- Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198937416
作品紹介・あらすじ
時は天平宝宇年間。藤原清河の家に仕える高向斐麻呂は14歳で大学寮に入寮した。ひそかに恋心を抱いていた清河の娘・広子のために、唐に渡った清河を迎えに行きたいという思いからだった。大学寮で学ぶのは儒学の基本理念である五常五倫。若者たちは互いに切磋琢磨しながら、将来は己が国を支えてゆくという希望を胸に抱いていた。だがそんな純粋な気持ちを裏切るかのように、政治の流れはうねりを増してゆく。第17回中山義秀文学賞受賞作品。
感想・レビュー・書評
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奈良時代が意外と戦乱の時代だったことを知った作品です。澤田瞳子さんの作品は、10冊以上読んでますが、これがデビュー作(だったと思う?)とは思えない傑作で、まさに「栴檀は双葉より芳し」だと思います。
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奈良時代の大学寮で学ぶ、良民の高向斐麻呂の青春。個性的な学友たちとの爽やか青春物かと思いきや、時代は恵美押勝の乱前後。激しい勢力争いで、世の中は不穏な空気に。大学寮の存続や卒業生の進路も危ぶまれる。
また、奴婢の少年赤土と学問を通した友情は、身分差ゆえに思わぬ方向に転がる。
いつの時代も政治や戦争で、市民の生活や人生は振り回される。 -
今の世であれば、まぁ、魔性の女はいるだろうし、政治の世界で足の引っ張り合いも…うん、あるな…。
それが生死には直結してない…と信じたい。
けど、当時はいた大学出身の儒学を学んだ志の高い官吏が…、いや、きっと今の時代もいるはず。
一本芯の通った揺れる事ない、例え揺れたとしても戻ってこれるような志が学べるのであれば、儒学を学んでみたいなと思った。 -
傍目には国粋主義だ宗教狂いだ利己主義だと見えるが、儒教・仏教・国家・情、何を大事に思うかだけの差であり誰も悪者ではないという立場がとても心地よい。
ただ、孝謙天皇の悪女色強すぎるのが気になった。この点、坂口安吾の道鏡は誰も悪者にしない視点が好きだな。
758年淳仁天皇即位から恵美押勝の乱を経て称徳天皇重祚した後ぐらいまでの、学生が下級官僚になってからの人生あれこれ。
階層社会厳しい奈良時代設定というだけで内容は現代そのもの、政治等世の中に翻弄され、己の正義に縛られる。熱血漢と知識派との友情も歯がゆく、温かい。 -
(Yodobashi.com電子書籍版)
基本的な歴史を知っているので若干つらいものはあるが、途中からはぐいぐい引き込まれた。さて、下巻は? -
主人公と赤土は勿論、大学寮の魅力的な登場人物たちにあっという間に引き込まれた。こんなに夢中になって寝食も惜しんで読みたいと思った本は久しぶり。