純喫茶トルンカ しあわせの香り 〈新装版〉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198948153

作品紹介・あらすじ

純喫茶トルンカは
人の想いが起こす
奇跡に満ちている。
――俳優:渡部豪太

\ 電子書籍の大ンロングセラー /
 \  読者の声に応えて  /
  \ 第2弾も復刊!  /


あなたにとって、しあわせの香りとは
なんですか——。
コーヒー香る『純喫茶トルンカ』で
繰り広げられる三つのあたたかな再会。
二十年間店に通う高齢女性・千代子に
よみがえる切ない初恋の思い出、
看板娘の幼馴染の少年・浩太が
胸の奥深くに隠す複雑な本心、
人生の岐路に立つイラストレーターの
卵・絢子の旅立ち。
ままならない今を生きる人たちを
やさしく包み込む。大人気シリーズの第二弾!

【目次】
午後のショパン
シェード・ツリーの憂鬱
旅立ちの季節
解説:渡部豪太

感想・レビュー・書評

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  • ☆4

    前作がとても良かったので、再び「純喫茶トルンカ」を訪れてみました❁⃘*.゚
    今作では千代子ばあちゃん、浩太、絢子の3人が主役となった3編の物語でした。

    前作に引き続き、今作でも人との繋がりが心地よい素敵な物語ばかりで、心がほっこり温まりました。(マスターが淹れてくれたコーヒーを飲んだら、もっとポカポカ温まるんだろうなぁと)
    また続編が出てほしい、大好きな作品です(*´˘`*)

  • 2023.6.1 読了 ☆8.8/10.0

    前作に引き続き、谷中銀座という人情味あふれる土地に根付く純喫茶を舞台に、前作で出てきた主要な人たちのアザーストーリーのような仕上がり

    シェード・ツリーとコーヒーの木の関係の話をたとえにした、幼馴染の浩太と雫、亡くなった雫の姉の菫(すみれ)のさらなる結束の話や、近くの花屋で働く絢子の前作に続く珠玉の名言の数々 - 例えば -

    〈友とぶどう酒は古いほど良し〉
    〈山は山を必要としない。しかし、人は人を必要とする〉
    〈バラは美しく咲くのではない、一生懸命咲いているから美しいのだ〉
    〈自分の道を進む人は、誰でも英雄〉


    しかし今作ではこの名言の数々では終わらない。

    主人公の絢子は言う。


    「どんなにたくさんの格言を知っていても、それらは所詮、借り物の言葉。大切な人に大切なことを伝えたいときには、なんの役にも立ちはしない」

    「旅に出て、もっといろんな世界を見てこよう。私には圧倒的に経験が足りない。経験しなければいけないことが、まだまだたくさんあるもっと世界に触れて、その手触りを肌で感じたい。
    見たいもの、触れたいもの、感じてみたいもの。私の知らないものがこの世界には、星の数ほど溢れている。いろんな格言や諺を頭にため込んで知った気になっていたけれど、私は何も知らないじゃないか。
    だけど、知らないことは恥ずかしいことじゃない。
    これから知っていけばいいのだ」


    そしてフリーの絵描きの彼女は旅に出る。
    そんな彼女の決意の旅立ちを、純喫茶トルンカに関わるたくさんの人が背中を押して応援してくれる。


    "このお店がなかったら出会えなかった人"


    そんな人との出会いは、当たり前なようで少ないのではないか。


    日常感あふれるタッチなのに、かけがえのない素敵なストーリー。


    どこかの街の、どこかの店で、誰かに惹かれて通う。
    そんなお店を自分も見つけたいと、そう思えました。

  • 第一弾『純喫茶トルンカ』の続編で
    こちらも電子書籍で大ロングセラーとなり復刻!

    待ちに待っての読了だったので
    第一弾の『純喫茶トルンカ』に関しては正直、ちょっと辛口評価になってしまったかも…(☆3をつけた)

    そして、第二弾の『しあわせの香り』は
    じーーーーーーーん。
    とても好きな本だった。

    『しあわせの香り』はこの3編。
    ・午後のショパン
    ・シェード・ツリーの憂鬱
    ・旅立ちの季節

    特に”シェード・ツリーの憂鬱”がよかった。
    「トルンカ」の看板娘・雫の幼馴染の浩太。
    第一弾ではちょっと軽いヤツ?
    だけど、ちょっと男気があったりする?みたいな存在だったけど…
    ”シェード・ツリーの憂鬱”を読んだら
    いやいやどうして、なんて純粋でいいヤツなの~!
    あのその抜けに明るい態度の裏にそんな想いが隠されていたなんて…
    俄然、浩太ファンになっちゃうじゃない~!

    シェード・ツリー
    珈琲の木を直射日光から守るため、
    日傘のような役割をさせるために飢えている木のこと。
    「日陰樹(ひいんじゅ)」とも呼ばれる。
    土壌の水分を大量に必要とせず、
    適度に日差しを通すことのできるマメ科の高木樹が適していると言われているが、
    すべての生産地で日陰樹を採用しているわけではない。
    (引用:UCC公式サイト)

    実は、この本を読むまでシェード・ツリーを知らなかった。
    自分がシェード・ツリーになろうと心に決めた浩太には
    秘められた約束があって…
    とても心に響いた。

    文庫解説を書かれているのは
    NHKの「ふるカフェ系ハルさんの休日」に出演されている
    俳優の渡辺豪太さん。
    解説の中に
    二十歳で上京後に渋谷で入ったカフェが”僕にとっての「トルンカ」”という記述がある。
    たしかに…
    『純喫茶トルンカ』を読むと
    自分にとっての「トルンカ」が思い浮かんだり
    見つけたいと思ったりするかも…

    やっぱり私、カフェが舞台の物語が好きだわ。。

  • 純喫茶トルンカの続編。3つのあたたかな再会のお話。それぞれの新たな旅立ちの話でもありトルンカのマスターの淹れる芳醇なコーヒーがそれを後押しする。マスターや家族、常連さんの今後も気になるところです。

  • シリーズ第1弾に続いて本作も最高でした!
    じわりと染みる作品ばかり。
    あぁ、やっぱり八木沢さんの文章が好きだなぁ。

    「純喫茶トルンカ」に縁深い登場人物たちの再会の物語。
    何でこんなに心動かされるのか不思議。言葉もシーンも、心に深くじわりと染みていく感じがする。
    切なくて懐かしくて愛しい。
    優しさで包み込んでくれるような作品。
    心地いい余韻まで味わいました。

    『美味しいとか、楽しいとか、心踊るとか、そういう感情は大切。年をとると、それがよくわかります。生きる上で、明るい気持ちほど日々の支えになってくれるものもない』

    『再会とは、人生における一番身近な奇跡である』

  • 谷中の人情味溢れる純喫茶トルンカの周辺の人たちの物語。
    表面上はなんてことない普通の日々を送っていそうな人たちにも、心の中はいろんな後悔や葛藤があって、小さな奇跡の物語がある。

  • ー 184ページ
    「・・・コーヒーの木にはシェード・ツリーが必要だけど、シェード・ツリーにもコーヒーの木は必要じゃない。コーヒーの木があるおかげで、シェード・ツリーははじめてそんざいできるんでしょ。一緒にいられるから、太陽をいっぱい浴びて成長できる。それってお互いに守り守られているってことになるんじゃなの」
    ・・・
    「菫さんはさ、君のことも心配していたんじゃない?君にもコーヒーの木が必要だってさ、そう思ったんじゃない?」

    ー 284ページ・・・
    「なんか俺も本庄も相当、カッコ悪いな。でもきっと、誰だってそうやって知らないところで足搔いているんだろうな。俺たちだっていまだにやっぱり足搔いているし。でもそれだって生きているからこそ、できることだよな」
    ・・・
    「そう思うとさ、生きているって素晴らしいって思わない?」
    ああ、この人は自分の言葉をちゃんと紡いでいる。

    絢子が口にした格言・諺
    p204
    「真実を語るのは実にむずかしい。青年でそれをできる者はまれである」(トルストイ)
    p210
    「人間の最も偉大な力とは、その一番の弱点を克服したところから生まれてくる」(ヒルティ)
    p216
    「至上の処世術は、妥協することなく適応することである」(ドイツの哲学者ジンメル)
    p236
    「与えられたるものを受けよ。与えられたるものを活かせ」
    p249
    「友とぶどう酒は古いほどよし」(イギリスの諺)
    p250
    「山は山を必要としない。しかし、人は人を必要とする」(スペインの諺)
    p254
    「バラは美しく咲くのではない、一生懸命咲いているから美しいのだ」(チャップリン)
    p267
    「自分の道を進む人は、誰でも英雄」(ヘルマン・ヘッセ)
    p289
    「再会とは、人生における一番身近な奇跡である」

  • 喫茶トルンカにまつわる人の物語。20年来の常連客の千代子おばちゃん。マスターの娘の雫の幼なじみの浩太、フリーのイラストレーターの絢子さん。トルンカのコーヒーを通して、大切に誰かを思っていてほっこりさせられました。

    表紙に惹かれてよみましたが、これはシリーズ2作目だったんですね。でもちゃんと理解できました。
    いつかシリーズ1作目も読みます!

  • 谷中にある素敵な純喫茶トルンカの常連客が織りなす温かい物語。
    渋いマスター、趣きある喫茶店。しかも谷中。
    シチュエーションが良いのが前提で、珈琲が美味しそうなのがすごく行きたくなる。
    千代子さんの再会話しは良かったなぁー。
    戦争中は本当に、自分をも殺すようにして人々は生き抜いてこられたのだと痛感する。命はあっても心は壊れてしまうくらいの悲劇だったんですね。
    そんな戦中の青年と幼子の交流が、初恋と自覚しきらぬうちに娘子は嫁いで、、、叙情がありますね。
    再会した時にお互いがとても嬉しそうなのもすごい良かった。
    雫ちゃんも絢子さんも、とても素敵な女性たちだし、この小説に出てくる人はみんな魅力的で、全員応援したくなります。
    いきなり続編の方から読んでしまったけれど、全然違和感なく読み切れた。
    ほのぼのしつつも軽快なテンポで、描写は美味しそうだったり歩きたい街並みだったりに溢れた魅力的な小説です。

  • 千代子おばあちゃんの物語は本当に素敵だった。自分とは全く違う時代、特に戦時中の話はどうしてこうも胸が苦しくなるんだろう。そして会いたいという気持ちがもたらす奇跡。私もかつては何も告げられなかった初恋の人に、いつかはもう一度会いたいと思った。

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著者プロフィール

1977年千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業。「森崎書店の日々」で第三回ちよだ文学賞大賞受賞。同作品は映画化された。著書に「続・森崎書店の日々」「純喫茶トルンカ」「純喫茶トルンカ しあわせの香り」がある。

「2023年 『きみと暮らせば 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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