きみと暮らせば (徳間文庫 や 38-3)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198940508

作品紹介・あらすじ

十年前、陽一の母とユカリの父が結婚し、二人は兄妹になったが、五年前に両親は他界。中三のユカリは義母のレシピ帳を参考に料理し、陽一は仕事で生活費を稼ぎ、支えあいながらの二人暮らし。ある日、庭先に猫が現れる。二人は猫を飼い主らしき人へ届けに行くのだが――。のんびり屋の兄と、しっかり者の妹が織りなす、陽の光差すような、猫もまどろむほのぼのあったかストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 両親が再婚同士で、陽一とユカリは10年前に兄妹になった。けれど5年前に両親が交通事故で他界し、2人きりに。
    当時21歳の兄は10歳の妹の面倒を見る決心をして都心の大学を中退。地元で就職先を見つけ働き出した。

     それから5年経ち……。
     相変わらずトボけた兄としっかり者に成長した妹の1年を追った連作短編ホームドラマ。
             ◇
     春先の日曜午後のこと。
     洗濯物を取り込もうと庭に降りたユカリは、ドウダンツツジの傍にうずくまるまん丸の物体に気がついた。よく見ると牛のような白黒模様の猫だった。

     その愛嬌のある様子にうれしくなったユカリは、急いで兄の陽一を呼びに行った。テレビでドラマを見ていた陽一を無理に引っ張ってきたものの、陽一の反応は「なんだ猫か」とすげない。
     そんな陽一を意にも介さず大きな欠伸をするその猫が妙に気に入ったユカリは、お昼を食べているときも丸くなったウシ柄の猫のことを思い出していた。
        ( 第1話「猫と兄妹」) 全6話。

         * * * * *

     久しぶりにほのぼのしました。

     血の繋がりがない兄妹ですが、あだち充『みゆき』のような禁断(?)ラブコメディでないところがよかった。
     また兄妹ともそれぞれ「シスコン」「ブラコン」ぽいところも見せてくれているのも、微笑ましくてよかった。

     もちろん設定にラブストーリーにはならないような工夫がされていたからで、例えば……。

    ・兄妹の年齢差11歳。
    ・出会いは兄16歳、妹5歳。
    ・兄は21歳の時に、まだ10歳だった妹の保護者になる決意をする。
    ・いつまでもトボけた兄に対し、妹は頭がよくしっかり者で口が立つ15歳に成長。

     など、陽一がユカリの成長を喜び見守るというスタンスを確立してから物語をスタートさせています。
     血縁関係になくとも真の兄妹として、互いを思いやりながら暮らしていける。八木沢さんの「ほのぼのホームドラマ」構想が好もしく感じられました。

     登場人物も好人物ばかりです。

     特に、ユカリの親友のハセっち。
     兄妹に絡む重要な役どころで、ユカリの支えになっています。ユカリとハセっちともに群れるのが嫌いで女々しくなく、クラスの俗物系女子から浮いても気にしない芯の強いところもそっくりです。まさにベストフレンド!

     そして、ユカリが所属するクラスの副担任を務める鹿野先生。通称シカちゃん。
     この少々そそっかしい若手女性教師は、実は陽一の中学時代の同級生でした。ユカリの保護者懇談で再会した陽一とシカちゃんは、同窓会を経てデートする関係まで進展。( 詳しく描かれないのが惜しかった。) その後がとても気になります。
     このシカちゃん。兄妹それぞれが悩みに押しつぶされそうなとき、絶妙なフォローをしてくれるポジティブな女性で、物語の展開上とても重要な役割を担っています。

     それから斜向かいの家に独りで住む、優しく大らかな好々爺の宇佐美さんも、ユカリをほんわか包み込むようないい味を出してました。

     他にも、陽一の後輩社員の浦上くんや、偶然知り合ったムサシとマリエという小学生コンビも、場面切り替え役として活躍してくれています。

     さて、中心となるのはユカリの成長物語なのですが、かつて夫とまだ幼いユカリを捨てて男と駆け落ちしたユカリの母親が登場する終盤が大きなポイントでした。
     母娘の情にほだされたユカリは陽一に黙って何度も会いに行ってしまい、母親から自分のもとに帰ってきてもらえないかと、控えめにですが持ちかけられます。 ( 母親は駆け落ち早々に男に捨てられ、以後、後悔と反省の日々だったそうです。)

     悩んだ末にユカリが出した結論は?
     というクライマックスが、唯一ハラハラするシーンでした。

     兄妹がともに暮らす生活は、いつの日か終わりがきます。それはユカリが大学に進学するときなのか、就職するときなのか、わかりません。その頃には義姉もできているかも知れません。
     ユカリは母親との一件から、漠然とですが「その日」のことを考えるようになります。初めて自立を意識したと言えるでしょう。

     中3の春から公立高校入試当日までの約1年弱。もともとしっかり者のユカリが、大人の入口に立つまでの姿が瑞々しく描かれていて、読後感のよい作品でした。

     「花を見て根を思う人になれ」も名言だと思います。


  • 2人と1匹のかけがえのない「家族」の形。
    陽一お兄ちゃん、不器用だしかっこつかない時もあるけど、絶対頼りになるお兄ちゃんだ。ちょっと羨。

  • あたたかで よし

  • じんわりと心が温かくなる、優しい家族の短編集。
    タイトルの「きみ」は猫の種田さんなのかと思って読み始めたけれど、違っていた。けど、種田さんの溶け込みっぷりが逆にこの家庭の居心地の良さを表しているようで、反って良かったと思う。
    この二人が家族で良かった。

  • 「花を見て根を思う人になれ」
    いい言葉だー。
    血の繋がりのない兄妹のほんわかストーリー。
    あっという間に読んでしまった。
    一つ屋根の下で、結果的に兄と妹の恋愛ものになるのだろうか…と邪推してしまったけど、全然違ってホッとした(笑)

  • ほんわりします。

    内容は血の繋がらない兄妹が一軒家で暮らす話なんですが、そこに猫がやってきて、、、とこれもテンプレート通り。

    だけど、いやらしさがないのは、一つ一つのエピソードがきちんと積み重ねられてるからかな、と思います。

    キャラにも目新しい部分はなく、これといっての盛り上がりもないけど、まぁ、実の母が出てくるところがちょっとした緊張感かな、と。

    でも読後感は爽やかでした。

    もうちょい猫の出番がほしいところかなー。

  • 猫が可愛いというよりはお兄さん可愛い。浦上くんとのやりとりには毎回ほっこりさせられた。
    ユカリは芯の強い少女。素敵な女性になると思う。
    ユカリとお兄さんは同じ痛みを抱えた同士に見えた。

    • komoroさん
      止められません。
      更にx5です。
      どうでもいい異色で気色悪い愛人関係。
      小説化できますか?
      自主出版ですね。
      止められません。
      更にx5です。
      どうでもいい異色で気色悪い愛人関係。
      小説化できますか?
      自主出版ですね。
      2016/02/25
    • 9nanokaさん
      コメントのやりとり面白いですね笑。更に×6です。
      小説化は…サユリを妖怪にしてファンタジーホラーにするってどうでしょう?表紙はまんまサユリ...
      コメントのやりとり面白いですね笑。更に×6です。
      小説化は…サユリを妖怪にしてファンタジーホラーにするってどうでしょう?表紙はまんまサユリの写真にして目線だけ入れます。
      2016/02/26
    • komoroさん
      更にx7
      ホラーです。
      読みたくないけど中身が気になります。
      ハウステンボスの恐怖の館〔サユリハウス〕できそうです。
      更にx7
      ホラーです。
      読みたくないけど中身が気になります。
      ハウステンボスの恐怖の館〔サユリハウス〕できそうです。
      2016/02/27
  • 最後の数ページが無ければとても好みなお話だった。

  • ブログに詳細書きましたので、是非ご覧ください▼▼
    https://hodobochi.com/kimitokuraseba/

    ・心温まる小説を読みたい人にオススメ
    (原田マハさん好きな人は、ハマると思う)
    ・文章のタッチがやわらかい。
    ・登場人物のやさしさが、心温まる。
    ・読むと、身近な幸せに気づくことができる。

  • 本当の兄妹以上に兄妹だな。

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著者プロフィール

1977年千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業。「森崎書店の日々」で第三回ちよだ文学賞大賞受賞。同作品は映画化された。著書に「続・森崎書店の日々」「純喫茶トルンカ」「純喫茶トルンカ しあわせの香り」がある。

「2023年 『きみと暮らせば 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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