- Amazon.co.jp ・マンガ (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784253131407
感想・レビュー・書評
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第一巻の帯にこうあった。
‥‥‥‥「寄生獣」「ヒストリエ」岩明均、初の本格漫画原作で戦国を描く!!‥‥‥‥完全に原作者ありきの連載だった。岩明均は日本で1番「ストーリーの細部(画の細部ではない)」にこだわる漫画家だと私は思う。そして日本で1番遅筆の漫画家である。このとき、「ヒストリエ」の連載を始めていた岩明均がもう一つのアイデアを、原作のみならば、という条件で引き受けて作ったらしい。それでも、脚本が完成するのに12年をかけている。ずーと全巻読み通したかった作品。古本屋で奇跡的に見つけた。
第一巻巻末に、岩明均の(異例の)原作者のみの後書きがあり、私は1巻目だけは読んでいたので、今回「完結コミック」セットを手に入れた時に懐かしく読み返した。少し長いが、書き写す。
「‥‥私は「キャラクターが描きたい」ではなく「出来事が描きたい」という所から物語を描き始める。漫画作者としては少数派かな、と思う。
まず最初、歴史上のある「出来事」を描きたいと思った。そして次に、その「出来事」の近くに立っている人物を、「主人公」にすえるのだ。
実はこの物語の主人公、初めは別の人物だった。一般にはほとんど知られていないが歴史上に実在した、ある「男」。そいつは、とある戦いで「負けた側」にいたくせに、その後けっこう出世したヤツだ。ちょっと魅力を感じ主人公にしてあげようと、その男について調べてゆくと、「負けた側」にいたくせにさらに、それ以上出世した「男」を発見。あれ?主人公にするならむしろこっち?
うーん‥‥いや、どうもこいつらは違うな‥‥なんか違う。そうだあっちに立っている「彼女」だよ!彼女こそ主人公にお願いしよう。ということで、ヒロイン・レイリちゃんの登場です。」(以上引用終わり)
出来事とは何か?
2人の男とは誰か?
物語の始まりで、ここまでネタバレしている原作者って、今までいただろうか?
ところがである。第6巻が終わって完結してみると、この謎を推理しているレビュアーは、私の拙い調査では、「1人もいない」のである。みなさん、原作者の意図を正しく汲んでいますか?しかもみなさん!!8割型はキャラクター論を振りまいている。もちろん、キャラが立ちまくっているから、出来事に深みが出てくるのではある。しかもレイリは、登場の仕方が強烈な上に「死にたがりの破滅形ヒロイン」である。キャラとして立ちまくっている。評したいのはよくわかる。
でも、せっかく原作者が立てた「問いかけ」に、これほどの歴史ブームなのに、ちょうどNHK大河「どうする家康」ではこの辺りをこの前やったばかりだし、最近の「麒麟がくる」にしてもこの辺りばかりやっていたのに!どうして誰も答えてあげないの?
というわけで考えてみた。
ご存知かもしれないが、私もキャラから批評するのではなく、出来事から批評するタイプのレビュアーです!
出来事は、1番大きなのは、明智光秀の本能寺の変に至った背後には、たった16歳の武田家麒麟児・武田信勝の深謀遠慮があったという「物語の仕掛け」だろうと思える。
戦国時代、少なくとも「負けた側」は2度と領主側や主要武将が復興しない様に「殲滅」された時代である。しかし「負けた側」は本当に知勇共に劣っていたのか?あるいはそういう戦国時代(今にも通じるところあり)は正しいのか?そういう問いかけがあったのだと思う。
男2人は誰か?
「「負けた側」にいたくせに、その後けっこう出世したヤツだ」というのがヒントだ。よって岡田のおっさんじゃない。あまりにも早く死ぬし。「出世」ということを解釈し直せば、
土屋惣三になる。
もう1人は誰か?
武田信勝では断じてない。彼はもう既に出世していたからだ。
「その男について調べてゆくと、「負けた側」にいたくせにさらに、それ以上出世した「男」」‥‥土屋の側にいた男‥‥居ました(敢えて名前言いません)。彼を主人公にしていたら、きっと信勝の「影」になっていたに違いないと思います。でも主人公としてはちょっと歴史により過ぎているよな、うん、やはりレイリが主人公で当たりだ。(←あくまでも私の孤独な推論なので、誰か意見をちょーだい!)
キチンと力作だと思う。少年チャンピオンコミックスという、ホント懐かしいレーベル。でも漫画界では傍流にいるというのが、ヒットしなかった理由だと思う。もっと注目すべき作品だ。
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武田信玄の孫、武田信勝の影武者を主人公に武田の滅亡始終を描く、岩明均原作の超ハイレベル全6巻。
虚と実の混ぜ具合が美しい。
表情のパワーが素晴らしい。
絶望の底で死にたいとしか考えてなかった少女が、戦いと闘いの日々を経て、この最終話とこのラストシーン!!!!
作画の方は知らなかったが、この組み合わせはかなり最高と言えるのでは。
けっこう複雑なお話をコンパクトにまとめていながら大変分かりやすい。
時代物はちょっと苦手なんだけど、これはそんなこと全く意識せずに読み切ってしまった。 -
感動の最終巻。歴史はあまり詳しくないけど全然問題なく楽しめました。あの死にたがりのレイリが…。ラストも清々しく読んで良かったと思えた作品
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キレイに完結。面白かった〜。岩明センセのマンガって、なんでこんなにキャラクターの描写が上手いのだろう!過不足なく、キャラの魅力が表れてるんだよなー。
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すごくいい漫画だった。
清々しいくらいのラスト。
のコマ。220ページ。
一コマ。
どうしてこんな読後感になるのか不思議なくらいだ。
あんな展開で。
原作の人、はこういう話を作るよね。
愛する人からの自立、本当の自立というか。
うまいこと言えないけど。
ミギーの最後もそうだった、
あれは本当に(興奮すると「本当に」が連発)、本当に秀逸なラストだった。
魂を揺さぶるようなラストだった。
レイリも、どちらも。 -
岩明均さん原作の匂いを濃く保ちながら、室井大資さんの描く登場人物の「目の揺らぎ」「目の表情」が素晴らしい。
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武田信勝の影武者を務めた、元死にたがりの少女レイリの物語最終巻。武田の滅亡とその後日譚。
信勝、そして武田の最後はあっけなく、だがレイリは必死にそれに立ち向かう。惣三に熱い心情を吐露するなど、もう死にたがりの少女ではないのだ。神君伊賀越えでの武田の者としてのけじめ・家康との絡みなど、うまく歴史離れさせた虚実ないまぜの話が説得力を持って迫ってくる。
ちょっと物足りなくも感じるくらい淡々と物語が終わってしまったが、家族との日々から始まり多くの人に恵まれてレイリが成長した姿、そして新しい未来への一歩を感じさせる名前にちなんだラストは、さわやかな読後感を運んでくれる。 -
美しい、正に完璧な物語だ。非の打ち所がない。