スクラッチ

著者 :
  • あかね書房
3.77
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本棚登録 : 281
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784251073129

作品紹介・あらすじ

コロナ禍で「総体」が中止になったバレー部キャプテンの鈴音。美術部部長の千暁は出展する予定の「市郡展」も審査が中止。「平常心」と自分に言い聞かせ「カラフルな運動部の群像」の出展作を描き続ける千暁のキャンバスに、鈴音が不注意から墨を飛ばしてしまい…。コロナ禍で黒く塗りつぶされた中三の夏。そのなかでもがきながら自分たちらしい生き方を掴み取っていく中学生たちの、疾走する”爪痕”を描く物語。

感想・レビュー・書評

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  • 第69回青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部課題図書 

    中三最後の夏がコロナで終わる...。
    美術部の千暁(かずあき)もバレー部の鈴音(すずね)も、目標としていた「市郡展」の審査や「総体」がなくなり、部活に身が入らない。
    それでも中学最後の夏は、今しかない...。
    目の前のことにも進路にも迷い、自分と向き合わざるを得なくなる。

    中学生は自分の意志や考えがあっても、大人の決めたことに従わなければならない。
    決められてしまった狭い枠の中で、どう自分を納得させ、また納得させないで過ごすか...。
    私自身、中学校に身を置くため登場人物たちの様子がリアルに見えるようだった。
    しかし実際の所、生徒たちは表面上は何事もなく状況を素直に受け入れているように見えるので、気の毒で歯がゆい気持ちにもなった。

    この本は読書感想文コンクールの課題図書だ。
    色々な生徒に読んでもらおうとするならば、今の子に333ページは少し長い気がする。
    読んでいて、千暁と鈴音、それぞれのパートに重なる内容の繰り返しが少し多いようにも感じる。
    読書好きな生徒であれば問題ないが、様々な生徒を念頭に置くと300ページ未満が望ましいように思う。2023.7

    • ロニコさん
      Manideさん

      こんばんは^_^/

      上のお子さんが『爆弾』を読まれたとこのこと。
      かなり重めの作品ですよね(私は途中までしか読めており...
      Manideさん

      こんばんは^_^/

      上のお子さんが『爆弾』を読まれたとこのこと。
      かなり重めの作品ですよね(私は途中までしか読めておりませんがf^_^;)。

      私の勤め先の中学では、本屋大賞ノミネート作品をノミネートされた瞬間に取次店に発注して、なんとか年度内に揃うようにしております。
      そう、中学生でも読む子は読むのです『爆弾』も。
      そして、「これ、出だしと違ってかなり重めでした」と感想を述べてくれたりします。
      そういう姿を間近で見ておりますと、読書に年齢は関係ないのだなぁと思います(私が中学生の時、そんな読む力はなかったです)。

      読書というのは、自分から手に取らない限りその世界には入れませんし、読み始めても合わなかったり、難しかったりしたら、その場で閉じてサヨナラできるものですから、今の時代、読書するというだけで希少な存在です!
      確かに、高校生らしい本を読んでほしいというお気持ちも分かりますが、『爆弾』を読んで考えを巡らせることのできるお子さんは、すごいなぁと思います!
      2023/09/14
    • ロニコさん
      Manideさん

      追伸です。
      本棚をフォローさせて頂きますね。
      Manideさん

      追伸です。
      本棚をフォローさせて頂きますね。
      2023/09/14
    • Manideさん
      ロニコさん、こんばんは。

      ご丁寧にコメントありがとうございます。
      フォローもありがとうございます。
      中学校でお仕事されているんですね。
      教...
      ロニコさん、こんばんは。

      ご丁寧にコメントありがとうございます。
      フォローもありがとうございます。
      中学校でお仕事されているんですね。
      教育に関わるとお仕事には、今でも憧れがあります。

      今の時代、読書する人は希少というお言葉。
      そうなんですね〜。
      爆弾を読むような我が子ですが、微笑ましく見守っていこうと思います(^^)
      2023/09/14
  • 千暁
    美術部・部長。コンクールが軒並みなくなり、混じりけのない色で絵を描いていたが
    まわりにはクールだと言われている
    小学校の頃、大きな台風で被災している

    鈴音
    バレー部、部長。猛獣と言われている
    思ったことをそのまま口にしてしまう傾向があり、まわりにフォローされたり叱られたり
    大会が無くなり、むしゃくしゃしている
    千暁のご近所で幼なじみ
    姉が大阪から戻ってきた

    文菜
    バレー部。鈴音の親友。生徒会、しっかり者。
    男女に人望があるが、打ち込むものがないことに引け目を感じている

    健斗
    美術部。寝に通っている
    元空手部。県の強化選手になる直前で理由があり、空手をやめる
    少し遠巻きにされている

    〇コロナ禍で中高生の部活動は大きな影響を受けた。体育会系だけでなく、文化系も。
    悔しさ、怒り、むなしさ、理不尽さ、のみ込めないものをのみ込んで、自分の中から“未来”を見つけていく
    千暁の絵を見てみたいな
    登場人物たちのかけあい、それぞれの家庭、まわりの同級生や部員たちと混じり合って
    応援したくなる物語でした

  • コロナ禍によって試合がなくなってしまったバレー部キャプテン鈴音が、その怒りを放出する所から話は始まる。

    そんな鈴音をどこか外側から見つめている美術部の千暁は、五年前に洪水の被害に遭い、明るい色彩の絵ばかり描くようになった。

    イマをかたどったワードが並ぶ中で、最初は、出来事を描きたいんであって、人を描きたいんじゃないような気がしていた。
    鈴音の語りも、千暁の語りも、中学生だからか感情を言葉にすることが、上手くない。

    でも、登場人物である中学生たちを支える、仙先生や千暁の両親が、そのことを分かっているという構図があって、急に、この語りのナマの感じが伝わってくるように思えてきた。

    得体の知れない何かに「普通」を取り上げられてしまうことへの、苛立ち。
    でも、それは負けとか失敗を意味するんじゃない。
    結局のところ、新たなルートを開拓するのは、自分自身でしかない。

    私たちはもうこの生活を「日常」として受け入れつつある。
    まだ「非日常」であった時を、その感覚を、どこかで忘れてはいけないような気もする。

  • コロナ禍で色々な制約を受けることになった中学生の物語。
    主人公の千暁は、過去に水害で被災もしている。
    我慢するのが当たり前という雰囲気の中で、なんとなく本音を言いづらいということはあると思う。
    そんな子たちが、友達や自分の好きなものとの関わりを通して、本当の自分の気持ちに向き合う姿が良い。
    黒く塗られたスクラッチに、心情を重ねているのがなるほどと思った。

  • 2020年、コロナ禍の中で中学最後の年を迎えた鈴音と千暁。バレー部の強力アタッカーの鈴音、物静かだが勉強ができ美術部でもその作品は群を抜いている千暁。猛烈な台風による水害で住む家を失い、引っ越してきた千暁を何の抵抗もなく受け入れた鈴音は、正反対の性格だがお互いを理解しあっている。進路に悩みながら、次々と無くなっていく中学最後の様々なイベント。持って行き場のないモヤモヤを抱える特別な年の中学生を描く。

    彼ら・彼女らは、たとえ希望の高校に進学しても又コロナの影響を受け続けるのだ。誰のせいでもない、そういう時代に生きているだけなのだ。今を生きている中・高校生の感想を知りたい。

  • コロナ禍で、普通にできていたことすら我慢せざるおえない世界。中学生の鈴音と千暁を交互に語らせ、これは感情移入できるし、読み物としても面白かったなぁと思った。

  • なんかわからず残念。

  • ギザギザに見えて熱かったり。規範通りを演じていても自分を見つめていたり。でも、どんな線も、エネルギッシュに描かれ、前向きに進んでいく。2023課題図書。感想文とか書かなくていいよ。読んで!感じて!良かったよ。

  • 自分と重ねて読むことができたから、すごく満足感がある本だった。今まで読んできた本の中で一番面白くて、一番影響を受けた!

  • 令和5年度課題図書
    コロナ禍の描き方が上手な本です。3年前は、あぁこういう事があったな、そうだったな、と思い出しながら読みました。

    コロナに対するやるせなさは生徒たちにきっとあると思うので、感想文は書きやすいと思います。
    「活発な子」「優等生な子」「運動部」「文化部」「にぎやかな家族」「穏やかな家族」と主人公二人の属性のどこかに寄り添ったり、比較したりするのが良いかな。

    好きな文章
    不要不急がなんぼのもんだ。
    不要でも不急でも、大事なもんばっかなんじゃないのか、それは。

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著者プロフィール

1975年、東京都に生まれる。図書館司書、保育士として勤めながら、創作活動を続け、デビュー作『シーラカンスとぼくらの冒険』(あかね書房)で第41回児童文芸新人賞受賞。その後愛媛県に移住。現在、小中学校で子どもたちの学校生活に関わりながら、作品を書き続けている。

「2022年 『スクラッチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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