- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198948719
感想・レビュー・書評
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河﨑秋子さん初読み『鳩護』の感想と概要になります。
概要です。
パッとしない日常を過ごす小森椿は、今日も通勤を邪魔する鳩の糞に苛立ちながら出社する。まともに仕事をしない先輩の不満を胸に抱きながら帰宅したある日。ベランダに白い鳩が落ちていた。奇妙な白い鳩との出会いから椿は鳩護の存在を知っていく。
感想です。
初読み作家さんですが読みやすくて、椿の心の中での愚痴や白鳩と次第に仲睦まじい関係に変わっていく様を読んでいると、何度か笑みが零れてしまう癒しの作品でした。起承転結という面では物足りなさがあったものの、クスッと笑いたい方にオススメです♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
河崎秋子『鳩護』徳間文庫。
『鳩護』に選ばれた者の数奇な運命を描く不思議な小説。これまでの河崎秋子の小説とはテイストが異なり、中村文則の『掏摸』に雰囲気が似ている。
主人公の小森椿という女性会社員の漏らす仕事の不満がどこか滑稽で、やや深刻なテーマの中で一服の清涼剤になっている。
ある日、マンションに独り暮らすアラサー会社員の小森椿が外の物音にベランダを見ると、真っ白な鳩が蹲っていた。鳩は怪我をしているらしく、飛び立つ様子もなく、仕方なく暫くの間、面倒を見ることにした。白鳩は椿に懐き、椿もハト子と名付け、可愛がる。
そんな中、椿は会社の帰りに幣巻と名乗る怪しい男に「お前は俺の次の『鳩護』になるんだ」と奇妙なことを告げられる。鳩を護ることを宿命づけられた者。それが鳩護だというのだ。
『鳩護』に選ばれた者に訪れる幸運とその幸運に支配され、道を踏み外す歴代の『鳩護』たち。白鳩とかつての『鳩護』たちの見せる夢に翻弄される椿の運命は……
本体価格810円
★★★★★ -
帯買い!平積みになっていて、川上和人先生の「野生動物のあるべき姿。リアリティがあふれている!」が、目に入って、即買い。解説も川上先生がかかれていて、とても面白かった。
で、どうだったかというと、面白くはあったが、鳩護の護ってなんやねん、という感じはある。鳩に選ばれし者というか、なんとなく、ランダムな鳩の当たりにあたっただけというか。呪いなのかなんなのか。まあ、ラストも納得はできた。福田、腹立つわ、こういうタイプ大嫌い。そして、おまけのスピンオフ『福田さんの白い羽根』も読んだが、福田終わってるわ、人の家にいって人のもん盗むとか、もう”嫌な人”の範疇を逸脱してる。ともかく、すんごい最悪に描かれていて、最後も勧善懲悪とは言わんが、それなりにバチが当たって、ちょっとスッキリした。
>「お前はもう、何があっても幸せにしかなれない。鳩を護ると言いつつ、鳩の命を磨り潰してな。」
しかし、小森さん、なんか間抜けすぎひんか?とちょっと思う。これはこれでひどい描かれようかとは思うが、まあ、ええかなと。ていうか、その後、それなりに幸運はあったんやろうか?ただ、小森椿にとっての幸運とはなにか?と、ふと考えさせられた。和田のような、金と見栄とか、ヨシコのような恋愛とか、具体的な欲望ならすぐになんとかなったのかもしれんが、、鳩には抽象的な幸運感というのはわからんのかもしれない。ていうか、ベネディクトカンバーバッチに町で偶然遭遇するとか、それどないやねんとか思うんだが。まあ、すでに足るを知る人だったので、ラスワンとして選ばれたのかもしれないし、そうでもないのかもしれないし。まあ、読了後に考えることの多い小説であった。
私がもし、ハト子に遭遇したら、
というか、自宅に迷い込んできたら
やっぱり普通に飼い主を探すとは思いますねぇ。
ドメスティックで足輪も付いているので、
とはいえ、レース鳩リングもついてないが、一応レースの組織とかあちこちにメールして、
あとは、怪我の具合次第で、いちおうセンターなどに保護連絡をして様子見、
怪我が治り次第、放鳥やねぇ。ルーチンかいっ(笑)
いや、ついついキジバト気分で読んでたけど、
ドメスティックだったわね、ほな放鳥したらあかんか、
引き取り手を探すか、、、
まあ、できることはするだろうが、、 -
単行本で読んで、文庫本で2度目です。
見た目は表紙のようにかわいい白い鳩。しかしその鳩には・・・という、河崎さんならではの動物感のある物語。
それだけでなく、日常の女子のリアルな、甘すぎない生活も描かれていて、これまでの作者の小説とは別の分野を切り拓いたエンターティメント小説になっている。ゾワっとさせるところは変わらないのでご安心を。
中身のことは単行本で書いたので、なぜ川上和人さんが解説をしているのかを書いておきたい。
川上さんは鳥類学者で、フィールドワークに重きを置いている、つまり実際に海鳥の調査のために孤島に赴く。ハエが大量に口に入ってきても、ネズミが海鳥を全滅させる様子を目の当たりにしても、過酷に鳥を追い続けており、机上の学者ではない、つまりは身体を張って学問する学者さんなのだ。
その川上先生が、この小説の解説を書いたのは、河崎秋子という作家が「動物との距離を見誤らない」作家と見抜いたからだ。
それもそのはず、もとは羊飼いで、身体を張って動物と向き合ってきたし、ニュージーランドや、師匠のところで勉強を重ねてきた。去勢も出産も生死にも携わってきた。一歩外に出ればヒグマもでる、エゾシカもいる、キタキツネもいる。動物の現場を知る人だからだ。
川上先生は小説の中身についてはほとんど語っていないが、作者の動物を見る目と観察眼、甘すぎない距離感を絶賛している。 -
この本のテーマは、人間と飼われている動物の関わりだと思う。そこには明確な主従関係があり、人間側が幸せになるように使われる動物の姿がある。それが人間社会で善悪かどうかや、その動物自身にとって幸か不幸かは関係ない。主人がやりたいことが善であり、そうでないことが悪になる。飼ったから大切にするというのは、主人義務ではない、責任の範疇までなのだ。そして、この物語で主人公が学んだのはその責任の大きさなのだと思う。
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本屋さんで予約して、発売日に購入。もうちょっとほんわかした話かと思ったけど、意外と歴史的なシーンも入っていたりして、大変楽しく読みました。期間限定で読めるスピンオフ「福田さんの白い羽根」、本編の福田さんはもうちょっとまともな印象でしたが、こちらでは傍若無人っぷりがハンパなくて、面白かったです。