
死とは、友情とは…
さまざまな問いに揺れる
三人の14歳を描く
心に残る物語。

『ハルと歩いた』の著者が贈る感動の1冊。

中二の秋、
小学校高学年のクラスの同窓会があった。
だれも「彼」のことは口にしなかった…
小六の三学期に病気で亡くなった、
鈴元育朗のことは。

お墓はどこにあるの? 
もう一度みんなで集まって、お墓に行こうよ…
鈴元の親友だった小野田と、
仲がよかった女子の篠原と三人で、
「もう一度鈴元に会いに行く会」を計画する
洋詩だったが…?

感想・レビュー・書評

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  • 小学校の卒業式を前に病気で死んだ友達未満の鈴元くん。中2の同窓会を契機に須藤洋詩はクラスメイトに呼びかけ彼の墓参りを計画する。
    …という粗筋から想像されるドラマチックな展開もミステリー要素もホラー風味も全くない地味な物語。主人公である須藤くんが、マイペースでしみじみと佳い。はじめて身近で起こった死をうまく消化できずに二年間もほったらかしにしていた彼とそのクラスメイトが、それぞれ違う角度から鈴元くんに心を寄せていく様子がじっくり描かれる。

    こういう距離感の死を題材にした児童書ははじめて読んだかも。「死に出合ったとき、心をよそに置いたりしない」の、大人になっても難しいよね。

    なお、小学生、さすがにスタンダールは読まんだろう(高見順とかも)など、若干つっこみどころは多く、対象年齢であろう子どもに響くかどうかは、ちょっと判断保留。


  • 12歳で、小学校卒業間際に他界したクラスメイトの男の子。
    彼とあまり親しくなかったはずの主人公が、その彼の喪失と、重なっていた時間に向き合って、同級生たちとの墓参りの計画を立てる……

    私はクラスメイトを在学中に亡くした経験は無いけれど、読みながら、20代の半ばで亡くなった小学校時代のクラスメイトを思い出していました。
    亡くなったのでなければ滅多に思い出すこともなく、そのまま記憶の中に埋没してその他大勢の出会った人たちと同じ、薄れゆく存在だったかもしれないのに、死という衝撃で、その人の輪郭は何度もなぞられて、強い存在感を記憶の中で作り上げていく。
    それは亡くなった人にとって幸せなのか、それとも忘れられても長く生きたかったか、人にもよるだろうし、わかりませんけども。

    この話は、作者が実際に経験したことを元に書いているそうです。
    お墓参りも、実際に同様に行われていたのでしょう。
    作者が自分の感情に直接向き合って、思考して、物語にくるんで言語化している。
    だから主人公たちの感情に嘘が無いし、児童書ではあるけれど、一人の大人が、自分の中の子供だった頃の自分を掘り起こして書き上げた、ひとつの真実なのだと思います。

    出てくる子供たちが自分の感情の言語化上手すぎないか(それが出来る人間は意外に多くないそうです)、と思いましたが、皆附属小学校で、中学受験の為に励んできた子たちなので、そういう作文の訓練も公立の子たちより受けてきている、地頭のいい子たちなんだろうなと納得しました。

    読んでて、人によっては不自然に思う部分があるかもしれないけれど、自分が見えている世界は実は狭く、世界には本当は色んな人がいて、そして子供は大人が思うよりものを考えている。
    この物語には大きな波もなく、静かな悲しみ、一人一人が向き合っている同級生の死、子供を亡くした家族の長い喪失の日々、思春期の子供たちが想う「死とは何?」という答えの出ない問い……  が、わかりやすい言葉で書かれているだけですが、色んな心が詰まっていました。
    最近本を読むのが遅くなっている、読書の筋力低下している私ですが、これは短い話なのもありますし、続きが気になり、さくさく読みました。

  • クラスメイトが死んだのは、筆者の実体験だそうです。そして、みんなで彼のために計画をたてたのも。
    少し盛り上がりが欠けますが、リアルで胸に迫るものがありました。

  • 小学校の同窓会を機に再会した同級生3人。それぞれ別の中学へ進学していたが、12歳の時に病気で亡くなった同級生のことを思い出す。

  • いいことが書いてある本だと思う。でも、つまらない。
    国立大学附属の小学校の生徒が卒業間際に白血病で死んでしまう。今は中二となり、受験して附属中学に行った者、私立に行った者、落ちて公立に行った者と進路は分かれたが、同窓会をきっかけに、公立進学の主人公が、亡くなったクラスメイトの死を受け止めていないことに気づき、墓参りを思い立ち、呼びかけを始める。
    元クラスメイトたちのそれぞれの思いや、亡くなった少年との関係が描かれてはいるのだが、薄っぺらいというか、ありきたりというか、心に響いてこない。もっと上手い作家なら、登場人物たちの個性を描き分け、家庭や学校の事情を盛り込み、共感させただろう。あるいはそれぞれの登場人物たちの言動や思い出から、亡くなった少年の人物像がくっきりと立ち上がってくる、ということもあるだろうと思う。
    特に主人公の人となりがあまり伝わって来ないのが、良くない。
    そもそも、墓参りを思いつくかな、中学生が。自宅に行って遺影に花を手向ける、ならやると思うけど。

    教育上問題のあるような場面や言葉は一切ないが、子どもに薦めたいかと聞かれたら、薦めないと答える。なぜなら、読書はまず楽しいものでなくてはならないから。内容が悲しいものでも、不幸を描いていても、読んでいる間、読むことが悦びであるから読むわけで、いい内容であったとしても、読んでいる間楽しみを感じられなければ、本を読むことを好きになれるだろうか。これは、物語だけでなく、ノンフィクションの本にも同じことが言えると思う。
    携帯デビューしてないからテレカ(って‥‥中学生知ってる?)使うとかいう表現が出てくるから、時代設定が10年位前なのかと思って読んでたら、後でスマホも出てきて、しかもメアド交換って??
    イマドキの中学生はメアド交換しません。
    「福井さんはしっかりしていたからな。いいところに進学しただけあるよ。」(P115)って、親のセリフならわかるけど、中学生がナチュラルに言う言葉じゃない。オジサンが書いてるんだなあって、感じがヒシヒシと。
    そもそもの内容が、ターゲット層を惹きつけるものなら無視してもいいけど、そうじゃないなら、ディテールには細心の注意を払ってほしい。

  • 附属小から附属中への試験に落ち、公立中学校に通っている須藤洋詩

    中学2年生の秋、クラスの同窓会でひさしぶりにあった同級生と楽しく過ごすが、6年生の冬に病死した鈴元育朗のことを思い出し落ち着かなくなる

      なんで、ぼくは鈴元のことを忘れていたんだ?
      なんで、だれも鈴元の話をしなかったんだろう?
      みんなもう忘れてるのか……?

    鈴元の墓参り=“鈴元に会いにいく会”を思い立ち、同級生に声をかけてまわる洋詩と小野田、篠原の3人に対し、当時のクラスメイトは賛成、反対、無視……

    友だちの死に直面し、振り返り、問い直しながら揺れ動く子どもたちの繊細な心を丹念に描き出す

    《この物語は、年齢などは少し変えてありますが、ぼくが実際に体験したことをもとに書きました。》──「あとがき」

    『ハルと歩いた』の著者が贈る感動作、いい本をつくる徳間書店から

    小学6年生に読んでほしい、読めてほしい一冊

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著者プロフィール

1960年奈良生まれ。

「2023年 『夏に、ネコをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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