さよならのためだけに【徳間文庫】 (徳間文庫 あ 55-1)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198935412

感想・レビュー・書評

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  • 少子晩婚化に悩む先進諸国は結婚仲介業PM社を国策事業化していた。PMの画期的相性判定は、男女の相性を遺伝子レベルで判断して格付けする。多くの人が子供の頃からPMに登録し、相性のA以上の相手を探して結婚する。中でも1%の確率である特A判定で結ばれた男女の離婚率は0%。PM社に務め、その判定を信じて疑わない水元は、長峰月という女性と特A判定を得て、結婚。しかし、ハネムーンの後で彼らはどうしようもない違和感、どうしても相手を受け入れられない気持ちを抑えきれずに、離婚することを決意。だが特Aの彼らが離婚するためにはとんでもない試練が待ち受けていた。

    本来あり得ない社会なのに、これは近未来の日本の姿ではないかと思えるほどにリアルに思えた。PM社の持つような技術が開発されれば、本当に国策事業化されるのではないだろうか。

    安倍晋三首相の著書『美しい国へ』を読んだことがあるが、そこには安倍氏が少子化対策として「家族をもつこと、子供をつくることが素晴らしいと多くの人が思うような社会にすべき」という趣旨のことが書かれていた。それを読んでこの人は少子化の原因を全く理解していないのではないかと思ったものだ。ところが、これに似た主張をする人は少なくない。某商社のトップがこれに似たことを、もっと直接的な表現で(少子化は子供を欲しがらない人のせいだというような内容)、新聞記事で発言していて失笑したが、特に、子育ての苦労も、今を生きる若者や女性の現実も、何も知らない年配の地位のある男性に多いように思う。結婚しない・子供を持たないことを選ぶのはあり得ない、間違っているという、非常に狭い考え方の持ち主たちだ。

    本書はまるで、彼らが多数派になってしまったかのような恐ろしい世界だ。とは言え、一面では進歩的な社会でもある。男女同権であり、男性の育休は当たり前、待機児童問題はなくなり、女性が働き続けられるのが当然の時代。極めつけは、不妊治療が発達し、誰でも望めば子供を持てる時代。

    これだけ書くと、現代の少子化の要因が全て解消された素晴らしい社会のようだが、そのせいで自ら子供を持たない人生を選択しにくくなる。非国民と言われる。そんな世の中だ。実にリアルで、まるで現在の自民党政権が目指す社会のようにすら感じる。しかも、PMの本質、その正体たるや。おぞましい。

    長くなったが読みながらそれだけのことを考えた。ラストはハッピーエンドにしようと思ったら、この終わり方しかないように思う。しかし、私としては2人が処刑されるバッドエンドでも受け入れるつもりであった。それくらい、考え始めると重すぎる問題提起であった。

  • 少子晩婚化に悩んだ先進諸国が結婚仲介業を国策として打ち出し、それを一手に担うPM社。特Aでマッチングした二人は新婚旅行から帰ってきた日に離婚を決意する。「禁離婚」となった社会で、なんとか離婚にこぎつけようと友達や親を巻き込んでのドタバタ劇。描写が説明臭い感じもあり、展開は大雑把な感じを受けました。それでもなんだかんだで収まるところに収まって読後感は悪くないです。

  • 遺伝子レベルで相性のいい相手を探し、結婚するのが当たり前の日本。その中でめったにない特Aレベルの相性の2人が結婚直後に相性最悪を互いに感じ離婚しようと画策。展開はスタンダード。でも本当にそんなシステムがあったら楽だろうなーと思った。

  • 遠くない未来、こういうサービスは出てくるよね。今の結婚相談所って成婚してからのその後のことまで追いかけてるのかな

  • 我孫子武丸さんは
    街シリーズ、殺戮にいたる病に続いて
    4作目。
    前作と比べると軽く読める
    2時間ドラマみたいな内容。
    結婚=出産=幸せ!!
    みたいな思想の人が
    大多数な世界が、
    今後ありそうで怖い。

    2016.9.2 読了

  • だめだ、別れよう
    明日必ずね
    ハネムーンから戻った夜、水元と妻の月ルナはたちまち離婚を決めた。しかし、少子晩婚化に悩む先進諸国は結婚仲介業PM社を国策事業化していた。画期的相性判定で結ばれた男女に離婚はありえない。巨大な敵の執拗な妨害に対し、二人はついに、別れるための共闘、をするはめに
    孤立無援の戦いの行方、そしてPMの恐るべき真の目的は?

  • 話としては面白い。かつて、国益としての結婚や出産の意味と、個人としてのそれとのギャップに思いを馳せたこともあったので、そういった意味でも楽しめた。
    ただ、なんだか物足りなさも感じて、うーん、こんなもんかな、と言った読後感だった。

  • 展開なさ過ぎてつまらなかった。
    これで400ページは長すぎ。

  • 自分と相性の良い人間を遺伝子から決定し、その相手と結婚する事が間違いなく幸福に繋がるという価値観を誰もが持っているという近未来SF。

  • 2016年1月24日読了。
    2016年38冊目。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。京都大学文学部中退。在学中は推理小説研究会に所属する。89年、『8の殺人』で作家デビュー。主な作品に、『人形はこたつで推理する』にはじまる「人形」シリーズほか、『殺戮にいたる病』『ディプロトドンティア・マクロプス』『弥勒の掌』『眠り姫とバンパイア』『警視庁特捜班ドットジェイピー』『さよならのためだけに』『狼と兎のゲーム』『裁く眼』『怪盗不思議紳士』『凜の弦音』『修羅の家』などがある。小説の枠を越えマルチに活躍し、ゲームソフト「かまいたちの夜」シリーズの制作でも知られる。

「2022年 『監禁探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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