- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260054423
作品紹介・あらすじ
こんなナイチンゲール、聞いたことない!――鬼才文人アナキストが、かつてないナイチンゲールを語り出した。それは聖女でもなく合理主義者でもなく、「近代的個人」の設定をやすやすと超える人だった。「永遠の今」を生きる人だった。救うものが救われて、救われたものが救ってゆく。そんな新しい生の形式を日常生活につくりだせ。ケアの炎をまき散らせ。看護は集団的な生の表現だ。そう、看護は魂にふれる革命なのだ。
感想・レビュー・書評
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超絶面白かった。
看護師の端くれとして、ナイチンゲールの大まかな人生は知識としては知っていたが、その思想までは知らずに、読んだ著作も看護学校の授業にあった、看護覚え書きのみ。それでも、看護はアートであるとの言葉を忘れられず、現場で素晴らしい看護師に出会うたびに、やはり看護はアートだと思ってきた。
自分自身は決して感じたことのない他人の感情のただ中へ自己を投入する能力を、これほど必要とする仕事はほかに存在しない。このナイチンゲールの言葉はすごい。普段していることはこういうことだったのか、と納得。これをクリミア戦争の看護の中で見出すことの凄さ。共感という言葉が生ぬるく感じる。
看護覚え書き、再読したくなった。 -
ハズレがないことで知られる医学書院のシリーズ「ケアをひらく」。本書のテーマはナイチンゲール。まさにケアの権化のような人を評するのは、なんとアナキズム研究で知られる栗原康だというのだから、企画した編集者の白石さん恐るべしである。
ナイチンゲールといえば、「クリミアの天使」「ランプを手にした貴婦人」と呼ばれ、児童向けの伝記では欠かすことのできない偉人だが、その彼女が実はかなりエキセントリックな方であったことはよく知られている。超がつく金持ちで、抜群に頭がよく、統計学を駆使した合理主義者。今以上の男性社会にあって、時の為政者たちと互角以上に渡り合った姿には尊敬を禁じ得ない。そんな彼女の痛快なエピソードが、本書にはふんだんに盛り込まれている。改めて、凄いな人だな、ナイチンゲール。
ただ、本書の軽すぎる文体がどうにも苦手である。結構オーソドックスな文献を使用しているので、内容は突飛ではないのだが。そんなわけで星は控えめに3つとする。 -
ナイチンゲール。名前はもちろん知っています。
でも詳しくは知りませんでした。白衣の天使。クリミア戦争。それくらいしか説明できる言葉が出てこない。
この本を読んだらそんなナイチンゲールのイメージがひっくり返りました。ぶっ飛んでるし突き抜けている。天使なんだけど黒衣だし手にハンマー持っているw
女性でこの時代にここまでの事を成し遂げるなんて凄まじい事。実際30歳すぎまで何もさせてもらえないんですよね。それでも折れず諦めず突き進んでいく。尊敬します。
私みたいにナイチンゲールの事あまりよく知りませんって人にこそぜひ読んで欲しい本。全く学術書っぽくはなくて、文章が軽快でノリがいいのでスラスラ読めます。もっと書きたい事ありますがキリがないので止めときますw
ケアの炎を撒き散らせ! -
栗原さんの見立てるナイチンゲールは、彼女を更に魅力的な存在にさせている。
正直にいうと、私は本作を読むまでは、ナイチンゲールを美化し過ぎていた。学校で教わったヒトだからなのだろうか?確かに、ナイチンゲールは「クリミアの天使」と称されたりしていたようだし、実績もすごい。
でも、本作を読むと、なんというか、神がかっていた彼女の面が、栗原さんの文章によって、浮かび上がってくるのだ。ナイチンゲール自身、神の啓示を受けたと語っている。しかも生涯に四度も。
そして、国家に楯突く頑固者の面もすごく感じた。
結構な手紙魔で政治家にバンバン郵送するし、発破をかけることもしょっちゅうだったみたいだ。激アツなのだ。
さらに、女王管轄の倉庫を荒くれ者を遣いハンマーでぶっ壊す。野郎ども、やっちまいな!(こういう感じが栗原さんの文体です。ちょっとマネしてみました笑)
こんなナイチンゲール聞いたことなかったです。彼女は偉人ではなく、超人だったのだ。
アンチ国家の読み物としても、面白かったです。 -
今までにないナイチンゲール伝である。それは間違いない。
ひらがな多めの文書だが、読みやすいわけではない。ひらがな多いから中学生でも読めるよ、ってことはない。読めるかも知らないが、「わけわからん。これでいいの?ホントに?」ってなると思う。
よかったところとしては、彼女の宗教観を描いたところ。特に神秘主義についての文章はなるほどと思わせる力があった。こういうことを書かせると上手い人だなと思う。
しかし、人物描写、特にフローレンス・ナイチンゲール以外の人物の描写が簡単すぎて、立体的な人物像を想像できない。
ナイチンゲールの統計学者としての功績も否定はしていないが、著者が統計でわかったような気になる、あるいはやったような気になることに敏感というより強い反発を抱くタイプのため、結局安倍晋三批判をしたあげく「数字、きらい。」(P228)である。
ナイチンゲール伝を書くのにこの人が適任であったかは大いに疑問である。
しかし、書き手としては嫌いではない。
誰かの評伝を書くより、自分のことを書く方が向いてる人だと思う。アナキストで長渕剛好きだなんて面白すぎるもん。
栗原康ファンには良いが、みんなにおすすめはできない。
秦直也の挿絵がふんだんに入っており、それを見る価値はある。 -
生身のナイチンゲールが垣間見える
文体は若向き
文字として読むよりも講談で聞くと面白いかもしれない -
とつぜん神はやってくる:得体のしれない怪物 近代的な個人 神の声・神に仕えよ 神秘主義 超人 霊性 石鹸の泡=神の御心の象徴 目的なし・自分なし・空が青い 憑依としての看護:人民のなかへ クサい・汚い・はしたない だれもが隣人 神と自己無化 ヴェイユと絶対的受動性 つぎのキリストは女性:預言者 カイロス的・人間的とクロノス的・物理的 発明品 ハンマーをもった天使:クリミア戦争 まずは分析 黒衣だよ:死。いま。 近代医療・選択・ケアのロジック 運・身を賭ける:統計は神の啓示 国家にケアをうばわれるな
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2024.1.6 毎日新聞朝刊 内田麻理香 評
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/800826
<書評>『超人ナイチンゲール』栗原康 著:東京新聞 TOKYO Web
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<書評>『超人ナイチンゲール』栗原康 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/309892?rct=shohyo