純喫茶トルンカ 〈新装版〉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198947514

作品紹介・あらすじ

扉を開けたら
奇跡が起きそうな予感がする。
そこは、
谷中という場所であり、
純喫茶トルンカなのだ。
――女優・南沢奈央

東京・谷中の路地裏にある
小さな喫茶店
『純喫茶トルンカ』を舞台にした
3つのあたたかな物語。
決まって日曜に現れる謎の女性と
アルバイト青年の恋模様、
自暴自棄になった中年男性と
かつての恋人の娘との短く切ない交流、
マスターの娘・雫の不器用な初恋――。
コーヒーの芳ばしい香りが
静かに立ちのぼってくるような、
ほろ苦くてやさしい“奇跡″の物語。
各所で反響を呼んだ傑作小説、
待望の新装版。(解説:南沢奈央)

日曜日のバレリーナ
再会の街
恋の雫
解説:南沢奈央

感想・レビュー・書評

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  • 過去に戻って、あの時こうすればよかったなあ...と後悔したりやり直したいことって、多かれ少なかれ誰しもあると思う。

    人によって大きさ回数は違うけれど、その後悔が澱のように少しずつ溜まってきて、さらに心の中に結構な穴を空けていたりして。
    普段は気が付かないフリをしているけど、ふとした瞬間その心の空洞に気付いてしまう時がある。

    この本に出てくる人達は、「再会」をすることで心の空洞を回復して、目の前に広がる明るい未来に一歩踏み出すことが出来た。
    「再会とは、人生における1番身近な奇跡である」
    絢子姉ちゃんの格言ですね。いや名言ですよね。

    レトロな喫茶店で、温かく少し苦味のあるコーヒー。話とその雰囲気がピッタリすぎます。ほっこりしました。出てくるみんなのその後も気になるので、次も必ず読もうっと。

  • 疲れていたとき書店で出会う。書店員さんが平台へ出す前段階のワゴンに並べられたこの本。癒されそうな装丁が目に入りすかさず手に取る。真新しい文庫本を捲るときのパリッパリッ…という微かな微かな音が好きです(めったに出会えないが)。まだ誰も捲ってない本。
    後悔を抱え、生きる希望を失いかけていたヒロさんの「再会の街」が印象的でした。トルンカに関連した人たちとの交流が、自分の人生について考え直すきっかけとなる。どんな今も受けとめて。
    偶然の出会い、運命の再会を、純喫茶トルンカが背中を押し、優しく見守ります。
    相手の本当の心の内など決してわかるものではないということ。相変わらずの生活は続き、うまく言葉にできない感情に押し流されることもあるけれど、結局のところどの道が正解なんてわからない。そう、事がうまく運ぶはずはない(そこから得るものは大きいと)、という良い意味での着地がじんわり伝わりました。
    路地の奥にひっそり佇むレトロで小さな喫茶店。
    このトルンカのようなお店でゆったりした時間の中、美味しいコーヒーを飲みながら読みたい本でした。
    昨日と同じ空なんてない。

  • なんだろう、こう心がほわっとなったというか、温かい飲み物を飲んだ後のほっとした気分になったみたいな。
    コーヒーの香りは大好きなのに、体質的にコーヒーがあまり飲めない私だけど、喫茶店でコーヒー飲みたいなぁって思った。
    スタバみたいな大きい店舗じゃなくてもっと近い感じのする喫茶店。
    でもコーヒー飲めないのにコーヒーの香りに包まれるなんて拷問だー。
    なんで皆コーヒー飲んでもお腹痛くならないの⁉︎

    • かなさん
      翠さん、こんばんは!
      私もこの作品読むつもりではいます。
      いつになるかはわからないけれど(^-^;

      で、私はコーヒーばかり飲んでい...
      翠さん、こんばんは!
      私もこの作品読むつもりではいます。
      いつになるかはわからないけれど(^-^;

      で、私はコーヒーばかり飲んでいます。
      翠さんはお腹痛くなっちゃうんですね…
      きっと私、図太くできてるんですよ、身体も心も(^-^;
      翠さんは、繊細なんだと思います。
      2023/09/19
    • 翠さん
      かなさん、おはようございます(^^)
      コーヒー飲めるかなさん、羨ましい!!
      コーヒーは魅惑の香りですね♡
      どうやら続編が出ているようなので、...
      かなさん、おはようございます(^^)
      コーヒー飲めるかなさん、羨ましい!!
      コーヒーは魅惑の香りですね♡
      どうやら続編が出ているようなので、気になる登場人物もおりますので続きを探して読もうと思っています。
      2023/09/20
  • ☆4.5

    東京・谷中の路地裏にある小さな喫茶店「純喫茶トルンカ」を舞台にした3つのあたたかな物語。

    コーヒーを飲みながら読みたくなるような、ほろ苦くて優しい奇跡の物語でした❁⃘*.゚

    絢子の数々の格言が印象的で、特に「再会とは、人生における一番身近な奇跡である」という一文がとても素敵だなぁと思いました。
    引き続き、続編も読み進めたいと思います!

  • 純喫茶トルンカの関係者を巡るオムニバス形式の小説。

    アルバイト店員、修一のもとに、前世で恋人同士だったと語る女性客が現れる。初めは不審に思うも、実は二人は子供の頃に会っていた。
    ま、トルンカのマスターの娘、雫が、亡き姉の恋人に告白したが会っていた、幼なじみの浩太の言葉で自分の本音に気づくなど、少し心がチクチクする、でもどこか癒されるストーリー。

  • 谷中銀座という、下町情緒が色濃く残る町の純喫茶トルンカには、口数の少ないマスターの淹れる美味しいコーヒーがあります。
    そして、過去にわだかまりを持った人たちが、コーヒーをドリップしていくかのように、心に溜まったそれらを抽出し除いていく、心温まる物語です。

    その過程で、本書の三篇それぞれに描かれるのは「再会」です。

    幼少期の辛い時期に一緒に過ごしたあの子、大切な人の娘、亡き姉の勝手の恋人

    "再会とは、人生における一番身近な奇跡である"

    人と人とが再び会うということ。それはお互いが過去に向き合って今を見つめ、新しい未来への道を共に拓く、ささやかな奇跡。

    人生にはほろ苦い出来事もたくさんある。
    それでも逞しく、人と関わって生きていく。


    終始、温かい気持ちで読み進められて、読後感は谷中というこの人情溢れる個性的な街に足を運びたくなります。

     

    そして、二篇目の中に出てくる格言が特に印象的でした。



    "人生とは出逢いであり、その招待は二度と繰り返されることはない"

    "成し遂げんとした志を、ただ一回の敗北によって捨ててはいけない" シェイクスピア

    "この世は素晴らしい。戦う価値がある"

    "いつも自分を磨いておけ。あなたは世界を見るための窓なのだ"



    じんわりと涙が流れる心温まる物語
    ぜひ読んでみてください。
    本書の第二弾もすでに出てるということを知り、さっそく買いに行きたいと思います!

  • 落ち着いた喫茶店でゆっくり読書したいなぁといつも思います。
    トルンカのようなお店が近くにあったら絶対通っちゃうだろうなと思いました。
    喫茶店トルンカのマスターのコーヒーを飲んでみたい。

    このお話の中で起きることって、日常生活のちょっとした変化だったり出会いだったりするんですよね。
    でもそれがとても温かくてちょっと切なくて心に残る。
    3編とも良かったけど、最後のマスターの娘、雫ちゃんの恋が切なかった。
    そして浩太、君はかっこいいな!

  •  谷中銀座商店街通りの細い路地を入った行き止まりに、その喫茶店はあるのでした。ゆったりと流れる時間と居心地のよい空間、是非行って美味しい珈琲を飲んでみたくなります。下町の情緒や佇まい、飾らない庶民が醸し出す雰囲気や温かさが、ホッと安心感を与えてくれるのも大きな魅力の一つでしょう。
     100p程度の3篇。マスター、娘、バイト、友人、客は、過去に囚われている人の心をほぐし、心の傷が癒されていきます。3篇とも内容に深みがあり、爽やかな読後感が得られます。

     女優の南沢奈央さんが、本書の解説に、また、サイトの読書日記に「通り道の純喫茶」と題して寄稿している文章も、ほのぼのと好感がもてます。
     谷中・根津・千駄木辺りを散策し、南沢奈央さんとバッタリ遭遇し…などと、妄想したくなる物語でした。

  • 喫茶店が舞台のストーリー。
    マスターが淹れるコーヒーが美味しそうで飲みたくなります。コーヒーを飲みながら読むのもいいかも。

  • 八木沢里志さんの本は初読みだが
    私が『純喫茶トルンカ』の存在を知ったのはいつだっただろう?
    4年前?5年前?いやそれ以上か…

    今では何がきっかけで『純喫茶トルンカ』を知ったのかは思い出せない。
    ただ、「読みたいのに読めない本」として記憶に残った。

    『純喫茶トルンカ』が刊行されたのが2013年のことで
    私がこの本を知った時には
    発売元の徳間書店でも「在庫なし」だった。

    八木沢里志さんの本は初読みだが
    私が『純喫茶トルンカ』の存在を知ったのはいつだっただろう?
    4年前?5年前?いやそれ以上か…


    今では何がきっかけで『純喫茶トルンカ』を知ったのかは思い出せない。
    ただ、「読みたいのに読めない本」として記憶に残った。

    『純喫茶トルンカ』が刊行されたのが2013年のことで
    私がこの本を知った時には
    発売元の徳間書店でも「在庫なし」だった。
    その後、『純喫茶トルンカ』は電子書籍のロングセラーとなり
    2021年度、徳間書店書籍部門の売り上げ第1位に!
    ということで、復刻!!!
    そんなこんな経緯があってようやく読めた本!

    3編の連作短編。
    第1編「日曜日のバレリーナ」は
    日曜日に現れる謎の女性とアルバイト青年の恋模様
    なんだけど…、彼女の口から
    『私達、前世で恋人同士だったんです』の一言が出てきたときには
    え?、この本、こんな感じの本なの?
    と、危うくリタイアしそうになった。
    でも、こんなに恋焦がれた本なのに、それはないわ!と読み進めた。
    結果、リタイアしなくて良かった!
    正直、「日曜日のバレリーナ」は個人的には微妙なのだが
    その後の「再開の街」、「雫の恋」は好みの話だった。

    <再会とは、人生における一番身近な奇跡である>

    これがこの本のテーマだろう。
    「再会」が人生を変えることがあるよなぁ…
    私も恩師との再会で人生の舵を大きく切った経験があるから。
    しみじみそう思った。

    最近、喫茶店・カフェを舞台にした小説が多いように感じる。
    私が最近、読んだ本だけでも
    ・今宵も喫茶ドードーのキッチンで(標野凪著)
    ・さよならも言えないうちに(川口俊和著)
    ・それでも旅に出るカフェ(近藤史恵著)
    ・伝言猫がカフェにいます(標野凪著)

    だけど、喫茶店・カフェを舞台にした小説、好きなのよねぇ、私。
    さて、お次はどんな魅力的なカフェに出会えるかしら。

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著者プロフィール

1977年千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業。「森崎書店の日々」で第三回ちよだ文学賞大賞受賞。同作品は映画化された。著書に「続・森崎書店の日々」「純喫茶トルンカ」「純喫茶トルンカ しあわせの香り」がある。

「2023年 『きみと暮らせば 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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