闇は光の母 (3) ぼく (闇は光の母 3)

著者 :
  • 岩崎書店
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本棚登録 : 646
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265089536

作品紹介・あらすじ

「ぼくはしんだ じぶんでしんだ」90歳を迎える詩人・谷川俊太郎が「自死」を想い、言葉をつむいだ絵本。新進気鋭のイラストレーター・合田里美が美しい日常風景で彩る。

感想・レビュー・書評

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  • 岩崎書店の「闇は光の母」と題するシリーズは、死について考える絵本シリーズである。
    全5冊の第3弾にあたる本作では、子供の自死について取り上げる。
    この創作過程をテレビ・ドキュメンタリーで紹介しており、実際、完成作はどのようなものか、興味をひかれた。

    日本での子供の自死は徐々に増えており、令和2年度には400人を超えているのだという。その理由としては、家庭の不和やいじめといった、ある意味「わかりやすい」ものあるが、実は大半の例で「不明」。どうしてその子が死んでしまったのか、「わからない」というのだ。

    谷川俊太郎の詩に合田里美が絵を添える。いや、それは「添える」という穏やかなものではなかったのかもしれない。詩と絵が「対峙する」、あるいは、詩が投げるものを絵が受け止め、さらに投げ返し、といった方が近いのかもしれない。

    主人公の「ぼく」は死ぬ。自分で死ぬ。
    どうしてかはわからない。
    友だちも好きだったのに。
    おにぎりもおいしかったのに。
    おかあさんも(多分犬の)ジョイもいるのに。
    宇宙が大きすぎて。
    時間が終わらなくて。
    何もほしくなくなって。

    読んでいて、私もわからない。
    はたして谷川の描く「ぼく」と、実際に死を選んだ子供たちの想いが重なるのか。
    子供たちは何を思って心を決め、最後の瞬間に何を考えるのか。
    合田の絵はあたたかくてやさしくて、同時にどこかぞっとするほどさびしい。でもそれは、見る人次第なのかもしれない。

    最後に編集部からの言葉が添えられる。
    この絵本を読んで、自分のなかに「ぼく」のような気持ちがある、とかんじる人はいるでしょうか。
    まず最初に、このようにつたえさせてください。
    「死なないでください」

    何だかその言葉に胸を突かれる。誰かにその言葉が届くといい。届くといいけれど。

  • プロフィール | 合田里美 | イラストレーションファイルWeb | illustration File Web
    https://i.fileweb.jp/goudasatomi/profile/

    ぼく - 株式会社岩崎書店 このサイトは、子どもの本の岩崎書店のサイトです。
    https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b596583.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本」 - ETV特集 - NHK
      https://www.nhk.jp/p/etv2...
      「ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本」 - ETV特集 - NHK
      https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/7J3N7LZXVV/
      2022/02/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      3/13 谷川俊太郎×合田里美×筒井大介トークイベント、オンラインにて開催 - 株式会社岩崎書店 このサイトは、子どもの本の岩崎書店のサイト...
      3/13 谷川俊太郎×合田里美×筒井大介トークイベント、オンラインにて開催 - 株式会社岩崎書店 このサイトは、子どもの本の岩崎書店のサイトです。
      https://www.iwasakishoten.co.jp/news/n45541.html
      2022/02/24
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      自死は「追い込まれた末の死」…「ぼく」が生きるためにできることとは | ヨミドクター(読売新聞)
      https://yomidr.yomiu...
      自死は「追い込まれた末の死」…「ぼく」が生きるためにできることとは | ヨミドクター(読売新聞)
      https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20220613-OYTET50001/
      2022/07/05
  • 「ぼく」とは自死を選んだ小学生の男の子だ。Eテレの特集を興味深く観て、合田里美さんの絵、とくに色彩の美しさに心惹かれて、手元に置きたいと入手した。先月の23日に☆5つで本棚登録をしたきり感想を書かずにいたのは、私にとってはあくまでも美しくどこか救われるようなこの絵本が読む人(とくに子ども)によっては、とても危険なのではないかと怖くなったからだ。たとえば「こわくなかった いたくなかった」という言葉。死の淵に立つ小さな背中を押してしまう、あるいは、甘美な風に運ばれるように向こう側に優しくいざなってしまう、そんな力が作用してしまったら。私自身、うっすら希死念慮を抱えて生きているけれど、それでもいい大人で、経験と想像力から踏みとどまらざるをえないことがわかっている。でも、この少年のように「なにもわからず」死にたさを抱える子どもの場合はどうだろう? 
    死ぬとわかっていても愛する家族を置いて宇宙に旅立たずにはいられない宇宙飛行士を描いたレイ・ブラッドベリの「宇宙船乗組員」、恍惚とした表情を浮かべて宿願が果たせたように死者の世界へ吸い込まれていった『回路』の小雪が思い浮かんだ。
    愛するわが子を自死で失った遺族には救いになるかもしれないと思う。あの子はいたくなかったのだから、家族や友達の愛を知っていたのだから。
    わたしが死にたがりだから、斜に構えた感想しか持てないのだろうか。気になって検索したら「たくさんの子どもに読んでほしい」という声も複数あった。もちろん、生きることの大切さを学べる子どももいるだろう。でもひとりでも背中を押されてしまう子がいたら…。
    巻末には「編集部より」という文章があり、「死なないで」というメッセージと各種ホットラインの連絡先も案内されている。だが、この文章を凌駕する魅力が、魔力が、美しさがこの絵本にはあると思うのだ、あくまで読む人によってではあるが。この本を読んで、命の大切さを感じ取れた人の話を聞きたい。取り越し苦労だよと安心したい。

  • 自身も小学生の頃から、虐待とか貧困とかあったわけでもないのに死にたいと思っていたので、ぼくの心は少しわかる気がする。
    作り手の一生懸命な気持ちをドキュメンタリーで見たのでとても言いづらいのですが、この本は、死にたいと思っている人に、すーっと一線を超えてしまうきっかけを与えてしまうような気がします。
    心が元気な人には良いのかもしれませんが…

    現に、大人になった今でも、私自身、本を読んでその危うさを感じました。

  • とある海の近くに、心地よい音楽とともに隠れ家の秘密基地に迷い込んだような書店に立ち寄った際に出会えた絵本。

    自殺してしまった僕の語りで、シンプルな言葉が心にきゅーっと響いてきた。
    コロナ禍で、ちょっとの支えや見守り、気にかけがあったならば、失う必要のなかった小さな命はきっとたくさんあっただろう。
    もっと一緒にカルピスを飲んだり、公園でキャッチボールをしたり、のちに恩師となる上司との出逢いもあっただろう。

    私自身も当時病気の渦中で、この、僕のように人知れず救いを欲しながらも暗闇の中を進む日々もありましたが、生きていたら、たくさんの煌めきに出会えることもあるし、何よりいまに会えることができた。誰しも、孤独を感じてしまう時間はある。
    情報や繋がりが簡単に得られてしまう今だからこそ、ふとしたひとりの夜や直のふれあいがとても愛おしく、温かなものだと感じる。

    色々な感情が巡り、ふと涙をこぼしていました。
    そんな静かな午後も特別な休日のひとときですね。
    素敵な時間をいただけたこと感謝したいです。

    谷川さんの言葉は、文字の量が少なく真っ直ぐに届くからいつも心に響く。
    詩の良さを味わえる絵本でした。

    今度買いに行こう。

  • Eテレで特集していたのを観て購入。
    絵が美しく、谷川さんのことばと合っていて、何度でも読みたい。

  • ぼくは死んだ

    このシリーズの他の本も読んでみたくなる。

  • Eテレの番組を見て、どうしても欲しくなり購入。

    詩の一言一言で、色々な感情が渦巻く。
    ぼくとして。親として。

    いたくもこわくもない死。涙が出る。
    けれど、ぼくは生き続けるのだとも思う。

    何度も読み返して、言葉を噛みしめている。

  • 自死をテーマにした作品
    ふと死を選んでしまった
    恨みつらみなどは昇華してしまったのか、生前の好きだったことなど淡々と連ねていく
    この作品が胸のうちにひろがることは疑似の死を体験したことになる気がする
    闇は光の母というタイトルの通りに、絵本を閉じたときにまた生きることを考えて欲しいと思う

  • 何度もじっくり読み返したが 腑に落ちない。
    自殺した子供が本当にそのように感じただろうか?
    また、あとがきでも自殺を考えそうな時、読んでみて考えてほしいとあるが、この本を読んで理解できるだろうか?
    自殺に追いやった側が読んで、行動を変えるだろうか?
    『こわくなかった いたくなかった』の裏側に隠された『こわかった いたかった』を読み取れるのは幸せな大人だけではないだろうか。

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著者プロフィール

1931年東京生まれ。詩人。1952年、21歳のときに詩集『二十億光年の孤独』を刊行。以来、子どもの本、作詞、シナリオ、翻訳など幅広く活躍。主な著書に、『谷川俊太郎詩集』『みみをすます』『ことばあそびうた』「あかちゃんから絵本」シリーズ、訳書に『スイミー』等がある。

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